ホームページがない会社は本当に不利なのか?業界の実態と対策を徹底解説

「気になる企業を調べたら、ホームページが見つからない」「応募を考えている会社にWebサイトがない」――そんな経験をしたことはないでしょうか。
現代のビジネスシーンでは、企業のホームページは「あって当たり前」と考えられています。実際、帝国データバンクの調査によれば、従業員数50名以上の企業では約90%がホームページを保有しているという結果も出ています。では、残りの10%、そして中小・零細企業も含めればさらに多くの「ホームページがない会社」は、なぜWebサイトを持たないのでしょうか。
本記事では、ホームページがない会社の実態を多角的に分析します。単に「遅れている」「怪しい」と片付けるのではなく、その背景にある経営判断、業種特性、そして実際のビジネスへの影響を掘り下げていきます。さらに、ホームページがなくても成果を出している企業の戦略や、これから制作を検討する際の実践的なポイントまでお伝えします。
ホームページがない会社の実態:数字から見る現状
まず、どれくらいの企業がホームページを持っていないのか、データを見ていきましょう。
総務省の「通信利用動向調査」によると、資本金3億円以上の企業ではホームページ開設率が約98%に達する一方、従業員数10名未満の小規模事業者では約60%程度にとどまっています。この差は何を意味するのでしょうか。
規模別のホームページ保有率(2023年調査)
企業規模 保有率 大企業(従業員1000名以上) 約98% 中堅企業(従業員100-999名) 約92% 中小企業(従業員10-99名) 約75% 零細企業(従業員10名未満) 約60%
この数字が示すのは、企業規模とデジタル対応には明確な相関関係があるという事実です。ただし、ここで注意すべきなのは「保有していない=必要ない」とは限らないという点です。
業種による違いも顕著
さらに興味深いのは、業種によって保有率に大きな開きがあることです。製造業や情報通信業では90%を超える一方、建設業や運輸業では70%前後、飲食サービス業では65%程度と、業種特性が色濃く反映されています。
これは何を意味するのか。BtoB中心の業種や既存顧客との関係性で成り立っているビジネスでは、Webサイトの優先順位が相対的に低くなる傾向があるのです。逆に言えば、新規顧客開拓が重要な業種ほどホームページの保有率が高いといえます。
ホームページがない会社が抱える5つの具体的なリスク
では、ホームページがないことで、企業はどのような影響を受けるのでしょうか。よく語られる「信頼性の問題」だけでなく、より実務的な観点から整理していきます。
1. 機会損失の可視化が困難
ホームページがない最大の問題は、失っている機会を計測できないことです。
電話やメールでの問い合わせは記録に残りますが、「検索したけど見つからなかったから他社にした」という潜在顧客の行動は、企業側には一切見えません。マーケティングの世界では「測定できないものは改善できない」という原則がありますが、まさにこの状況が当てはまります。
ある製造業の経営者は、長年ホームページを持たずに営業してきましたが、競合他社が相次いでWebサイトを立ち上げたことをきっかけに制作を決意しました。公開後3か月で、それまで想定していなかった地域からの問い合わせが月平均8件入るようになったといいます。年間で約100件近い商談機会が、これまで素通りしていた可能性があるわけです。
2. 人材採用における競争力の低下
求職者の行動パターンは、この10年で劇的に変化しました。かつては求人情報誌やハローワークが主流でしたが、現在は求職者の約85%がインターネットで企業研究を行っているという調査結果があります(マイナビ調べ)。
特に若手人材ほどこの傾向は顕著です。新卒採用を行っている企業の人事担当者によれば、「会社のホームページがないと、エントリー前の段階で候補から外されることが多い」といいます。
求職者が企業Webサイトで確認する主な項目:
会社の事業内容と将来性
職場の雰囲気(写真や動画から)
経営者のメッセージや企業理念
福利厚生や働き方に関する具体的な情報
既存社員の声やインタビュー
これらの情報がないと、求職者は「この会社は情報公開に積極的でない」「社内環境に自信がないのでは」と推測してしまう可能性があります。
3. 電話対応コストの増大
意外と見落とされがちなのが、問い合わせ対応の非効率性です。
ホームページがあれば、営業時間、所在地、よくある質問、サービス内容などの基本情報を24時間提供できます。しかしWebサイトがない場合、これらすべてを電話で対応する必要があります。
実際に計算してみましょう。1日平均10件の基本的な問い合わせ電話があり、1件あたり平均5分対応するとします。
1日:10件 × 5分 = 50分
月間(20営業日):約16.7時間
年間:約200時間
時給換算で1,500円とすると、年間約30万円のコストが電話対応だけでかかっている計算になります。これは直接的な人件費だけで、本来の業務を中断されることによる機会損失は含まれていません。
4. 情報の一元管理ができない
企業情報は常に変化します。住所変更、電話番号の変更、サービス内容の追加、料金改定など、さまざまな更新が発生します。
ホームページがない場合、こうした情報更新を個別に対応しなければなりません。名刺の刷り直し、パンフレットの作り直し、各取引先への連絡――情報更新のたびに多大な手間とコストが発生します。
一方、Webサイトがあれば、まず公式サイトの情報を更新し、「詳しくはホームページをご覧ください」と案内できます。情報の一元管理と効率的な伝達が可能になるのです。
5. ブランディングの機会喪失
ブランディングというと大企業の話のように聞こえるかもしれませんが、中小企業こそ自社の強みや価値観を正確に伝える場が必要です。
名刺交換やチラシだけでは、企業の理念、こだわり、技術力の詳細、導入事例など、深い情報を伝えきれません。ホームページは、自社の世界観を自由に表現できる「デジタルなショールーム」なのです。
特にBtoB企業の場合、商談前に相手企業のWebサイトを確認することは、もはやビジネスマナーの一部となっています。そこで自社の専門性や実績をしっかり見せられるかどうかが、商談のスタートラインを決めるといっても過言ではありません。
なぜホームページを作らないのか:経営者の本音
ここまでリスクを見てきましたが、それでもホームページを持たない企業が存在するのはなぜでしょうか。表面的な理由だけでなく、経営者の本音に迫ります。
理由1:投資対効果が見えない
最も多く聞かれるのが「作っても効果があるか分からない」という声です。
確かに、ホームページは制作しただけでは成果は出ません。SEO対策、定期的な更新、コンテンツの充実など、継続的な運用が必要です。初期投資だけでなく、ランニングコストも含めて考える必要があるため、二の足を踏む経営者が多いのは理解できます。
しかし、ここに落とし穴があります。「効果が見えない」のではなく、「効果の測り方を知らない」ケースが大半なのです。アクセス解析、問い合わせ数の変化、検索順位の推移など、Webマーケティングには明確な指標が存在します。
理由2:誰に任せればいいか分からない
特に従業員数10名以下の小規模事業者では、Web担当者を専任で配置する余裕がありません。「パソコンが得意そうな若手に任せる」という属人的な対応になりがちで、その担当者が退職すると更新が止まってしまうというパターンも珍しくありません。
制作会社に依頼する場合も、価格の相場が分からない、どこに頼めばいいか判断基準がない、といった不安があります。実際、ホームページ制作の料金は10万円から数百万円まで幅広く、適正価格を見極めるのは専門知識がないと難しいのが現実です。
理由3:既存の営業手法で十分回っている
これは特にBtoB企業や地域密着型ビジネスでよく聞かれる理由です。
「長年の取引先があり、紹介で新規顧客も獲得できている」「地元の評判で仕事が回ってくる」――こうした企業では、現状で業績が安定していればホームページの必要性を感じにくいのは自然なことです。
ただし、ここで見落とされがちなのが、ビジネス環境の変化です。主要顧客の世代交代、競合の台頭、市場の縮小など、外部環境は常に動いています。「今は大丈夫」が「5年後も大丈夫」を保証するわけではありません。
理由4:更新する時間がない
「作っても更新できない」という懸念もよく聞かれます。
確かに、頻繁な更新が必要な業種もあれば、基本情報さえ掲載されていれば十分な業種もあります。すべての企業がブログを毎週更新する必要はないのです。
むしろ重要なのは、更新頻度よりも掲載情報の正確性です。古い情報が放置されているWebサイトよりも、シンプルでも常に最新情報が保たれているサイトの方が信頼されます。
理由5:そもそも必要性を実感していない
率直に言って、この理由が最も根深い問題かもしれません。
デジタルマーケティングに馴染みがない経営層にとって、Webサイトは「あれば便利なもの」であって「なくてはならないもの」ではないという認識があります。特に創業が古く、アナログな手法で成功してきた企業では、この傾向が顕著です。
しかし、顧客や取引先、求職者の世代が変わりつつある今、この認識は危険です。BtoCだけでなくBtoBの領域でも、情報収集の第一歩はインターネット検索になっているからです。
ホームページがなくても成果を出している企業の戦略
では、ホームページがなくてもビジネスを成功させている企業は、どのような戦略をとっているのでしょうか。単に「運が良い」だけではありません。明確な代替戦略が存在します。
戦略1:徹底的な紹介営業の仕組み化
ある建設会社は、ホームページを持たずに年商3億円を維持しています。その秘訣は顧客満足度を極限まで高め、紹介を生み出す仕組みを作っていることです。
具体的には、工事完了後の定期的なアフターフォロー、顧客の記念日にメッセージを送る、地域イベントへの積極的な参加など、オフラインでの関係構築に徹底的に投資しています。結果として、新規顧客の約80%が既存顧客からの紹介という驚異的な数字を実現しています。
戦略2:業界特化型ポータルサイトへの掲載
自社でWebサイトを持たなくても、業界のポータルサイトやマッチングプラットフォームを活用する方法があります。
例えば、建築業なら「ホームプロ」や「ハウスメーカー比較サイト」、士業なら「弁護士ドットコム」や「税理士紹介サイト」などです。月額数万円のコストで、自社でSEO対策を行うより効率的に見込み客にリーチできるケースも少なくありません。
ただし、これらのプラットフォームは手数料が高い、顧客データが蓄積されない、ブランディングが難しいといったデメリットもあります。長期的には自社サイトとの併用が理想的でしょう。
戦略3:SNSの戦略的活用
若い世代の経営者の中には、あえてホームページを作らずSNSに特化する選択をする人もいます。
Instagram、Facebook、X(旧Twitter)、YouTubeなど、媒体特性を理解して使い分ければ、ホームページ以上のエンゲージメントを得られる可能性があります。特にBtoC商材やビジュアルで訴求できる商品・サービスでは、SNSの方が相性が良いケースもあります。
ただし、SNSにも弱点があります。プラットフォームの仕様変更リスク、アカウント停止のリスク、過去の投稿が埋もれてしまう問題などです。SNSは集客の入口として活用し、最終的には自社が管理できる場所(ホームページ)に誘導するのがベストプラクティスとされています。
戦略4:既存顧客のLTV最大化
新規顧客獲得にコストをかけるのではなく、既存顧客からの売上を最大化する戦略です。
定期的な訪問、ニーズの先読み、アップセル・クロスセル、長期契約など、既存顧客との関係を深めることで、Webマーケティングに頼らずとも安定した収益を確保できます。
特にサブスクリプションモデルやストック型ビジネスでは、この戦略が有効です。ただし、市場が成熟している場合や新規顧客流入が減少している環境では、いずれ限界が来ることも認識しておく必要があります。
ホームページがない会社をどう見るべきか:求職者・取引先の視点
ここまで企業側の視点で見てきましたが、外部から見たときに「ホームページがない会社」はどう映るのでしょうか。
求職者の本音
就職活動中の大学生や転職希望者にとって、ホームページがない会社は「情報不足による不安」を感じさせます。
しかし、ここで重要なのは「ホームページがない=ブラック企業」という単純な図式は成り立たないということです。実際には、優良な中小企業でもWebサイトを持っていないケースは珍しくありません。
むしろ判断すべきは、なぜホームページがないのか、代わりにどんな情報発信をしているかです。面接時に企業理念や事業内容について質問し、経営者がしっかり答えられるか、会社見学で職場の雰囲気を確認できるか、といった点の方が重要です。
取引先の視点
BtoBの取引において、初回の与信審査や信用調査でホームページの有無は確認項目の一つになっています。
ただし、これもWebサイトがなければ取引不可という話ではありません。登記情報、財務諸表、取引実績、業界での評判など、総合的に判断されます。
逆に言えば、ホームページがあっても内容が薄い、更新が止まっている、連絡先が不明確といった状態では、むしろマイナス評価になることもあります。「ない」よりも「中途半端にある」方が問題という視点も忘れてはいけません。
これからホームページを作る企業が押さえるべきポイント
最後に、「やはりホームページは必要だ」と判断した企業が、制作にあたって押さえるべき実践的なポイントを整理します。
ステップ1:目的を明確にする
ホームページ制作の目的は企業によって異なります。
新規顧客の獲得(BtoC、BtoB)
採用活動の強化
既存顧客への情報提供
ブランディング・認知度向上
問い合わせ対応の効率化
複数の目的があっても構いませんが、優先順位をつけることが重要です。すべてを同時に達成しようとすると、焦点がぼやけて中途半端なサイトになってしまいます。
ステップ2:予算とスケジュールを現実的に設定する
ホームページ制作の費用相場は、求める機能や規模によって大きく変動します。
シンプルなコーポレートサイトであれば30〜80万円程度、本格的なCMS導入やカスタマイズを含めると100〜300万円、ECサイトなら200万円以上が一般的です。
また、初期費用だけでなく、年間の運用費(ドメイン・サーバー代、保守費用、更新作業費など)も年間10〜50万円程度見込んでおく必要があります。
「まずは小さく始めて、効果を見ながら拡張する」というアプローチが現実的です。いきなり完璧なサイトを目指すのではなく、最小限の機能で早期に公開し、改善を重ねる方が成功確率は高くなります。
ステップ3:制作方法を選ぶ
主な選択肢は以下の3つです。
制作会社に依頼:プロのデザインと機能、SEO対策も含めた総合的な提案が受けられる。コストは高めだが、品質は担保される。
フリーランスに依頼:制作会社より安価で、柔軟な対応が期待できる。ただし、品質や納期は個人のスキルに依存する。
自社制作(WordPress、Wix、Jimdoなど):低コストで始められ、自由に更新できる。ただし、デザインや機能に限界があり、セキュリティ管理も自己責任。
どの方法が最適かは、予算、スピード、求めるクオリティ、社内のリソースによって変わります。自社の状況を正直に評価して選択することが成功の鍵です。
ステップ4:最低限必要なコンテンツを洗い出す
どんな業種でも、以下のコンテンツは必須です。
会社概要(社名、所在地、代表者名、事業内容、設立年など)
事業内容・サービス紹介
問い合わせ方法(フォーム、電話、メール)
プライバシーポリシー
これに加えて、業種や目的に応じて以下を検討します。
実績・事例紹介
代表メッセージ
採用情報
よくある質問(FAQ)
ブログ・お知らせ
アクセスマップ
コンテンツは多ければ良いわけではありません。訪問者が求める情報に素早くアクセスできる構造が理想です。
ステップ5:公開後の運用体制を整える
ホームページは「作って終わり」ではありません。むしろ公開後の運用が成否を分けます。
最低限、以下の体制は整えておきましょう。
問い合わせへの対応ルール(誰が、いつまでに返信するか)
情報更新の責任者(定期的にチェックし、古い情報を修正)
セキュリティ対策(ソフトウェアの更新、バックアップ)
アクセス解析の確認(月1回程度、どのページが見られているか把握)
特に中小企業では、担当者が一人で抱え込まないようにすることが重要です。複数人が基本的な更新作業を行えるよう、マニュアルを整備しておくと安心です。
まとめ:ホームページがない会社の選択
ホームページがない会社をどう評価すべきか――この問いに対する答えは、一概には言えません。
確かに、現代のビジネス環境においてホームページは重要な経営インフラであり、持たないことによるデメリットは無視できません。新規顧客の獲得、人材採用、企業ブランディング、業務効率化など、多くの側面で不利になる可能性があります。
一方で、すべての企業が今すぐホームページを持つべきというわけでもありません。既存の営業手法で十分な成果が出ている、代替手段で情報発信ができている、限られたリソースを別の投資に回す方が合理的――そうした判断があっても良いのです。
重要なのは、「なんとなく作っていない」のではなく、明確な理由と戦略を持って判断することです。そして、外部環境の変化や自社の成長段階に応じて、柔軟に方針を見直していくことです。
求職者や取引先の立場から見れば、ホームページの有無だけで企業を判断するのではなく、その企業がどのように情報を公開し、どのような価値を提供しているかを多角的に評価する姿勢が求められます。
デジタル化が進む社会において、「ホームページがない」という選択は確かに少数派になりつつあります。しかし、形式的にWebサイトを持つことよりも、自社の強みを最大化し、顧客に価値を届けることの方が本質的に重要であることを忘れてはいけません。
この記事が、ホームページの必要性を見極め、適切な判断をする一助となれば幸いです。