運龍堂 代表 佐藤貴繁 東日本大震災の決断から漢方のAI革命へ 仙台から世界を狙う漢方薬局の経営戦略

この記事では宮城県仙台市で漢方専門薬局の運龍堂を経営する代表取締役、佐藤貴繁氏のビジネスインタビューをお届けします。

一般的な会社紹介では語られない創業時のリアルな苦労や、開業資金の裏話、そして経営危機を脱した独自の集客手法について深く掘り下げました。

また、業界全体の課題である生薬の自給率問題への危機感や、最先端のAI技術を用いた全く新しい漢方ビジネスの構想など、公式サイトには掲載されていない一次情報を豊富に含んでいます。

東洋医学と西洋医学の融合を掲げ、伝統的な漢方の知見と最新技術を掛け合わせる運龍堂の取り組みは、これからのヘルスケア産業や小規模ビジネスの経営戦略において非常に注目すべきモデルケースです。

会社概要

会社名:運龍堂株式会社
公式サイト:https://unryudo.com/ 
代表者:佐藤貴繁
設立:2012年
事業内容:漢方薬局運営、オンライン相談、コンサルティング、卸売

創業ストーリー

なぜこの事業を始めたのか

佐藤氏が漢方に関心を持つ原点は小学生時代にさかのぼります。当時、喘息でひどく悩んでいた母親が漢方薬局に通うようになり、症状が劇的に良くなる過程を身近で見ていたことが最初のきっかけでした。

その後、北海道大学の薬学部に進学し、就職先でも細胞を扱う研究試薬の専門商社に勤務するなど、一度は細胞系の研究分野に没頭しました。しかし、頭の片隅には常に漢方への思いが残っていました。

転機となったのは2011年の東日本大震災です。震災当日、佐藤氏は偶然にも札幌に滞在していました。本来は午後の便で仙台から札幌へ飛ぶ予定でしたが、たまたま午前の便に変更しており、まさに間一髪のところで難を逃れたのです。

この強烈な体験が、せっかく生き残ったのだからやりたかったことをやらなければという強い使命感を生み、独立への背中を大きく押すことになりました。さらに、会津の漢方の先生からの修行などせず早く独立しなさいという言葉が腑に落ち、一切の不安なく開業へと突き進む決意を固めました。

創業時の苦労

2012年に仙台への恩返しとして運龍堂を開局しましたが、順風満帆なスタートではありませんでした。開業資金として約1000万円を用意し必死に資金調達を行ったものの、想定以上にコストがかさみ、もっと調達しておけばよかったと当時の見込みの甘さを振り返ります。

開局直後の数ヶ月は特に厳しく、月の来客数はわずか20名から30名、月商も100万円程度にとどまっていました。ホームページ制作や広告宣伝など、外部からの営業を受けて多くの施策を試しましたが、ことごとく失敗に終わりました。

外部の集客に頼るのではなく自ら動く必要があると痛感した佐藤氏は、たった数名から漢方の勉強会をスタートさせます。漢方を直接売り込むのではなく学ぶ場を提供することで友人の紹介が生まれ、これが現在の強固な顧客基盤を築くきっかけとなりました。

事業の特徴

競合との違い

運龍堂の最大の特徴は、一般的な病院の保険適用漢方外来では処方が難しい動物性生薬を扱える点にあります。

植物性の生薬に比べて動物性生薬は非常にパワフルで、数分単位で効果が現れるものや、心臓発作などの重篤な症状に対応できるものまで存在します。

漢方はゆっくり効くものという世間のイメージを覆す即効性が、他の薬局との大きな差別化要因となっています。

強み

一人ひとりのお客さまに時間をかけ、予算やライフスタイルに合わせた柔軟な提案ができることも強みです。

他店で漢方相談をしたけれど高額で続かなかったというお客さまに対しても、予算に応じた処方を行うことで無理なく継続できる環境を提供しています。

また、来店相談だけでなくオンライン相談にも対応しており、現在では月間約200件の相談のうち約2割がオンライン経由となっています。

提供価値

病名だけで判断するのではなく、季節や環境、個人の体質を十分に配慮する中医学の根本治療の大原則を大切にしています。

例えば、うつ病で精神的に参ってしまっていた方が、漢方を服用して1ヶ月後にはまるで人が変わったように元気になったという劇的な改善事例も生み出しています。

西洋医学的に診断が難しい未病にも対応し、心身の根本的な改善という価値を提供し続けています。

インタビューQ&A

Q. 病院で処方される保険適用の漢方薬と、自由診療の漢方専門薬局では何が違うのでしょうか。

A. まず大前提として、漢方専門薬局で扱える漢方薬には、病院では出せないものが数多くあります。

そのため、費用面だけで単純な比較をすることは困難です。病院の漢方薬で効果が感じられなかったからといって、漢方自体が効かないと誤解してほしくないという強い思いがあります。運龍堂で扱う生薬は品質も非常に高く、種類も豊富です。

月額の費用としては1万円から2万円の範囲で処方されるお客さまが多いですが、ご本人の予算に応じて柔軟に選択できる仕組みを整えています。

Q. 漢方業界において、一般の方に誤解されていると感じることはありますか。

A. 大きく3つの誤解があると感じています。一つ目は副作用がないと思われていることです。

漢方薬のなかには長く飲めるものもありますが、やはり注意して服用すべき副作用を持つものも存在します。二つ目は漢方は効果が出るまでにゆっくり時間がかかるというイメージです。

植物性であっても葛根湯のように解熱剤より早く効くデータがあるものや、動物性生薬のように即効性が極めて高いものもあります。三つ目は西洋薬と併用できないという勘違いです。

実際には併用して問題ないものがたくさんあり、むしろ西洋薬と漢方薬のメリットを組み合わせることで治療効果が上がるケースも増えています。

Q. 業界の課題として、生薬の原料問題などについてどのようにお考えですか。

A. 現在、日本における生薬の自給率は約1割程度に過ぎず、およそ8割を中国からの輸入に依存しているのが実情です。

日本から見れば8割の依存ですが、中国側からすれば日本への輸出は全体の1パーセント未満に過ぎません。最悪の場合、ビジネスの判断として取引が打ち切られるリスクもゼロではないため、業界全体として強い危機感を持っています。

そのため、運龍堂では宮城の里山や青森でナツメなどの国産生薬の試験栽培を開始し、少しずつでも自給率を高める活動に力を入れています。

Q. AIの活用など、今後予定している新しい取り組みについて教えてください。

A. 現在、漢方の知見を持たせたAIチャットの開発を進めています。

これは自分自身の知識や判断基準をコピーしたようなシステムです。これを広めることで、漢方を取り扱いたい方の相談相手や、薬局で働く方のサポート役として業界全体の底上げに貢献できると考えています。

現在はAIに関する技術や人材の構築を進めており、このAIが完成すれば、現在展開している数店舗の漢方コンサルティング事業の展開スピードも一気に加速するかもしれません。

経営者の価値観

大切にしている考え

佐藤氏が処方において絶対に譲らない判断基準は、本人が必要としていないものは絶対に出さないということです。

全く興味がない方に無理に漢方の知識を詰め込んでも疲弊させてしまうため、相手の求める度合いに応じて提供する情報を変える柔軟なコミュニケーションを心がけています。

かつて忙しすぎてお客さまと向き合う時間が減ってしまったことを最大の失敗と捉えており、現在ではお客さまとしっかり向き合う時間の確保を何よりも重要視しています。

経営哲学

経営者としてだけでなく、一人の人間として自然の力や見えない根本的なものを大切にしたいという価値観を持っています。

お金、時間、社会的評価、家族との関係、健康という5つの要素のうち、佐藤氏が最も優先順位を高く置いているのが健康です。

健康がなければお金も時間も無駄になってしまうという確固たる考えのもと、現在では週に6回もジムに通い、自分自身の心身を最高の状態に保つための自己投資を怠りません。

年齢を重ねるにつれて、筋肉量と記憶力や仕事の質が相関していることを強く実感していると語ります。

今後のビジョン

目指している未来

5年後の目標として店舗数をやみくもに増やすことは考えておらず、オンライン対応の充実などにより売上規模で現在の2倍を目指しています。また、メイドインジャパンの漢方を世界に広げるというビジョンを持ち、まずはアジア圏への展開を視野に入れています。

アジアの多くの国々は日常的に生薬を使う文化が根付いており、日本製の品質に対する憧れもあるため、大きな可能性を感じています。

すでにペット向け漢方サプリが全体の売上の約1割を占めるまでに成長しており、新たなニーズの開拓も順調に進んでいます。

新しい挑戦

前述のAIチャットによる自身のコピー作りはもちろんのこと、将来的にはメーカーとして正しい情報発信を行い、お客さまが本当に求める優れた製品を開発し、直接届ける仕組みづくりへのシフトを構想しています。

通販の形が変わっていく未来を見据え、より良い生薬素材の調達から製品開発までを一貫して行える体制の強化に注力しています。

読者へのメッセージ

漢方を通じて社会に起こしたい変化を一言で表すなら社会の循環です。

自分たちが栽培に関わった安心できる生薬で人々が健康になるのはもちろんのこと、生薬の栽培や漢方の普及活動に関わるすべての人たち自身も、その活動を通じて健康になっていくような世界を理想としています。

運龍堂の漢方薬や考え方を通じて、一人でも多くの方が本来の免疫力を取り戻し、豊かな人生を送るためのサポートを全力で続けていきます。

まとめ

この記事のポイント

 運龍堂は東日本大震災での強烈な原体験を契機に設立され、開業当初のどん底から漢方勉強会という地道な集客で活路を見出しました。

動物性生薬を活用した即効性の高い処方と、一人ひとりの予算に寄り添う親身なカウンセリングが圧倒的な強みです。

中国産に依存する業界の危機を打破するための国産生薬栽培や、次世代の漢方AIチャット開発など、伝統と革新を融合させた経営戦略は非常に魅力的です。

どんな企業におすすめか

運龍堂の取り組みは、これから調剤薬局から漢方薬局への転換や独立を考えている薬剤師の方、あるいはヘルスケア領域で新たな事業を模索している経営者にとって大いに参考になります。

また、漢方専門薬局のコンサルティング事業も展開しているため、自社のビジネスに漢方のエッセンスを取り入れたい企業にとっても最適なパートナーとなるでしょう。

ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございました。

経営者のストーリーには、会社のホームページや営業資料だけでは伝わらない
「なぜこの事業を始めたのか」という想いがあります。

創業のきっかけ、苦労したこと、そしてこれから実現したい未来。

こうした話を聞くたびに、日本にはまだまだ面白い経営者がたくさんいると感じます。

そのストーリーを残すために、現在【経営者1000人インタビュープロジェクト】を進めています。

この企画では、

  • 創業のストーリー
  • 事業の強み
  • 経営者の価値観
  • これからのビジョン

などをお聞きし、記事として公開しています。

記事は、会社名や代表者名で検索されたときにも見つかる「信頼できる情報」として残るコンテンツになります。

インタビューはオンラインで60分ほど。現在はプロジェクトのため参加費は無料です。

もしこの記事を読んで

「自分の事業の想いも残してみたい」
「経営者としてのストーリーを言語化したい」

そう思った方がいれば、ぜひ以下のページをご覧ください。

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