Trydent株式会社・井之川宗弘が語る 6,000社を見てきた元帝国データバンク調査員が教える「本当の事業計画書」とは

「自分の会社が、外からどう見られているか分かっていますか?」

この問いに自信を持って答えられる経営者は、意外に少ない。Trydent株式会社の代表取締役・井之川宗弘さんは、帝国データバンクの調査部長として約15年間で6,000社以上の経営者と面談してきた経験から、そう断言する。

企業の信用調査という仕事を通じて井之川さんが目の当たりにしたのは、思い込みで事業を進める経営者の姿と、一方で周囲を巻き込み予想を超える成長を遂げる企業の対比だった。この経験が、彼を「中小企業支援」という新たなキャリアへと駆り立てることになる。

50歳からの大転換 – 帝国データバンクから起業家へ

1970年生まれの井之川さんは、成蹊大学経済学部を卒業後、積水ハウスで住宅営業・不動産事業に従事。その後、帝国データバンクに転職し、企業調査員として入社した。

調査員の仕事は、企業の信用力を見極め、格付け評価を行うこと。6,000社を超える経営者と面談する中で、井之川さんは中小企業の抱える本質的な課題に気づいていった。

「自社を客観的に見られず、取引相手や顧客から自社がどう見られているか理解しないまま、思い込みで事業を進めている経営者が少なくありませんでした。良い技術やサービスを持っているのに世に認められず、会社が伸びないケースを山ほど見てきました。そこで働く従業員に良い給料を払いたくても払えない。そんな状況を見て、『こうすればいいのに』という思いを常に抱えていました」

一方で、利害関係者から積極的な応援を受けている企業は、予想以上の成長曲線を描く。この違いは何なのか。井之川さんは、「社内外で通用する事業計画書・中期経営計画書」の重要性を痛感していった。

しかし、サラリーマンである以上、本業はあくまで「企業情報の収集と提供」であり、コンサルティングではない。48歳の時、井之川さんは大きな決断を下す。

「60歳までこの仕事を続けると考えた時、これは自分の人生を賭ける仕事ではないと感じました。組織の外に出て、自分の思いを直接伝え、企業を動かしていくしかないと覚悟を決めました」

2019年8月、安定したキャリアを捨て、井之川さんはTrydent株式会社を設立した。

そして2020年、50歳にして中小企業診断士試験に挑戦。ストレート合格という快挙を成し遂げた。

「本格的に中小企業の経営を支えていく側に回ったときに、やはり体系的な中小企業の経営理論をどこかでしっかり学びたいという思いがありました」

調査部長まで務めた安定したキャリアを捨て、50代で新たな挑戦に踏み出す。その原動力は、「地域や日本を少しでも明るくしたい」という純粋な想いだった。

独立初年度の挫折――「看板」が外れた時

しかし、独立は決して順風満帆ではなかった。

「実は、独立時にお客様が8社ほどついた状態でスタートできたんです。しかし、1年間でその半分が消えました。理由は明確で、私が『帝国データバンクの元部長』という肩書きだけで仕事をしていたからです。看板が外れて一個人として付き合った時、経営者から『意外と使えない』『この金額を払う価値がない』と判断されたんですね」

さらに、コンサルタント特有の「型」にはめようとしたのも失敗だった。

「安定収入欲しさに年間契約を結び、毎月やることをこちらが決めてしまう。しかし、中小企業の社長は日々状況や気持ちが変わります。型通りに進めようとするコンサルは嫌われるんです。それに気づくのに1年かかりました」

この挫折が、井之川さんの「本当のコンサルティング」への道を開くことになる。

「資金調達のため」だけではない、本当の事業計画書とは

Trydentが提供するのは、単なる事業計画書作成代行サービスではない。井之川さんが掲げるのは、「資金調達や補助金取得目的だけではなく、従業員に夢を与え、社外にファンを増やし、継続的な成長に繋げる『本当の』計画書」だ。

では、「本当の計画書」とそうでない計画書の違いとは何か。

井之川さんによれば、それは「伝える力」にあるという。帝国データバンクで数千社を見てきた経験から、ビジネスモデルが優れていても、その優位性を周囲に伝えられなければ応援は得られないことを知っている。逆に、利害関係者を味方につけられる企業は、想定を超える成長を実現する。

Trydentが重視するのは、次の3つの視点だ。

1. 客観性の徹底

企業調査のプロとして培った「外部からどう見られているか」という視点を、事業計画書に反映させる。経営者の思い込みを排除し、実態に即した計画を描く。

2. 利害関係者との関係構築

銀行、投資家、取引先、従業員 – すべての利害関係者を「味方」にするための計画書を作る。単に数字を並べるのではなく、共感と協力を引き出す内容を目指す。

3. 伝わる表現力

どんなに優れたビジネスモデルも、伝わらなければ意味がない。専門用語に頼らず、誰が読んでも理解できる表現を心がける。

AI時代だからこそ問われる「ウォンツを引き出す力」

最近はAIで事業計画書を作るケースも増えているが、井之川さんは専門家の価値をこう語る。

「私もAIは使いますが、AIが作った計画書は日本語としては整っていても、中身がなく、その会社の本質が見えていません。重要なのは『プロンプト(指示)』です。その会社の業界、未来、課題、そして『融資』の種類(保証協会かプロパーか等)などの専門用語を理解して指示を出さないと、薄っぺらいものしか出てきません」

さらに井之川さんが重視するのが、経営者の「ウォンツ(潜在的な欲求)」を引き出すことだ。

「経営者は自分の思いを言語化するのが苦手な方が多い。『ニーズ(必要性)』という言葉はよく使いますが、『ウォンツ(潜在的な欲求)』という言葉はあまり使いません。AIや薄っぺらいコンサルには、この『ウォンツ』を引き出すことができません。蓋をされている経営者の思いを開いてあげて、それを現実的な計画に落とし込むのが私の役割です」

ただし、井之川さんは依頼を断るケースもあるという。

「実現能力がない場合や、補助金を単なる『お金もらい』と考えて不正や水増しをしようとする人とは付き合いません。そういう人は途中で切ります」

「数字は正直」だが「社長の愛嬌」が未来を決める

6,000社以上を見てきた井之川さんに、失敗する経営者と成功する経営者の違いを聞いた。

失敗する経営者に共通するのは?

「人の話を聞かない、視野が狭い、そして将来を見通さず『なんとかなる』と思っていることですね」

逆に、「この会社は伸びる」と確信するポイントは?

「経営者が『可愛がられる』ことです。素直で、先輩の話を聞ける人ですね。可愛げがある経営者には、周りが仕事や協力者を用意してくれます。本人が望む以上の成長を遂げることができるんです。逆に可愛げがなく突っ張っている人は、敵ばかり作ってしまいます」

また、企業評価においては、多くの人が見落としがちなポイントがあるという。

「多くの人はPL(損益計算書)を見がちですが、私はBS(貸借対照表)を重視します。PLはあくまで『成績表』ですが、BSは『健康診断書』だからです。いくら売上があっても、基礎体力となるBSが弱ければ、少し走っただけで骨折してしまいます。自己資本比率を上げ、財務を整えることが、銀行融資や補助金の審査においても、企業の存続においても最も重要です」

鉄道旅で培った「複数のルート」を提案する力

井之川さんには意外な趣味がある。それは「鉄道」だ。

「小学校高学年の頃から、一人で時刻表を片手に東京から鹿児島まで旅をしていました。当時はスマホもないので、乗り換え時間や距離を頭の中で計算し、どのルートで行くかを計画していました」

この趣味が、今の仕事に活きているという。

「まさに経営計画と同じなんです。ゴール(目的地)に行くために、お金を使って新幹線(時間を買う)で行くのか、時間はかかるけれど各駅停車(コストを抑える)で行くのか。あるいは、景色を楽しむためにあえて遠回りするのか」

「コンサルタントの仕事は、『新幹線に乗ればいいですよ』と言うことではありません。『飛行機という手もあるし、時間はかかるけど車窓が楽しめるルートもある』と、メリット・デメリットを含めた複数の選択肢(道筋)を一瞬で語れるかどうかが重要なんです」

帝国データバンク出身という強み

競合ひしめく事業計画書作成支援市場において、Trydentの最大の差別化ポイントは、井之川さんの経歴そのものだ。

50歳で中小企業診断士の資格を取得したが、どちらのキャリアが重要かと聞くと、井之川さんはこう答える。

「両方です。診断士だけでは『その他大勢』ですし、元TDB部長というだけでは『裏事情には詳しいが実務ができるか不明』と思われます。TDBで培った『企業の裏側や民間の厳しさ(Street Smarts)』を知っていることと、診断士として体系的な『公的資格(Book Smarts)』を持っていること。この両立が私の最大の武器です」

帝国データバンクでの企業調査経験は、「格付け・企業評価向上」という独自の専門性を生み出している。Trydentでは事業計画書作成だけでなく、企業評価・格付けアップ支援、営業開拓、ビジネスモデル構築まで一貫して対応できる体制を整えている。

また、経営革新等支援機関として国の認定も受けており、補助金申請支援においても高い信頼性を誇る。

着実な実績と全国対応体制

直近1年間の実績を見ても、月次顧問・コンサル契約16社、中期経営計画・新事業計画作成16件、資金調達実績5件、補助金申請3件、経営革新計画2件、ISO取得支援3件と、着実に成果を積み上げている。

Trydentのサービスは、Zoomなどのオンラインツールをフルに活用し、全国どこからでも利用可能だ。千葉県千葉市に拠点を置きながら、地理的制約を超えて中小企業をサポートしている。

対象となる顧客は、独立・起業を目指す創業者から、資金調達を検討する中小企業経営者、補助金申請を考える小規模事業者、社員への経営ビジョン共有を目指す企業、事業承継・経営改善を進める既存企業まで幅広い。

業種・業態を問わない姿勢も特徴で、これまで多種多様な業種での作成実績を持つ。

中小企業診断士としての使命

井之川さんは、スタディングの合格者インタビューでこう語っている。

「近年のコロナ禍においては多くの会社が事業再構築とか、新しい事業展開というのを模索している中で、そこに寄り添って共に歩めるのが中小企業診断士じゃないかと思います」

実際、2026年に入ってからも、「2025年度の補助金最終締切りが近づいています!」「数々の制作実績と伝わる『事業計画書・経営計画書』に仕上げます」と情報発信を続け、中小企業の支援に力を注いでいる。

また、東京中小企業家同友会の渋谷支部で積極的に活動し、経営指針成文化セミナーのサポーターや講師としても登壇。「出来る社長」研究ワーキンググループでの講演など、知見の共有にも注力している。

これからの展望

日本国内のコンサルティング市場は、2023年度で約2兆23億円。2030年には2.5兆円に達すると予測されている。DX化やオンライン化が進み、生成AIを活用したサービスも登場する中、事業計画書作成支援のニーズは今後も拡大が見込まれる。

特に事業承継市場の拡大は大きなチャンスだ。経営者の高齢化が進む中、後継者への円滑な事業承継をサポートする需要は高まる一方だ。

井之川さんは現在、スタッフ2名、パートナー4名という小規模精鋭の体制で運営している。規模を追うのではなく、一社一社に向き合い、質の高い計画書を提供し続けることに重きを置く姿勢が窺える。

「目先の利益だけを追うのではなく、本質的な問題に向き合い、自分だけでなく周りも幸せになるビジネスモデルを作れる経営者を支援していきたいです。これからは顧問先を増やしつつ、セミナーやコミュニティ活動を通じて、リアルな場での露出を増やしていきます。『このおっさんなら、長い目でしっかりやってくれる』と思ってくれる人と、長く付き合っていきたいですね」

経営者へのメッセージ

「自社を客観的に見ること」「周囲を味方につけること」「ビジネスモデルの優位性を伝えること」 – 井之川さんが15年間で6,000社を見てきた中で学んだこれらの原則は、どんな企業にも当てはまる普遍的な真理だ。

事業計画書は、銀行や投資家に見せるためだけのものではない。従業員に夢を与え、取引先を味方につけ、顧客をファンに変える。そんな「本当の計画書」が、企業の持続的な成長を支える。

50歳で新たな挑戦に踏み出し、ストレート合格という結果を出した井之川さん自身が、「学び続けること」「挑戦すること」の大切さを体現している。

趣味のテニス、ゴルフ、鉄道旅行で気分転換を図りながら、今日も井之川さんは中小企業の未来を照らす計画書づくりに情熱を注いでいる。

Trydent株式会社

  • 所在地: 千葉県千葉市花見川区幕張町5-417-17 1-1406
  • 代表者: 井之川宗弘
  • TEL: 080-5516-2734
  • 公式サイト: https://keiei-keikakusho.com/
  • 認定: 経営革新等支援認定機関

主なサービス

  • 独立・起業のための事業計画書作成
  • 新規事業のための事業計画書作成
  • 資金調達のための事業計画書作成
  • 社員の意思統一のための中期経営計画書作成
  • 企業評価・格付けアップ支援
  • 補助金申請支援
  • ISO9001/27001取得支援

ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございました。

経営者のストーリーには、会社のホームページや営業資料だけでは伝わらない
「なぜこの事業を始めたのか」という想いがあります。

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