ベンチャーラボ法律事務所・淵邊善彦氏に聞く「強いスタートアップ」を作る法務戦略

この記事でわかること
- 日本のトップファーム(西村あさひ・TMI総合法律事務所)や東京大学大学院教授を経験したエリート弁護士が、なぜベンチャー・スタートアップ支援に特化した事務所を設立したのか
- 「月額5〜10万円」というスタートアップに寄り添った価格設定の裏側にある哲学
- スタートアップが最も陥りやすい「法務の落とし穴」と、事業を大きく前進させたサポートの実例
- AI時代の到来における法律事務所の在り方と、海外展開・地方創生に対する法務からのアプローチ
なぜこの企業に注目すべきか
日本におけるスタートアップ支援のエコシステム形成において、法務の存在は年々重要性を増しています。しかし、創業期から適切な法務アドバイスを受けられる企業は多くありません。
ベンチャーラボ法律事務所の代表である淵邊善彦弁護士は、約30年にわたり大手企業をサポートしてきた最高峰の実績を持ちながら、あえて「ベンチャー・スタートアップへの伴走」に舵を切りました。
単なる契約書のチェックにとどまらず、ビジネスモデルの適法性から資金調達、M&AやIPOなどの出口戦略まで、経営戦略に深く踏み込む同氏の姿勢は、多くの起業家にとって大きな道標となります。
本記事では、公式サイトでは語られていない淵邊弁護士の原体験や、リアルなクライアント支援のエピソードを深掘りします。

会社概要
- 会社名:ベンチャーラボ法律事務所
- 公式サイト:https://venture-lab.net/
- 代表者:弁護士 淵邊 善彦
- 設立:2019年1月1日
- 所在地:東京都港区南青山2-22-17センテニアル青山5階
- 事業内容:ベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務、法務コンサルティング業務全般
創業ストーリー
なぜこの事業を始めたのか:大手ファームの限界とベンチャーへの熱意
淵邊弁護士のキャリアは、日本最高峰の大手法律事務所である西村あさひ法律事務所からスタートしました。「一番チャレンジングで面白い仕事ができる事務所に入りたい」という思いから海外関係も扱える同事務所を選びましたが、一生そこで働くことまでは考えていなかったと言います。
ベンチャー支援への関心が芽生えたのは、ロンドン大学への留学を経て、商社で2年間働いた時のこと。ベンチャー的な事業に関わる機会があり、「応援しがいがある」と強く感じたことが原点です。その後、大手事務所で大企業のサポートを続ける中で、ある種の限界を感じるようになります。
「大企業のサポートはやりがいはありますが、どうしても保守的であったり、弁護士としての関わりが部分的であったりして、だんだんやりがいを感じにくくなってきました。また、費用の問題もあり、ベンチャー企業のサポートが十分にできないというジレンマがありました。
他方で、ベンチャーであれば社長と直接仕事をして、弁護士としてのサポートがダイレクトに反映される。大企業の支援だけでずっとやっていくのは少しつまらないな、という思いが強くなったのです」
東大教授からの独立と、設立時のエピソード
その後、TMI総合法律事務所でパートナーを務めながら、中央大学ビジネススクール客員教授や東京大学大学院常勤教授を務めます。
東京大学の任期満了を迎えるタイミングと、弁護士生活ちょうど30年という区切りの年が重なった2019年1月1日、ベンチャーラボ法律事務所を設立しました。
独立当初は不安もあったかと思いきや、以前から相談を受けていたベンチャーやスタートアップ企業からの依頼を引き継ぐ形でスタートし、そこからの紹介で着実にクライアントを増やしていきました。
大手ファームと東大教授という華麗なキャリアを歩みながらも、「目の前の経営者と直接向き合い、事業の成長にコミットしたい」という確固たる意志が、ベンチャーラボ法律事務所の原動力となっています。

事業の特徴
伴走型のワンストップ・法務コンサルティング
ベンチャーラボ法律事務所の最大の強みは、大手の「チーム制」ではなく、同じメンバーがクライアントに寄り添い、伴走する形で日常的に気楽に相談できる体制にあります。
同事務所は「月額5~10万円」という、大手と比較して非常にリーズナブルな顧問料を設定しています。 「ベンチャー企業は最初収益が少なく、払える限界があります。なるべく資金的な余裕ができるまでは、この価格のなかで日常的な契約書のチェックや法律相談を行っています」 この価格設定には、「お金がないからといって法務を後回しにしてほしくない」という淵邊弁護士の強い哲学が込められています。
また、単なる法務手続きにとどまらず、ビジネスモデル構築、資本政策、知財戦略、M&A、海外展開、出口戦略など、経営に直結する幅広い法務コンサルティングをワンストップで提供している点が、他の事務所とは一線を画す価値となっています。
インタビューQ&A
Q. スタートアップから最も多く寄せられる「困りごとトップ3」は何ですか?
A. 1つ目は「ビジネスモデルの適法性」です。
会社を作る時や事業を始める時に本当はチェックすべきなのですが、資金調達や第三者と組む段階になって初めて、許認可が取れていない、契約書が不利な内容になっているといった問題が発覚するケースが非常に多いです。
2つ目は「資本・資金調達」。VCやエンジェル投資家からお金を調達する際の契約関係や条件交渉です。 そして3つ目が「出口戦略」。IPOを目指すのか、M&Aで売却するのか、そこに関連する法律相談ですね。
Q. サポートしたことで、事業が大きく変わったスタートアップの具体例を教えてください。
A. 最初に相談に来られた段階では、ご自身のビジネスに許認可が必要だと思っていなかったケースがありました。
よく見ると業法違反のリスクがあったのですが、ご相談いただいたことでスキームやビジネスモデルを変更し、適法な形に整えることができました。その結果、無事に資金調達にも成功し、今では大きく成長しています。
もし相談がなくそのまま進めていたら、資金調達はおろか、業法違反で罰金になっていたかもしれません。
Q. 逆に「うちとは合わないな」と感じる経営者はどのような方ですか?
A. 法律をちゃんと守ろうというマインドがない方や、正直に事実を話さずにごまかそうとする方は、期待には応えられないと思います。
何でもちゃんと相談していただき、その上で一緒に解決策を考える。そして「法律は守る」というマインドのある経営者が、我々と合っているタイプだと考えています。

Q. 地方企業へのサポートや、海外展開における法的リスクについて教えてください。
A. 私は鹿児島出身(育ちは広島・愛知)ということもあり、地方企業のサポートには強く関心を持っています。
地方には面白いビジネスや人材がいっぱいありますが、まだ活躍しきれていません。これからの日本は東京一極集中ではなく、地方が直接グローバルと繋がることが重要です。
海外展開については、国内取引であれば何かあっても話し合いや信頼関係で解決できることが多いですが、海外ではそうはいきません。
訴訟や仲裁をやるにしても時間と費用がはるかにかかり、損害の回復が非常に難しい。だからこそ、最初にトラブルにならないような「いいビジネスモデルや契約」を作ることが最も大切になります。
Q. クライアントが顧問をつけるタイミングとして、「もっと早く相談してくれれば」と感じることはありますか?
A. 非常に多いです。
トラブルになって問題が起きてから初めて相談に来られるケースが多いのですが、本当はもっと早い段階で来ていただければ、一緒にアイデア出しをしてビジネスモデルを考えたり、強い契約書を作って知財を守ったりと、アドバイスできることがたくさんあります。
お金があまりない状態でも、将来性のあるビジネスであれば応援するケースもありますので、事業を始めようと思ったらまずは相談してほしいですね。
経営者の価値観
「経営者に寄り添い、一緒にビジネス戦略を考える」
淵邊弁護士がスタッフや将来の仲間に求めているのは、「経営者に寄り添って相談しやすい雰囲気を作ること」です。 「法律が使えることは当たり前として、そこから先に、一緒にビジネス戦略を考えていけるような弁護士になることが大事です」
また、15冊以上の著書を執筆し続ける理由についても、自身のキャリア形成のみならず、「広く法律の重要性や、ビジネスにおいて法律がどう活用できるかを知ってもらうため」と語ります。
啓蒙活動を通じて、「法律はトラブルになってから使うものではなく、新しいビジネスを創るために活用するもの」という価値観を社会に浸透させようとしています。
今後のビジョン
AI時代の到来と、少数精鋭での高付加価値化
AI・IoT領域にも精通する淵邊弁護士は、AIの進化が法律事務所にとって「脅威でもありチャンスでもある」と捉えています。
「定型的な契約書のチェックやリサーチしかできない事務所にとっては代替される脅威となります。しかし、経営者に対して戦略的な相談に乗ったり、法律を使って新しいビジネスを考えたりできる事務所にとっては大きなチャンスです」
ベンチャーラボ法律事務所が目指すのは、規模の拡大ではなく「少数精鋭」でのサービスの高度化です。リサーチやドラフティングがAIで可能になる時代だからこそ、その先にある価値あるサービスを提供できる体制を目指しています。
リスクを取るエコシステムの構築
日本全体の課題として、アーリーステージでリスクを取る投資家が少ないことを危惧しています。
「いい契約書を作り、いい仕組みづくりを法的にサポートすることで、リスクを取ることによってリターンが得られるんだという流れを作っていきたい。お金の流れと人をどう育て、どう仕組み化していくかが今後の課題であり、そこを変えていきたいですね」
読者へのメッセージ
「弁護士に相談するのは、トラブルが起きてから」と思っているビジネスパーソンはまだ多くいらっしゃいます。しかし、本当に何か新しいビジネスを始めようと思ったら、その前段階でご相談いただくのが一番です。
早い段階でご相談いただければ、適法なビジネスモデルの構築や、強い契約書の作成、知的財産の守り方など、より良いアイデアを生み出すためのサポートが可能です。
新しいサービスを作りたいという志のある方、あるいは労働問題や次の展開で悩んでいる中堅企業の方も、ぜひお気軽にお声がけください。
まとめ
この記事のポイント
- 伴走型の法務支援:大手事務所の「部分的な関わり」ではなく、経営者と直接向き合いビジネス戦略から共に考える法務コンサルティングを提供。
- ビジネスを加速させる法務:ビジネスモデルの適法性チェックや資金調達時のスキーム構築など、早い段階での相談が事業の成否を分ける。
- AI時代・海外展開への適応:AIには代替できない「戦略的なアドバイス」に注力し、地方スタートアップのグローバル展開にも法的に対応できる希少な存在。
どんな企業におすすめか
- 新規事業や画期的なサービスを立ち上げようとしているスタートアップ
- シード・アーリーステージで、これからVCやエンジェルからの資金調達を控えている起業家
- 将来的なIPOやM&A(出口戦略)を見据え、資本政策やガバナンスを整えたいベンチャー企業
- 海外展開を視野に入れているが、契約や法的リスクに不安がある地方の有望企業
- 成長の壁にぶつかり、労働問題や次の事業展開に法的な課題を感じている中堅企業

ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございました。
経営者のストーリーには、会社のホームページや営業資料だけでは伝わらない
「なぜこの事業を始めたのか」という想いがあります。
創業のきっかけ、苦労したこと、そしてこれから実現したい未来。
こうした話を聞くたびに、日本にはまだまだ面白い経営者がたくさんいると感じます。
そのストーリーを残すために、現在【経営者1000人インタビュープロジェクト】を進めています。
この企画では、
- 創業のストーリー
- 事業の強み
- 経営者の価値観
- これからのビジョン
などをお聞きし、記事として公開しています。
記事は、会社名や代表者名で検索されたときにも見つかる「信頼できる情報」として残るコンテンツになります。
インタビューはオンラインで60分ほど。現在はプロジェクトのため参加費は無料です。
もしこの記事を読んで
「自分の事業の想いも残してみたい」
「経営者としてのストーリーを言語化したい」
そう思った方がいれば、ぜひ以下のページをご覧ください。
