創業100年超の老舗めっき加工メーカーが挑む変革。真工社3代目眞子岳志が語る「グレートリセット」の経営哲学

この記事でわかること
- 伝統的な中小製造業が直面する「下請け体質」と「市場変化」のリアルな課題
- 未曾有の危機(コロナ禍×サイバー攻撃)をチャンスに変えた社長の思考法
- 現場の反発を乗り越え、製造業DXを定着させる実践的なアプローチ
- 100年企業を次世代へ繋ぐための「事業承継」への葛藤と新たなビジョン
なぜこの企業に注目すべきか
埼玉県に拠点を置く株式会社真工社は、1922年創業という100年以上の歴史を持つ老舗めっき加工メーカーです。
自動車部品や遊技機などのめっき加工で確かな技術力を誇る一方で、近年は自社で実践したDXのノウハウを体系化した中小製造業向けDX支援事業「フミダスDX」を展開し、業界の注目を集めています。
さらに、BtoC向けのオリジナルブランド「MYSTIC WORKS」を立ち上げ、伝統的な下請け製造業からの脱却を図るなど、革新的な挑戦を続けています。
本記事では、3代目である代表取締役社長・眞子岳志氏への独自インタビューを通じ、公式サイトには載っていない企業の裏側、承継時の葛藤、危機を乗り越えたリアルなエピソードを深掘りします。
事業承継やDX推進に悩むすべての経営者・ビジネスパーソン必読のストーリーです。

会社概要
- 会社名:株式会社真工社
- 公式サイト:https://www.shinkosya.co.jp/
- 代表者:代表取締役社長 眞子岳志
- 設立:1922年(創業)
- 事業内容:めっき・表面処理事業、DX事業(フミダスDX)、コンシューマー向け事業(MYSTIC WORKS)
創業ストーリー
なぜこの事業を始めたのか・創業時の苦労
真工社の歴史は1922年に遡ります。創業の祖父にあたる初代は、めっき技術において常に新しいことに挑戦するフロンティアスピリットを持っていました。
「新しいこと、やったことのないことにチャレンジするからこそ残れる」という創業者のDNAは、現在の真工社にも色濃く受け継がれています。
2007年に3代目として事業を承継した眞子社長ですが、その交代劇は突然のものでした。2006年の夏、「今期が終わったら俺は引退するから」と先代から急遽告げられ、半年後の引き継ぎを余儀なくされたのです。
就任当時の真工社は、良くも悪くも「家業」の色合いが強く、社長の属人的な好き嫌いが意思決定に混じるような状態でした。
眞子社長は「これだけは変えよう」と決意し、会社として組織的に機能する仕組みづくりへと奔走することになります。

事業の特徴
真工社の事業は現在、3つの柱で構成されています。
めっき・表面処理事業(強み・競合との違い)
遊技機関連(パチスロ台外装部品など)や自動車部品などの分野で長年の実績を持ちます。特に遊技機分野では、量産を始める前段階から顧客と積極的に議論を交わし、めっきをするための最適な設計提案を行う技術的知見が大きな強みです。
単なる「安さ」ではなく、トータルで顧客が苦労せずに良いモノを作れる品質とサービスを提供しています。
DX事業「フミダスDX」(提供価値)
自社のデジタル変革の苦労と成功体験を基に、20名〜100名規模の中小製造業を対象としたDX支援を行っています。
純粋なITベンダーとは異なり、自社で製造現場を持っているからこそ「現場あるある」を深く理解しており、現場との軋轢や定着への課題を見越した実効性の高い支援が強みです。
コンシューマー事業「MYSTIC WORKS」
めっき技術を用いた一般消費者向けプロダクト。下請けという受注型のビジネスモデルから脱却し、自ら市場を創り出すための新たな挑戦です。
インタビューQ&A
Q. 先代から会社を引き継いだ当初、真工社の強みと脆弱性をどう分析されていましたか?
A. (眞子社長) 強みは、創業から続く「新しいことへのチャレンジ精神」と、お客様を中心に置いた経営姿勢だと感じていました。
一方で、脆弱性は明確に「下請け体質」であることでした。見積もり依頼が来なければ仕事がなく、常に相見積もりの価格競争に晒されている状態です。
当時はパチスロブームで遊技機関連の売上が全体の約7割を占めていましたが、業界の規制強化とともに売上が落ち込んでいくのを目の当たりにし、特定の顧客の経営状況に自社が振り回されてしまうリスクを痛感しました。
「お客様が風邪を引くと、うちは重度の肺炎になってしまう」という状態からの脱却が、私にとっての長年の課題でした。
Q. 2020年にコロナ禍とサイバー攻撃が同時に起きた際、社内にどのようなメッセージを発信したのでしょうか?
A. (眞子社長) コロナ禍は皆に平等に訪れたものでしたので、制約がある中でも「可能な限りの実験をして、いろんなことを試そう」と前向きな空気に変えるメッセージを出しました。
大変だったのはサイバー攻撃です。当時、顧客管理などのシステムをクラウド化し始めていましたが、品質関連の書類や過去の設計データなどが失われてしまいました。責任の所在がわからなくなるなど非常に辛い状況でしたが、私はこれを「グレートリセット」と呼ぶことにしました。
古いものはここでリセットして、新しい会社にしようと社員に伝えました。言葉のわかりやすさもあり、社員も比較的ポジティブに捉えてくれました。

Q. 社長自らDX専任チームを立ち上げたとのことですが、現場からの反発はありませんでしたか?
A. (眞子社長) 反発はありました。コロナ禍で少し手が空いたタイミングを見計らって始めたのですが、専任部署にしないと日常業務に流されてしまうと考えました。
しかし、現場からは「忙しいのにあいつらはずっとパソコンに向かっている」という声が上がりました。一時期はDXチームのメンバーも引け目を感じて現場のヘルプに入ってしまい、DX推進が止まりかけました。
そこで私は部長職を説得し、「もう一度彼らを専任に戻させてくれ」と頼み込みました。少しずつ成果が出て、データが可視化されるようになると、現場の理解も得られるようになっていきました。
Q. 「フミダスDX」が大手コンサルティング会社やITベンダーと違う点はどこにありますか?
A. (眞子社長) 私たちがターゲットにしているのは、社内に専任のSEがいない20人〜100人規模の会社です。最大の強みは、我々自身が製造現場を持っており、泥臭い失敗を経験していることです。
システムだけを導入しても、「このままやると現場に定着しないだろう」「こういうところで現場との軋轢が出るだろう」という解像度がITベンダーとは全く違います。
実際に、同業の会社さんで手書き書類をなくし、高齢の職人さんでもタブレットを使って生産管理ができる仕組みを定着させた実績もあります。
Q. コンシューマー事業(MYSTIC WORKS)の立ち上げで、BtoBとの違いをどう感じましたか?
A. (眞子社長) クラウドファンディングでご支援いただきましたが、「作って届ける」ことがいかに大変かを痛感しました。
BtoBであれば、図面と仕様をもらって受注すれば毎月安定して仕事が来ます。しかしBtoCは、1人の消費者に知ってもらい、興味を持ち、お財布を開いてもらうという全く別の労力が必要です。
同時に、普段私たちのめっきを発注してくださるお客様が、いかにその「届ける苦労」をされているかという裏側を学ぶ良い機会にもなりました。
Q. 現在、経営課題として一番頭を悩ませているテーマは何でしょうか?
A. (眞子社長) すべてですが(笑)、特に大きいのは「市場環境の変化」と「人手不足・技術者の高齢化」です。
市場環境で言えば、めっきのニーズそのものが急速に減ってきています。例えば自動車関連でも、以前のようなビカビカ光るフロントグリルは減り、シックな塗装へ置き換わるなど、デザイントレンドが切り替わっています。
また、職人の高齢化も深刻です。属人的なコア業務に若手をつける手当てを急ぐと同時に、作業の標準化や自動化を進め、付随業務とコア業務を切り分ける対策に取り組んでいきます。
経営者の価値観
大切にしている考え・経営哲学
眞子社長の根底には、「自分でどうにかできることと、できないことは分けて考える」という哲学があります。
サイバー攻撃という不可抗力のトラブルに見舞われた際も、「自分たちではどうにもできないことを嘆いても仕方がない。今できることをやろう」と社員を鼓舞しました。
このレジリエンス(回復力)の高さは、数々の困難を乗り越えてきた先代の父の姿から影響を受けていると語ります。
また、変化の激しい時代においては「じっくり考えて時代が変わってしまうよりは、早く多く行動し、そこから学ぶこと」を大切にしており、若いスタッフにも失敗を恐れずチャレンジしてほしいと願っています。
今後のビジョン
目指している未来・新しい挑戦
10年後の真工社が目指す姿は、「めっき屋さんです、じゃない状態になっていること」です。
めっき加工という祖業を大切にしながらも、DX支援事業や自社プロダクト販売など、多様な方法で価値を生み出し収益を立てられる多角的な企業への進化を目指しています。
また、個人的なビジョンとして「未来の経営者への恩送り」を掲げています。眞子社長自身、事業承継のリアルな泥臭い経験をしてきました。
「先代がいて自分が後継ぎ」という似た境遇にいる若手経営者に対し、自らの失敗談も含めてノウハウを共有し、事業承継の分野で社会の役に立ちたいと構想を練っています。

読者へのメッセージ
これから独立や起業、事業承継を考えているビジネスパーソンへ、眞子社長は「経営の本質」を次のように語ります。
「経営の本質とは、人と人との営みであり、人の感情の機微をちゃんと理解することだと思います」
どれだけDXやデータドリブンな経営を推進しようとも、それを動かすのは「人」です。
現場の反発を乗り越え、社員を誰一人会社都合によって無駄に辞めさせることなく会社を変革してきた眞子社長だからこそ、その言葉には重みと温かさがあります。
まとめ
この記事のポイント
- 真工社は、危機を「グレートリセット」と捉え、脱・下請けとDXを推進する100年企業。
- フミダスDXの強みは、ITの知識だけでなく「製造現場のリアルな泥臭さ」を知り尽くしている点。
- 経営の多角化を進める裏には、市場環境の変化への危機感と、次世代への強い責任感がある。
どんな企業におすすめか
- IT人材が不足しており、現場に寄り添った実効性のあるDX支援を求めている「中小製造業」の方
- 下請け体質からの脱却や、自社ブランドの立ち上げに悩んでいる経営者の方
- 先代からの事業承継や、社内の変革に対するハードルを感じている後継ぎ経営者の方
埼玉県戸田市から全国の中小製造業へ。株式会社真工社と眞子社長の挑戦は、日本のモノづくり産業に新たな「踏み出す」勇気を与えてくれます。

ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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- 創業のストーリー
- 事業の強み
- 経営者の価値観
- これからのビジョン
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