アスリートから地域創生のキーマンへ|株式会社SOSEI 紀之定俊輔の挑戦

元バレーボール選手から起業家へ。異色のキャリアを歩む紀之定俊輔氏が仕掛ける地域創生ビジネスは、従来のボランティアベースの地域活性化とは一線を画す、持続可能なビジネスモデルだ。

100億円規模の経済流通を生み出すという壮大な目標を掲げる彼の戦略と実行力に、経営者が学ぶべきヒントがある。

スポーツチームが教えてくれた「地域の力」

紀之定俊輔氏は1987年大阪府和泉市出身。千葉ZELVA(現・千葉ドット)の創設メンバーとして、セッター兼コーチを約4年間務めた。Vリーグ参戦という目標に向かってチームとともに歩んだ経験が、彼の起業の原点となった。

「Vリーグで活動する中で、スポーツチームが持つ『地域活性・地域貢献』の役割、つまり地域を盛り上げるコンテンツとしての側面に触れました。事業内容として、そういった地域活性のようなことをやりたくて起業しました」

2021-22シーズンで現役を引退した紀之定氏は、株式会社SOSEIを設立。社名は「地方創生」に由来する。地域が元気になること、地域の人たちが喜ぶことをビジネスの中心に据えるという明確なミッションを掲げた。

後悔から学んだ「今、全力でやる」経営哲学

紀之定氏の経営スタイルを形作っているのは、現役時代の後悔だという。

「現役時代にもっとやれることがあったのではないかと後悔することがありました。過ぎてしまってからはどうしようもないので、経営においても『今やるべきことを全力でやる』『後戻りはできない』という意識を持っています」

この哲学は、意思決定においても表れている。経営判断の基準を問われた紀之定氏は「基本的には直感」と即答する。長年のスポーツ経験で培った瞬時の判断力が、ビジネスの場面でも活きているのだ。

異業種経験が生む「掛け算」の強み

紀之定氏のキャリアは多様性に富んでいる。新卒で土木資材のリース会社に入社後、鉄の商社(建築資材)、LED照明の販売会社、ビルメンテナンス会社を経て起業に至った。

「全く異なるジャンルの業界を経験してきたため、他業界の情報や人脈が豊富なことが強みです。地域活性においても、異なる業界の知見を掛け合わせた新しいコンテンツやアイデア出しが得意です」

この強みは具体的な成果として現れている。インバウンド向けレストラン予約プラットフォームの店舗拡大相談に対し、関東で約15,000店舗を展開する酒屋との協業を実現させた事例は、業界を超えた人脈とマッチング力の証明だ。

また、長期的な顧客関係を築くために「定期的に有益な情報提供を行うこと」を重視している。他業界の情報を流すことで「自分にとってメリットのある情報をくれる人」というポジションを確立し、関係性を維持している。

「千葉魂」が示す新しい地域創生モデル

株式会社SOSEIの代表事業の一つが、地域イベント「千葉魂」だ。このイベント誕生の背景には、バレーボール選手時代の課題意識があった。

「バレーボールの集客が難しく、試合を見るためだけに人が集まるのはハードルが高いと感じていました。そこで、周りでお祭りのようなイベントを行えば、地域の人や県外の人も足を運びやすくなると考えました」

実現に向けた紀之定氏のアプローチは大胆だった。バレーボールの始球式に来ていた市長に、練習相手を務めながら直談判。市の担当者、鉄道会社との連携を構築し、構想から約1年半をかけてイベントを実現させた。

現在、SOSEIが提供するサービスは、千葉魂のようなイベント企画のほか、地域プロモーション、SNS動画制作、YouTube制作・管理・運営と多岐にわたる。YouTube制作は月額30万円から、その他のサービスは内容に応じた見積もり制で展開している。

創業期の苦悩と、武器を得た転機

順調に見える紀之定氏のビジネスだが、創業当初は苦難の連続だった。

「立ち上げ当初、個人事業主として一本でやり始めた最初の1年です。固定客もおらず、認知もされていなかったのできつかったですね。その後、人との出会いの中で武器となる商材を得て、売上が増えて乗り越えられました」

この経験から、スポーツ経験者で起業を考える人へのアドバイスとして、こう語る。

「スポーツ選手は感覚や勢いで行ってしまいがちですが、事前準備、資金、人脈などを整えて、失敗のリスクを抑えてからスタートすることを勧めます」

CSV思考で描く、100億円の経済循環

紀之定氏は、地域創生業界の今後について明確なビジョンを持っている。

「これまではボランティアベースが多かったと思いますが、資金やリソースに限界が来ます。今後はCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)の考え方のように、企業活動自体が地域活性化につながる取り組みを軸にしていく必要があると思います」

そして3年後、5年後の目標として、こう掲げる。

「イベントを通じて地域にお金が落ちる仕組みを作り、年間を通して100億円規模の経済流通を生み出せるようなイベントを作ることを目標にしています」

千葉魂の成功モデルを他の自治体に展開し、過疎化に悩む地域の活性化に貢献する。ボランティアではなく、持続可能なビジネスとして地域を元気にする。

「後悔しないように全力でやりきれ」

現役時代の自分へのアドバイスを問われた紀之定氏は、こう答えた。

「『後悔しないように全力でやりきれ』と伝えます」

この言葉は、紀之定氏自身が今、経営の現場で実践している姿勢そのものだ。セッターとして培った俯瞰力と判断力、コーチとして磨いたマネジメント能力、そして複数業界で得た知見と人脈。すべてを掛け合わせ、地域創生という社会課題の解決にビジネスとして挑む。

バレーボールコートからビジネスの最前線へ。紀之定俊輔氏の挑戦は、アスリートのセカンドキャリアの可能性を広げるだけでなく、地域創生という日本の大きな課題に、新しい解を示そうとしている。

プロフィール

紀之定 俊輔(きのさだ しゅんすけ)

1987年生まれ、大阪府出身。元プロバレーボール選手。Vリーグ「千葉ZELVA(現・千葉ドット)」のメンバーとして、司令塔のセッター兼コーチを約4年間務める。2022年の現役引退後、株式会社SOSEIにてビジネスキャリアを本格始動。競技生活で培った俯瞰的視野とリーダーシップを武器に、アスリートのセカンドキャリアの新たなロールモデル構築と、地域社会への貢献を目指し挑戦を続けている。

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