なぜ「ボキボキしない整体」に舵を切ったのか?株式会社May-Plus代表・阿部純治氏が描く「整体を第4の生活習慣にする」未来

この記事でわかること
- 業界のグレーな慣習(保険不正請求など)から脱却し、完全自費診療へ移行した経営判断の裏側
- 受付業務のDX化により、人件費を2000万円から800万円に削減した具体的な施策
- スタッフの「平均月収50万円」を目指す、理念と経済合理性を両立した「ダイヤモンド型組織」の構築法
- 「CUREPRO」ブランドが目指す、整体を「第4の生活習慣」にするという社会的ビジョン
なぜこの企業に注目すべきか
全国に乱立し、競争が激化する整骨院・整体院業界。その中で、埼玉県・東京都を中心に「CUREPRO(メイプラスグループ)」を展開する株式会社May-Plusは、業界の常識にとらわれない独自の経営手法で注目を集めています。
代表の阿部純治氏は、グレーな保険請求が横行する業界の体質に異を唱え、売上が一時的に激減するリスクを負ってでも「完全自費診療」へと舵を切りました。
さらに、コロナ禍を機に店舗業務のDX化を断行し、劇的な生産性向上を実現。単なる店舗拡大(出店)をゴールとせず、働くスタッフの幸福と経済的豊かさを徹底的に追求する同社の経営哲学は、治療院業界のみならず、あらゆる店舗ビジネス・サービス業の経営者にとって大きなヒントとなるはずです。

会社概要
- 会社名:株式会社May-Plus(ブランド名:CUREPRO / メイプラスグループ)
- 公式サイト:https://mayplus-recruit.com/
- 代表者:阿部純治
- 設立:2011年創業(日の出整骨院)、2013年法人化
- 事業内容:姿勢改善専門の整骨院・整体院の運営(埼玉・東京・千葉エリアにドミナント展開)。完全自費診療・ボキボキしない整体を提供。
創業ストーリー

法学部から治療家へ。祖母の介護現場で芽生えた「人の役に立つ仕事」への想い
阿部純治氏は日本大学法学部を卒業していますが、当時は明確なキャリアを描けておらず、「フリーターくらいのキャリアで考えていた」と振り返ります。
そんな阿部氏が治療家を志す大きな転機となったのは、祖母が介護施設に入所したことでした。 施設を訪れた際、職員たちが献身的に介護やリハビリテーションを行う姿を目の当たりにし、「自分もこういう人の役に立てる仕事がしたい」と強く感じたと言います。
そして、「ゆくゆくはおばあちゃんのように介護状態にならないための体づくりをサポートできる治療家になりたい」という想いから、中央医療学園専門学校へ入り直し、柔道整復師の道を歩み始めました。
独立への渇望と、思い通りにいかなかった創業期の苦労
専門学校卒業後、大手整骨院グループで院長を経験した阿部氏は、自身の「もっと成長したい、患者さんの満足度を高めたい」という欲求と、現状維持を好む当時の共同経営者との熱量の違いから独立を決意します。
2011年、埼玉県八潮市に「日の出整骨院」を開業しましたが、順風満帆な船出ではありませんでした。初月の売上は約50万円ほどで、損益分岐点を超えられない厳しいスタートだったと語ります。
また、創業当時は「3年で3店舗展開」を思い描いていましたが、実際には採用の壁や、院長を任せられる管理者の育成に想定以上の時間がかかりました。結果的に3店舗目を出店できたのは創業から約4年後の2015年となり、組織づくりの難しさを痛感する時期となりました。
事業の特徴
株式会社May-Plusが展開する「CUREPRO」は、競合他社とは明確に異なる独自性を打ち出しています。

1. 誇りを持てる「完全自費診療」への移行
整骨院業界では、本来は適用外である肩こりや慢性腰痛に対して、捻挫などと偽って保険請求を行うグレーな慣習が一部で蔓延しています。
阿部氏はこの現状に対し、「後ろめたいことをして保険で稼ぎ続けるのは苦しい」「誇りを持って仕事をしたい」と考え、完全自費診療への切り替えを決断しました。
2. 安全性と再現性を担保する「ボキボキしない整体」
施術面では、「ボキボキしないソフトな整体」を徹底しています。かつて阿部氏自身も骨を鳴らす施術を行っていましたが、恐怖心を抱く患者さんが多いことに気づきました。
また、技術の未熟なスタッフが力任せに施術を行うことで、患者さんを危険に晒すリスクを排除し、誰が施術しても高い再現性と安全性が保てる仕組みを構築しています。
3. DX化による圧倒的な生産性向上
コロナ禍を「ピンチからチャンスに変えた」と語る阿部氏。受付スタッフを正社員からアルバイトに切り替え、セルフレジの導入や電話対応の外注化など、店舗オペレーションのDX(デジタルトランスフォーメーション)を一気に進めました。
これにより、約2000万円かかっていた事務・受付の人件費を約800万円まで圧縮。施術者が施術のみに集中できる環境を整え、利益率の大幅な改善に成功しています。
インタビューQ&A
ここからは、阿部純治代表への独自のインタビューを通じて、公式サイトには載っていないリアルな経営の内幕や葛藤に迫ります。
Q. 保険診療から完全自費診療に切り替えた際、経営的なインパクトはどの程度ありましたか?
阿部氏: 非常に大きなインパクトがありました。
例えば、保険と自費を組み合わせて月150万円の売上があった店舗が、自費に切り替えた瞬間に100万円ほどまで落ち込みました。つまり売上が一気に3分の1ほど減ってしまったんです。
さらに、スタッフの抵抗も強かったです。「自費で単価を上げるのが怖い」「自費診療はやりたくない」と反発するスタッフもいて、実際に人が辞めていく時期もありました。ただ、コンプライアンスを守り、嘘をつかずに正々堂々と胸を張って仕事をするためには、避けては通れない苦しい移行期間でした。
Q. 過去に最も経営的に厳しかった時期と、その乗り越え方を教えてください。
阿部氏: 受付スタッフを正社員として多く雇用していた時期が一番苦しかったですね。
高い給与を払っていましたが、直接的な生産性を生むわけではなく、社内で人間関係のトラブルが多発し、利益を圧迫するだけでなく社内の雰囲気も最悪でした。
それがちょうどコロナの時期と重なったため、一気に社内体制を変える決断をしました。受付の正社員雇用をやめ、セルフレジの導入や電話対応の外注化といったDX化を推進しました。これにより、トラブルが激減しただけでなく、施術者が施術に集中できる環境が整い、業績は逆に安定しました。
Q. ブランド名を店舗ごとの名前から「CUREPRO」に統一した狙いは何でしょうか?
阿部氏: これまで店舗ごとに屋号(名前)が違っていたため、グループとしてのまとまりがなく、会社自体の認知度が全く上がっていませんでした。
認知されないということは、患者さんを集めるのも、採用活動をするのも圧倒的に不利になります。 そこで、我々が誇りを持っている「治療・直すことのプロ」という意味を込めて「CUREPRO(キュアプロ)」というブランド名を立ち上げ、屋号を統一することで、採用と集客のブランド力を強化しています。
Q. 採用面接において、阿部さんが必ず見ているポイントは何ですか?
阿部氏: 質問の内容よりも、「この人を採用したら患者さんが喜んでくれるか」「既存のスタッフが仲間として受け入れてくれるか」の2点しか見ていません。
具体的には、共感能力の高さや協調性、コミュニケーション能力です。ちゃんと論理的に会話ができるか、表情や態度は良いか。逆に、話していて論理が破綻していたり、そもそも感じが悪い人は、どれだけ技術があっても当社のカルチャーには合わないと判断しています。
経営者の価値観
「患者様とスタッフと愛する家族を幸せにする」
株式会社May-Plusの経営の根幹にあるのがこの理念です。阿部氏はスタッフの「幸せ」を具体的に4つに因数分解しています。

- 働きがい(仕事のやりがい)
- 経済的な安定(給与や休みの確保)
- 良好な人間関係(誰と働くか)
- 仕事そのものが楽しいか
創業当初、スタッフの入退社が繰り返される中で「どうすればスタッフは幸せになれるのか」を本気で考え抜いた結果、この理念に行き着きました。
理念と経済合理性を両立する「万徳経営」
阿部氏の経営判断の土台には、「万徳経営」や「ダイヤモンド型組織」という哲学があります。これは一部のトップだけが稼ぐピラミッド型の組織ではなく、現場で働くスタッフ全員が豊かになる組織形態を指します。
「出店(店舗を増やすこと)はゴールではありません。スタッフ個々の平均給与水準が底上げされ、成長し続けられているかどうかが本当のゴールです」と阿部氏は力強く語ります。
「会いに行くのが楽しみな治療家」へ
技術があって症状を改善するのは「当たり前」であり、プロとしての最低条件です。阿部氏が理想とするのは、人間的な魅力に溢れ、患者さんから「先生に会いに行くのが楽しみだ」と言ってもらえる治療家です。
今後のビジョン
5年後に目指す「スタッフ平均月収50万円」の組織
会社としての具体的な目標は、5年後(2031年頃)に現在の約3倍となる「30院・売上10億円・スタッフ100名体制」を掲げています。しかし、阿部氏が最も重要視しているのは規模の拡大ではありません。
「現在約42〜43万円のスタッフ平均月収を、5年後には50万円の組織にしたい。院長にならなくても50万円稼げるスタッフを増やし、業界で働く人が安定して幸せに活躍できる環境を作ることが目標です」
マネージャーや院長などの役職ポジションを増やし、社員が次々とキャリアアップできるプラットフォームの構築を目指しています。
整体を「第4の生活習慣」にし、日本の医療費問題を解決する
さらに大きな社会的なビジョンとして、整体を食事・運動・睡眠に次ぐ「第4の生活習慣」として定着させることを目指しています。 「誘惑が多く、自律神経が乱れやすい現代社会において、定期的に身体をメンテナンス(ピットイン)することは不可欠です。
私たちが正しいケアを提供し続けることで、不健康になる人を減らし、結果的に日本の膨張する医療費や無駄な薬の削減に貢献したいと考えています」
読者へのメッセージ
阿部純治氏の経営ストーリーは、単なる「治療院の成功譚」にとどまりません。 業界にはびこるグレーな慣習との決別、痛みを伴う自費診療への移行、大胆なDXによる生産性の向上、そして何より「社員の経済的豊かさと幸福」をKPIの中心に据える姿勢。
これらは、人材不足や利益率の低下に悩むすべての店舗ビジネス・サービス業の経営者にとって、一つの確固たるロールモデルになるのではないでしょうか。
「勝てる場所(業界)を選び、理念と経済合理性を両立させる」。阿部氏のこの言葉には、したたかな戦略と深い人間愛が同居しています。
まとめ
この記事のポイント
- コンプライアンスを重視し、痛みを伴いながらも「完全自費診療」へ移行し高収益体質を実現。
- コロナ禍を機に受付業務のDX化を断行。人件費を大幅に削減し、施術に集中できる環境を構築。
- 「出店」を目的化せず、スタッフの「平均月収50万円」を目指すダイヤモンド型組織の実現。
- 整体を「第4の生活習慣」として定着させ、日本の医療費削減に貢献するという壮大なビジョン。
こんな企業・経営者におすすめ
- 業界の古い慣習や価格競争から抜け出し、高単価・高付加価値モデルへ転換したい経営者
- 店舗ビジネスにおいて、人材の定着率や生産性の低さに課題を感じているマネジメント層
- 理念だけでなく、具体的な「従業員の経済的豊かさ(給与水準の向上)」をどう実現すべきか模索している方

ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございました。
経営者のストーリーには、会社のホームページや営業資料だけでは伝わらない
「なぜこの事業を始めたのか」という想いがあります。
創業のきっかけ、苦労したこと、そしてこれから実現したい未来。
こうした話を聞くたびに、日本にはまだまだ面白い経営者がたくさんいると感じます。
そのストーリーを残すために、現在【経営者1000人インタビュープロジェクト】を進めています。
この企画では、
- 創業のストーリー
- 事業の強み
- 経営者の価値観
- これからのビジョン
などをお聞きし、記事として公開しています。
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