オープンカンパニーとは?SenseDrive株式会社 仲上 祐斗氏が語る、ミスマッチをなくす「仕事体験」の新しい形

近年、企業の採用活動において重要視されている「オープンカンパニー」。しかし、いざ導入してみても「自社の魅力が伝わらない」「採用のミスマッチが減らない」と悩む企業は少なくありません。

今回は、オープンカンパニーの企画運営支援をおこなうSenseDrive株式会社の代表・仲上 祐斗氏にインタビューを実施しました。

「オープンカンパニーとは何か」という基本から、自社で体験コンテンツを作る際の落とし穴、そして将来的な「街づくり」の構想まで、仕事体験の新しい形についてお話を伺いました。

オープンカンパニーとは?なぜ今注目されているのか

近年「オープンカンパニー」という言葉をよく耳にしますが、検索される回数も非常に増えているようですね。

仲上 祐斗氏(以下、仲上氏): はい、月に数千回も検索されるほど注目度が高まっています。オープンカンパニーとは、オープンキャンパスのように、企業が学生に対し自社の業務や職場環境を公開し、理解を深めてもらうための取り組みです。

5日以上実施の必要があるインターンシップと異なり、数時間や半日など短期で実施されるのも特徴で、企業側も学生側も実施や参加の負担が少ないです。最近は7割以上の企業が、このオープンカンパニーを導入しています。

ただし、実施されているのは、会社説明等の講義や実業務の見学、また社員との座談会を通じて企業文化を体感してもらう内容が多く、従来の会社説明会や合同説明会とさほど変わらない内容です。学生の仕事への理解度の観点では、従来の就活ナビサイトへの媒体掲載とあまり変わらないと言っていいかもしれません。そこで当社では、企業からの依頼を受け、体験型のオープンカンパニーの企画から運営までを提供しています。仕事体験を通じたオープンカンパニーでは、「知る深さ」が圧倒的に違います。

深く知っていただく機会を作ることで、入社後のミスマッチを未然に防ぐことができます。

「仕事の面白さ」を伝えたい。研究者からスタートアップ創業への原体験

仲上さんご自身が、SenseDrive株式会社を立ち上げた背景について教えてください。

仲上氏: 私はもともと大学で博士号を取得した後、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)に5年間在籍していました。NEDO時代には企業への視察に行く機会が多く、業種や職種ごとにそれぞれ魅力があって面白いと感じていました。

しかし、NEDOを辞めた後には、その面白さをなかなか味わうことができないというモヤモヤを抱えており、それが現在の事業の原体験になっています。

その後、標準戦略のコンサルティングが日本のイノベーション支援には足りていない課題感のもと、共感いただいた弁理士事務所に転職し、知財・標準戦略や実装のコンサルティング部署を知財や標準のコンサルティング部署を立ち上げて5年が経過したタイミングで、友人が東京都協定事業としてスタートアップ創出支援プログラム「STUDIO 10X」を立ち上げると聞きました。

私自身、「仕事体験を社会に普及させたい」という強い思いを持っていたため、思い切って飛び込み、今年の4月にSenseDrive株式会社を創業しました。

学術的なバックグラウンドもお持ちですが、今の事業にどう活かされていますか?

仲上氏: 私の専門は「コ・イノベーション研究」という、他者と将来像を描いてイノベーションを起こしていく方法論の研究です。スタートアップとしてやろうとしている「社会イノベーション」と重なる部分も多く、強い思いから始めた事業が、たまたまこれまでの研究内容の実践や社会実装に繋がっていると感じています。

自社では気づけない「当たり前の魅力」を第三者視点で抽出する

SenseDrive株式会社が提供するオープンカンパニー企画・運営サービスの強みは何でしょうか?

仲上氏: 我々がもっともこだわっているのは、「第三者視点での魅力抽出」です。企業の中で働いている方々にとっては当たり前すぎて、自分たちでは気づけない魅力がたくさんあります。

内部の人間だけではどうしても自社の魅力をうまく抽出できないことが多いのです。

例えば、建設業者さまの事例では、まず職種が抱えるミッションや他の職種との関わりをヒアリングし、他社との違いをあえてピックアップして、それを体験できるコンテンツへと落とし込みました。

実際にサービスを導入した企業や参加者からはどのような反響がありますか?

仲上氏: 企業側にとっては、「自分たちの仕事の魅力ってここだったのか」と改めて気づいていただけるのが最大の変化です。企画段階では「これが本当に魅力なの?」と半信半疑だった企業の方も、実際にオープンカンパニーに参加した方々から「こんな面白い仕事が世の中にあったんですね!」という声を聞くことで、実感を持って変わっていかれます。

また、料金体系についても、我々は1つのコンテンツを作成・運営するプランを120万円ほどで提供しています。

他社では300万円から1000万円ほどかかるケースもあるなかで、我々が安価に設定しているのは、外注していただく企業様を「将来的に各地で仕事体験を提供する際のパートナー」と考えているからです。また、オープンカンパニーの体験を受け、選考に希望する学生の割合は9割以上という実績があります。一般的な選考への移行割合が6~7割ほどを考えると、高いパフォーマンスだと思います。

企業が自作する体験コンテンツの「落とし穴」と業界の構造的課題

仕事体験の重要性はわかりますが、企業が自社で体験コンテンツを作ろうとすると、どのような落とし穴があるのでしょうか?

仲上氏: 一番多い落とし穴は、参加者が業界の素人だからといって、「とりあえず誰でもできるような簡単な作業(仕事の端の端の作業)」をワークショップとして提供してしまうことです。

これをやってしまうと、実際に入社した後に「こんな仕事だと思わなかった」と、より大きなミスマッチを引き起こしてしまいます。

本来は、魅力をしっかりと抽出したうえで、実際の業務プロセスに近い難易度の高い内容を提供すべきです。時間を短縮しつつ、ファシリテーションなどを使ってサポートしながら、「ギリギリ到達できるかどうか」のラインを狙うことが重要です。

新卒社員だって最初は先輩のサポートを受けながら仕事をするわけですから、学生たちだけで簡単に成果が出るような体験を提供するのは大きなギャップを生みます。

現状、仕事体験による採用が広まりきっていない理由はどうお考えですか?

仲上氏: とにかく手間がかかるという点に尽きます。通常、企業の若手社員が通常業務をやりながら設計を担当するため、十分に時間をかけられず、自社の魅力も抽出できないまま実施し、「効果がない」という負のスパイラルに陥っている企業が多いです。

また、新卒市場だけでなく、中途採用市場において「仕事体験」という入り口がほとんど存在しないことも問題です。異業種や他職種へ転職する際、仕事の実態を体験せずに「えいや」で入社を決めるのは非常にリスクが高く、1人あたり何百万円もの採用経費をかけても、ミスマッチですぐに辞めてしまうケースが後を絶ちません。

一般イメージと実態にギャップがある中小企業にこそ効果を発揮

SenseDriveのサービスは、とくにどのような企業に向いていますか?

仲上氏: 「一般の人々が抱いている仕事のイメージ」と「実態」が大きく離れている企業ほど、効果が出やすいです。例えば建設業は「3K」のイメージを持たれがちですが、実際にはホワイトカラーの仕事もたくさん存在します。そういった「知られていないギャップ」が大きい企業には非常に向いています。

また、採用媒体に多額の費用をかけられない中小企業様にもおすすめです。大企業のように広く浅く露出を買うのではなく、人数は少なくても「狭く深く」体験してもらい、ミスマッチの起きない採用をしていただくのが良いと考えています。

農業分野などでも、単純な農作業ではなく、6次産業化などの新しい商品企画といった「一般にイメージされていない仕事」が含まれるのであれば、体験していただく価値は非常に高いです。

目指すのは「大人のキッザニア」。仕事体験が街づくりに繋がる未来

最後に、SenseDrive株式会社が目指す今後の展望を教えてください。

仲上氏: 我々の最終的な目標は、「大人のキッザニア」のような、1箇所に行けば色々な仕事体験ができる場所を各地に作ることです。実は採用支援としてのオープンカンパニー受託は、その前段階として位置づけています。

現在、我々のプロダクトは「体験しないと価値がわからない」と言われることが多く、資金調達の面でも苦労しているため、誰でも体験できる無料のチュートリアル的なコンテンツの制作も進めています。

今後は横浜を中心に展開しつつ、ゆくゆくは私の住む静岡県三島市など全国の地域へと広げていきたいと考えています。その町にどんな素晴らしい企業があるのか、実はそこに住んでいる人たちすら知りません。

仕事体験のコンテンツを通じて、採用PRや製品PRだけでなく、地域のPRといった「街づくり」へと繋げていくモデルを展開したいです。

5年後にはどのような世界を実現したいですか?

仲上氏: 「やりたいことを見つけられる環境」が当たり前にある世界を目指しています。各地に仕事体験ができる場所があり、そこでの体験やフォローアップを通じて、自分がどんな仕事をやってみたいのか、自分に合うものは何なのかを見つけられる。

2026年には、まず「1箇所で複数の仕事が体験できる」という最初の実証を実現したいと考えています。

まとめ

SenseDrive株式会社 仲上 祐斗氏が手がけるオープンカンパニー支援の核心は、「第三者視点による魅力抽出」と「実務に近い難易度の体験設計」にあります。

自社では気づけない強みを可視化し、求職者に仕事のリアルを深く伝えることで、入社後のミスマッチを根本から防ぐアプローチは、採用媒体への大規模投資が難しい中小企業や、一般イメージと実態にギャップのある業界にとって、特に有効な手段となるでしょう。

さらに仲上氏が見据えるのは、採用支援にとどまらない未来です。各地に仕事体験の場を設け、地域の企業や産業の魅力を住民自身が知るきっかけをつくる。

その構想は、仕事体験を「街づくり」へと接続する、新しい社会インフラの可能性を示しています。

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