「M&Aは結婚と同じ」株式会社大和経営 灘井新嗣氏に聞く、手数料より顧客の幸せを優先する非常識なM&A仲介の裏側

この記事でわかること
- 株式会社大和経営が業界で珍しい「ノルマなし・インセンティブなし」の制度を採用している理由
- M&Aを成功に導くための「決算書に表れない企業価値」の言語化手法
- 灘井新嗣代表の過去の挫折と、そこから生まれた「三方よし」の経営哲学
- 大阪・関西の中小企業における事業承継のリアルと解決策
なぜこの企業に注目すべきか
M&A仲介業界において、担当者の利益が優先されたり、高額な手数料がネックとなって事業承継を諦めてしまう中小企業は少なくありません。
そんな中、大阪・関西を中心に活動する株式会社大和経営は、「家族のような親身な対応」を理念に掲げ、大手仲介会社が手掛けない規模の案件にも寄り添い続けています。
本記事では、一般的な会社紹介では見えてこない、株式会社大和経営・灘井新嗣代表のリアルな経歴や失敗談、そして「M&A以外の選択肢」すらも提案する究極の顧客本位の姿勢について、独自インタビューで深掘りします。

会社概要
- 会社名:株式会社 大和経営
- 公式サイト:https://www.daiwa-keiei.co.jp/
- 代表者:代表取締役 灘井 新嗣
- 設立:2009年
- 事業内容:M&A仲介、経営企画室設置・アドバイザリーサービス
創業ストーリー
事業を始めたきっかけと原体験
灘井代表は独立当初、会計事務所からの紹介を通じて、経営者や資産家向けに保険代理店業務や財務改善支援に携わっていました。その後、提携していた税理士法人の役員から「事業承継やM&Aの業界には、まだまだ親身に寄り添う人が少ない。一緒にやらないか」と声を掛けられたことが、大きな転機となり、現在の事業承継・M&A支援の世界へ進むきっかけとなったそうです。
灘井氏が大切にしている「売り手よし、買い手よし、世間よし」という考え方の原点には、ご両親の存在があります。ご両親はともに幼少期に苦労を経験されたことから、困っている人を放っておけないお人柄だったといいます。
商売を営む中でも人との縁や信頼を大切にされていましたが、その一方で、人を信じるあまり借金の保証人となって損害を被るなど、経営者として辛い経験も少なくありませんでした。
そうしたご両親の姿を間近で見ながら育った灘井氏は、「両親のように悩みや苦労を抱える経営者の力になりたい」という想いを抱くようになったといいます。その想いを原動力に経営者支援の仕事へ進み、現在の株式会社大和経営の創業へとつながりました。
創業時の苦労と経営者としての葛藤
創業前後は、決して順風満帆な道のりではありませんでした。前職では入社当初から自費での営業活動が続き、数百万円あった貯蓄も徐々に減少していったそうです。修行期間と割り切りながらも、貯蓄を切り崩して生活を支える厳しい日々を過ごしていました。
独立後も資金的な余裕はなく、自宅から面談先まで約1時間半かけて自転車で向かうことや、スタッドレスタイヤを売却して運転資金の足しにすることもあったといいます。しかし当時を振り返ると、不安よりも「理念を掲げて独立し、自らの力で挑戦できる」という希望の方が大きかったそうです。
個人事業として3期を経て法人化し、従業員が増え始めた頃には、新たな課題にも直面しました。従業員との価値観の違いに悩み、次第に苛立ちを募らせ、従業員だけでなく家族に対しても厳しく接してしまう時期があったといいます。
灘井氏はその頃を「人生で最も苦しかった時期の一つ」と振り返ります。自らが「本来なりたくなかった自分」になってしまっていることに気付き、経営者としての在り方を根本から見つめ直すきっかけになりました。人、組織、お金など、経営に関わるさまざまな課題と向き合う中で、大きな葛藤を経験されたそうです。
事業の特徴
今回の取材を通じて感じたのは、株式会社大和経営が単なるM&A仲介会社ではなく、経営者に寄り添う伴走型の支援を重視している点です。同社では、一般的なM&A業界の慣習にとらわれない独自の取り組みを行っています。
ノルマ・インセンティブに依存しないチーム支援
大和経営の大きな特徴の一つが、M&A業界では珍しい「ノルマなし・インセンティブなし」の評価制度です。
灘井氏によれば、個人インセンティブを強く設定すると、担当顧客への過度な執着や社内での不公平感が生じやすくなり、結果として組織内の助け合いが機能しにくくなるとのことです。
そのため同社では、一人の顧客を会社全体で支援する体制を重視しており、チームで最適な解決策を提供できる組織づくりに取り組んでいます。

中小企業に寄り添う料金体系
大和経営では、最低手数料を450万円(過去には200万円で対応していた時期もあったとのこと)に設定しています。
大手M&A仲介会社では最低手数料が1,000万円から2,000万円以上となるケースも少なくない中、中小企業でも相談しやすい料金体系を目指しているそうです。
その結果、大手では採算面から対応が難しいとされる小規模案件や赤字企業の事業承継支援にも取り組んでいます。

決算書だけでは見えない企業価値の言語化
取材の中で特に印象的だったのは、「数字に表れない価値を伝えることの重要性」についてのお話でした。
灘井氏は、中小企業には決算書だけでは測れない価値が数多く存在すると考えています。
例えば、
- 経営者の人柄
- 経営理念や企業文化
- 長年築いてきた顧客との信頼関係
- 独自の営業手法やマーケティングの仕組み
- 従業員の人柄、技術、資格、年齢
などです。
こうした目に見えにくい価値を整理し、企業概要書やノンネームシートに落とし込むことで、買い手企業から適切な評価を得られるよう努めているそうです。

全体最適を重視した提案
大和経営では、M&Aの成約そのものをゴールとは考えていません。
灘井氏は、「M&A後に関わる人たちが幸せになれるかどうかが重要」と語ります。
そのため、案件によってはM&Aを推奨せず、「円満廃業」や「親族内承継」など、別の選択肢を提案することもあるそうです。
実際に、買い手企業との価値観や経営方針に大きな違いがあると判断した場合には、成約による収益よりも顧客にとっての最適な選択を優先して提案してきたといいます。
こうした姿勢は、大和経営が掲げる「買い手よし、世間よし、売り手よし」の考え方にも通じているように感じました。
インタビューQ&A
今回は、株式会社大和経営 代表取締役の灘井新嗣氏に、事業にかける想いや具体的なエピソードを伺いました。
Q. 創業期には社員やご家族に厳しく接してしまった時期もあったと伺いました。そこからどのような変化があったのでしょうか?
A. 保険代理店からM&A支援へと事業領域を広げていく中で、従業員との価値観の違いに悩み、その感情を従業員だけでなく家族や子どもにも向けてしまっていた時期がありました。
特に、子どもから「パパって子どものこと好きじゃないよね?」と言われた時は、本当に胸に突き刺さるものがありました。自分では家族のために頑張っているつもりでしたが、家族にはそう伝わっていなかったのだと気付かされた瞬間でした。
そんな自分を変えたいという思いから、それまで名前だけ登録してほとんど参加できていなかった盛和塾(経営塾)に本格的に参加するようになりました。
そこで多くの先輩経営者から学ばせていただき、経営に対する考え方だけでなく、人としての在り方についても深く教えていただきました。その学びを通じて、自分自身の人生経験から生まれる経営理念を明確にし、従業員の存在のありがたさにも改めて気付くことができました。
今振り返ると、あの時期があったからこそ、経営者としても人間としても成長することができたのだと思います。
Q. 業界でも珍しい「ノルマなし・インセンティブなし」の制度を導入された理由を教えてください。
A. 実は以前は、インセンティブ制度を導入していた時期もありました。しかし、会社が獲得した案件によって個人の報酬が大きく左右されることで、必ずしも本人の貢献度と報酬が一致しないケースがありました。また、個人の成果が優先されることで、社内での情報共有や助け合いが生まれにくくなるという課題も感じていました。
私たちが本当に実現したいのは、「一人のお客様を会社全体で親身に支援すること」です。そのため、個人インセンティブを廃止し、顧客満足の向上や会社全体の業績向上に貢献した結果を、基本給や賞与に反映する仕組みに変更しました。
その結果、従業員同士が気軽に相談し合い、必要な時には自然に助け合える組織風土が育まれてきたと感じています。お客様にとっても、担当者一人ではなく会社全体で支援を受けられる体制になっているため、この制度に変更して良かったと実感しています。
Q. 「良心を大切にする」というバリューを掲げておられますが、現場でその価値観を大切にされた印象的なエピソードはありますか?
A. ある地域密着型の医療法人様から、事業承継に関するご相談をいただいた時のことです。院長先生は患者様や従業員を大切にされており、組織全体にも温かい雰囲気がありました。
その後、買い手候補は見つかったのですが、院長先生が大切にされてきた理念や組織文化、経営手法とは大きな違いがありました。
そんな中、奥様から「私たちは本当にM&Aに向いているのでしょうか」とご相談をいただきました。
私は率直に、「現在の買い手候補とは理念や経営方針に大きな違いがあり、仮に成約したとしても、これまで築いてこられた組織風土が損なわれる可能性があります。そのため、現時点でのM&Aはおすすめできません」とお伝えしました。
その代わりに、院長先生にはあと数年だけご尽力いただき、その間に従業員の皆様の雇用や患者様の通院環境を守りながら、最終的には『円満廃業』という選択肢も検討されてはどうかとご提案しました。
その方法が、患者様、従業員の皆様、そして院長先生ご夫妻にとって、最も納得感のある選択になるのではないかと考えたからです。
結果として、M&Aの成約による報酬にはつながりませんでしたが、お客様には大変感謝していただき、その後の伴走支援について別途ご依頼をいただくことになりました。
私たちは、M&Aを成立させること自体を目的とは考えていません。お客様や関係者の皆様にとって何が最善かを考え、その実現をお手伝いすることを大切にしています。この出来事は、そうした私たちの考え方を象徴するエピソードの一つだと思います。
Q. 関西・大阪の中小企業経営者ならではの事業承継の課題は感じられますか?
A. 私たちは大阪を拠点にしていますが、現在は関西だけでなく、東京をはじめ全国の経営者様からご相談をいただいています。その上で感じるのは、関西の経営者の皆様には良い意味で個性が強く、ご自身の経験や独自の経営手法で会社を成長させてこられた方が多いということです。
その一方で、経営者ご自身の力量に依存して事業が成り立っているケースも少なくなく、後継者育成や権限移譲を計画的に進めることが後回しになってしまうことがあります。
また、事業承継や組織づくり、人材育成といった目に見えにくい経営課題については、「まだ大丈夫」と考えられ、専門家への相談が後手になるケースも見受けられます。
ただ、これは関西に限った話ではなく、東京やその他の地域でも共通する課題だと感じています。事業承継は準備期間が長いほど選択肢が広がるため、地域を問わず、できるだけ早い段階から相談できる環境づくりが大切だと思います。
だからこそ私たちは、地域に関係なく、経営者の皆様に親身に寄り添いながら、一社一社の状況に応じた伴走支援を行うことを大切にしています。
Q. どのような経営者様が大和経営のサービスに向いているでしょうか?逆に合わないケースもありますか?
A. 私たちは、事業承継やM&Aを単なる売買ではなく、会社やそこに関わる人たちの未来をつなぐ大切な機会だと考えています。
そのため、ご自身の経済的な希望だけでなく、「従業員の雇用を守りたい」「お客様や取引先との関係を大切にしたい」「理念や企業文化を良い形で引き継ぎたい」といった想いをお持ちの経営者様とは、とても相性が良いと感じています。そのような経営者様は、結果として価値観の合う良い買い手様と巡り合われることも多いですね。
一方で、私たちは条件面だけを重視したM&Aを目指しているわけではありません。売り手様、買い手様、従業員様、お取引先様など、関わる皆様にとってより良い形を模索しながら進めていくことを大切にしています。
そのため、短期的な条件や経済的な側面のみを重視される場合には、私たちの支援方針との間に考え方の違いが生じることもあるかもしれません。
もちろん、経済的な条件は非常に重要です。しかし、それだけではなく、その先にある会社の未来や関わる方々の幸せまで見据えて考えたいという経営者様にこそ、私たちのサービスをご活用いただければ嬉しく思います。
経営者として大切にしている価値観
「恩送り」の精神
今回のインタビューの中で、特に印象的だった言葉の一つが「恩送り」でした。
恩返しではなく、恩送り。
この考え方は、灘井氏が先輩経営者から教わり、大切にされている価値観の一つだそうです。
お客様に何かを提供した際にも、「私に返していただかなくて大丈夫です。その代わり、ご自身が受けた良いことを、また別の誰かにしてあげてください」とお伝えすることがあるといいます。
自分が受けた善意や支援を次の世代や別の誰かへつないでいく。その積み重ねが社会全体をより良くしていく――。
灘井氏は、そのような想いを大切にしながら日々の仕事に向き合っていると語っていました。
M&Aは「結婚」と同じ
灘井氏は、M&Aを単なる企業の売買とは考えていません。
インタビューの中でも、「M&Aは結婚と同じだと思っています」という言葉が印象的でした。条件が合えば成立するものではなく、その後に良好な関係を築き、お互いが幸せになれるかどうかが重要だという考え方です。
だからこそ、譲渡価格や契約条件だけでなく、経営理念や価値観、事業に対する考え方など、お互いを深く理解することが欠かせないと語ります。
M&Aの成立はゴールではなく、新たなスタートである。その考え方は、大和経営の支援方針にも強く表れているように感じました。
成功の定義は「従業員が誇れる会社」であること
灘井氏にとって、経営者としての成功は売上や企業規模だけではありません。
「従業員が自分の子どもに『お父さんの会社に入りなよ。幸せになれるぞ』と心から言えること」、そして「子どもたちが親の働く姿を見て憧れを抱けるような会社になること」こそが、本当の意味での成功だと考えているそうです。
会社の成長や利益も大切ですが、その先にいる従業員やご家族が幸せを感じられることを何よりも重視している点に、灘井氏の経営観が表れているように感じました。
今後のビジョン
M&Aのその先、経営の根本から支える存在へ
灘井氏は、株式会社大和経営の将来像について、「日本一優しいM&A・経営アドバイザリー会社を目指したい」と語ります。
一方で、事業承継やM&Aの課題は、実際に譲渡を検討する段階になって初めて生まれるものではないとも考えています。
財務、人材育成、組織づくり、マーケティングなど、経営上の課題を早い段階から解決していくことで、事業承継や企業成長の選択肢は大きく広がります。
そのため今後は、M&A支援にとどまらず、経営者が抱えるさまざまな課題に対応できるネットワークや仕組みづくりを進め、より早い段階から経営者に寄り添える存在を目指していきたいと考えているそうです。
全人類相互扶助幸福社会の実現へ
灘井氏が事業を通じて目指しているのは、「全人類相互扶助幸福社会の実現」です。
一見すると大きな理念にも感じられますが、その根底には「人は一人では生きていけない」という考え方があります。人が互いに支え合い、それぞれが物心両面の幸福を追求できる社会を実現したい。その想いが、経営支援や事業承継支援の原動力になっているそうです。
その具体的な姿の一つとして灘井氏が描いているのが、「子どもたちが大人になることに希望を持てる社会」です。
大和経営が関わることで、経営者が成長し、従業員が生き生きと働く企業が増える。そのような企業が社会に広がることで、子どもたちが親の働く姿に憧れ、「人に喜んでもらいながら人生を豊かにする働き方」に希望を抱けるようになる。
そんな未来の実現を目指していると語ってくださいました。
読者へのメッセージ
現在、経営に悩まれている方や、後継者問題、事業承継・M&Aをご検討されている中小企業経営者の皆様に、灘井氏が最もお伝えしたいことは、「なるべく早い段階で、信頼できる相談相手を見つけて対話してほしい」ということだそうです。
M&A仲介会社に限らず、会社の歴史や信用、ビジネスモデルを深く理解し、次世代に向けてどのように組織を整えていくべきかを親身に考えてくれる相談相手の存在は非常に重要です。
経営者は多くの責任を背負う立場だからこそ、一人で抱え込まず、早い段階から第三者と対話を重ねながら、会社とご自身の未来について考える時間を持ってほしいと語ります。
「経営者の皆様にとって、何でも気軽に相談できる家族のような存在でありたい。」
そんな想いを持ちながら、日々経営者支援に取り組んでいることが、今回のインタビューを通じて伝わってきました。
まとめ
この記事のポイント
- 株式会社大和経営は、顧客にとって最適な提案を実現するため、「ノルマなし・インセンティブなし」の組織運営を行っている。
- 決算書の数字だけでは見えない企業の価値を言語化し、事業や企業文化の魅力を適切に伝える支援を行っている。
- M&Aの成約そのものを目的とせず、「円満廃業」や親族内承継なども含めた全体最適の視点を大切にしている。
- 灘井氏は「恩送り」の精神と「M&Aは結婚と同じ」という考え方を大切にしながら、経営者支援に取り組んでいる。
- 「子どもたちが大人になることに希望を持てる社会」の実現を目指し、経営者や企業の成長支援を行っている。
どのような企業に向いているか
- 事業承継やM&Aについて相談したい中小企業経営者
- 会社の規模や案件規模を理由に、大手仲介会社では十分な支援を受けにくかった企業
- 価格や条件だけでなく、理念や企業文化、従業員への想いも大切に引き継ぎたいと考えている経営者
- M&Aを行うべきかどうかも含めて、第三者の視点から幅広く相談したい経営者
- 関西圏に限らず、全国で事業承継や経営課題について相談できる伴走型の支援先を探している企業
今回のインタビューを通じて感じたのは、大和経営が単なるM&A仲介会社ではなく、経営者の想いや企業の未来に寄り添う「経営の相談役」としての役割を大切にしていることでした。
事業承継やM&Aを検討している方はもちろん、「今すぐではないが将来に備えたい」と考えている経営者にとっても、一度相談してみる価値のある存在と言えるかもしれません。

ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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