飲食店の事業計画書の書き方を徹底解説|融資審査を通過する作成のコツ

飲食店の開業を目指すとき、多くの方が直面するのが資金調達の課題です。日本政策金融公庫のデータによると、飲食店の開業には平均で約1,000万円が必要とされており、この資金を確保するために欠かせないのが「事業計画書」です。

しかし、初めて事業計画書を作成する方にとって、何をどう書けばよいのか分からないという悩みは少なくありません。実際、融資審査において事業計画書の出来栄えが合否を大きく左右します。金融機関の担当者が最も重視するのは、あなたのビジネスが本当に成功する可能性があるのかという点です。

この記事では、飲食店開業を目指す方に向けて、融資審査を通過するための事業計画書の書き方を詳しく解説していきます。各項目の具体的な記入方法から、審査担当者の視点を踏まえた作成のポイントまで、実践的な内容をお伝えします。

飲食店における事業計画書とは

事業計画書とは、これから始める事業の内容や収支計画を具体的に記した書類のことです。飲食店開業においては、金融機関から融資を受ける際に必ず必要となる重要な書類となります。

日本政策金融公庫が提供する創業計画書のフォーマットでは、創業の動機、経営者の経歴、取扱商品・サービス、取引先、従業員、必要な資金と調達方法、事業の見通しといった項目で構成されています。

これらの項目を通じて、金融機関は「この事業が成功する見込みがあるか」「融資した資金が確実に返済されるか」を判断するのです。

事業計画書が必要となる場面

事業計画書は主に以下の2つの場面で必要になります。

金融機関からの融資を受けるときが最も一般的なケースです。2024年の調査によると、飲食店開業資金の約55%が金融機関からの融資で賄われており、多くの開業者が事業計画書を作成しています。特に日本政策金融公庫や信用保証協会の制度融資では、事業計画書の提出が必須条件となっています。

また、投資家や協力者から出資を受けるときにも事業計画書は重要な役割を果たします。出資者はあなたのビジネスプランを理解し、投資判断を行うために詳細な事業計画を求めます。

事業計画書を作成するメリット

融資申請のためだけに事業計画書を作成していると考えるのは、もったいない話です。事業計画書の作成プロセスそのものが、開業準備において非常に価値のある作業となります。

まず、自分のビジネスプランを客観的に見直せる点が大きなメリットです。頭の中にある漠然としたアイデアを文字と数字に落とし込むことで、事業の強みや弱み、不足している要素が明確になります。特に収支計画を立てる過程で、「この価格設定で本当に利益が出るのか」「初期投資は適正なのか」といった現実的な検討ができるようになります。

次に、必要な資金と資金繰りが明確になるという点も見逃せません。開業にかかる設備資金だけでなく、運転資金としていくら必要なのか、どのタイミングで資金が不足しそうかを事前に把握できます。飲食店の場合、開業から数ヶ月は売上が安定しないことが多いため、この資金繰りの見通しが生命線となります。

さらに、事業計画書は従業員や協力者との情報共有ツールとしても機能します。スタッフに対して店舗のビジョンや目標を明確に伝えられますし、仕入れ先や物件オーナーとの交渉においても、具体的な計画を示すことで信頼を得やすくなります。

融資を受ける前に知っておくべき現実

事業計画書の書き方に入る前に、飲食店開業における資金調達の実態を理解しておくことが重要です。

飲食店開業に必要な資金の目安

日本政策金融公庫の2020年度新規開業実態調査によると、飲食店の開業費用の平均額は約989万円でした。これは不動産を購入した企業を除いた数字であり、賃貸物件での開業を想定した金額です。

ただし、この金額はあくまで平均値であり、実際には業態や立地、規模によって大きく変動します。小規模なカフェやバーであれば500万円程度で開業できるケースもありますし、本格的なレストランでは1,500万円以上かかることも珍しくありません。

資金の内訳としては、厨房機器や内装工事などの設備資金が大部分を占め、開業後の家賃や仕入れ、人件費に充てる運転資金も3〜6ヶ月分は確保しておくべきとされています。

自己資金の重要性

融資を受ける上で最も重要な要素の一つが自己資金の額です。日本政策金融公庫のデータによると、飲食店向け融資における自己資金の平均額は約309万円で、開業資金の約30%を自己資金で賄っているケースが多いことが分かります。

では、なぜ自己資金がこれほど重視されるのでしょうか。金融機関の視点で考えると、自己資金の多寡は「開業者がどれだけ本気で準備してきたか」を示す客観的な指標になります。コツコツと資金を貯めてきた人は、計画性があり、事業に対する覚悟も固いと判断されるのです。

一般的に、融資額の3分の1から2分の1程度の自己資金を用意できていることが望ましいとされています。1,000万円の開業資金が必要な場合、300万円以上の自己資金があると融資審査において有利になります。

融資を受けられる金額の現実

日本政策金融公庫の調査では、開業資金として事業主が受けた融資額の平均値は約800万円となっています。新創業融資制度では融資限度額が3,000万円とされていますが、実質的には1,000万円程度が上限と考えておくのが現実的です。

なぜなら、限度額3,000万円というのは本店決裁が必要な金額であり、支店レベルで決裁できる範囲は通常それよりも低く設定されているためです。特に初めて開業する方の場合、実績がない分、融資額も控えめになる傾向があります。

飲食店の事業計画書の書き方

ここからは、事業計画書の各項目について、具体的な書き方を解説していきます。日本政策金融公庫の創業計画書フォーマットに沿って説明しますが、基本的な考え方はどの金融機関でも共通しています。

①創業の動機

創業の動機は、事業計画書の中で最も重要な項目の一つです。金融機関の審査担当者が真っ先に注目するのがこの部分だからです。

ここで避けたいのは、「料理が好きだから」「自分の店を持つのが夢だったから」といった感情だけに頼った動機です。もちろん、情熱は大切ですが、それだけでは融資判断の材料にはなりません。

審査担当者が知りたいのは、なぜ今、この事業を始める必要があるのかという点です。市場調査の結果、どのようなニーズや機会を発見したのか。自分の経験やスキルが、なぜこの事業で活かせるのか。競合と比較して、どのような優位性があるのか。こうした要素を論理的に説明できることが求められます。

たとえば、「10年間イタリアンレストランで修行し、本場のパスタ製法を習得しました。一方、地元にはファミリー向けの本格的なイタリアンが不足しており、SNSでの情報発信を見ても需要があると判断しました」といった具合に、経験×市場ニーズ×具体的な根拠を組み合わせて記述します。

また、創業の動機は、次の項目である「経営者の経歴」とのつながりが重要です。動機と経歴が矛盾していると、計画全体の信憑性が疑われます。ストーリーに一貫性を持たせることを意識しましょう。

②経営者の略歴等

経営者の略歴では、あなたがこの事業を成功させられる人物であることを証明する必要があります。

単に職歴を羅列するのではなく、今回の開業にどう関連するかを意識して書くことが大切です。飲食店であれば、調理経験、接客経験、店舗管理経験などが評価されます。仮に飲食業界での経験がない場合でも、営業職での顧客折衝経験や、小売業での店舗運営経験など、事業運営に活かせるスキルを強調しましょう。

特に重視されるのが同業種での勤務経験です。日本政策金融公庫の調査では、創業した業種と同じ業種での勤務経験がある方のほうが、事業の継続率が高いというデータがあります。できれば5年以上の実務経験があることが望ましいとされています。

また、取得資格も忘れずに記載します。食品衛生責任者は必須ですし、調理師免許や栄養士資格、防火管理者などの資格は専門性の証明になります。

記入例としては、「2015年4月〜2020年3月:株式会社○○(イタリアンレストラン)にて調理担当。パスタ部門のチーフとして、メニュー開発や原価管理も担当」といった形で、期間、勤務先、担当業務を明確に記載します。

③取扱商品・サービス

この項目では、具体的に何を提供するのかを明確にします。飲食店の場合、提供するメニュー、価格帯、ターゲット顧客層、営業時間などを記載します。

取扱商品・サービスの内容

メニュー構成と価格設定を具体的に示します。全メニューを列挙する必要はありませんが、主力商品を3〜5品目挙げ、それぞれの価格を記載しましょう。

たとえば、「生パスタランチセット1,200円、窯焼きピザ1,500円〜、自家製ティラミス500円」といった具合です。価格設定の根拠も簡潔に添えると説得力が増します。「近隣競合店の調査から、この価格帯であれば十分な集客が見込める」などです。

また、平均客単価も記載します。ランチタイムとディナータイムで客単価が異なる場合は、それぞれ分けて記述すると丁寧です。「ランチ平均客単価1,500円、ディナー平均客単価3,500円」というように。

セールスポイント

ここが事業計画書の最重要部分と言っても過言ではありません。あなたの店が競合と比較してどう優れているのか、なぜ顧客があなたの店を選ぶのかを明確に示す必要があります。

セールスポイントを考える際、「美味しい料理を提供します」「丁寧な接客を心がけます」といった抽象的な表現は避けるべきです。どの店も同じようなことを言っているからです。

具体性と差別化がカギになります。たとえば、「地元農家と直接契約し、朝採れ野菜を使用」「イタリアで5年間修行した本場の技術」「完全個室で子連れでも安心の空間設計」など、他店にはない明確な強みを打ち出します。

また、創業の動機や経営者の経歴と矛盾しないことが重要です。一貫したストーリーが、計画全体の信頼性を高めます。

販売ターゲットと販売戦略

誰に、どうやって売るのかを明確にします。

ターゲット顧客は、できるだけ具体的にイメージします。「30代の働く女性、健康志向で本物志向」「ファミリー層、週末のちょっと贅沢なランチ需要」といった形です。

販売戦略では、どのように顧客を獲得するかを記載します。SNS活用、グルメサイトへの登録、地域のフリーペーパーへの広告掲載、近隣へのポスティングなど、具体的な施策を挙げましょう。特に開業直後の集客戦略は重要で、オープン告知をどう行うか、オープン記念のキャンペーンは実施するかなども記載できます。

④取引先・取引関係等

仕入れ先と販売先(顧客)について記載します。

飲食店の場合、仕入れ先の確保は事業の成否に直結します。主要な食材の仕入れ先候補を挙げ、可能であれば既に商談を進めている旨を記載すると好印象です。「地元の○○商店と仕入れ条件について協議中」など。

支払い条件も重要です。現金払いなのか、月末締め翌月払いなのか。開業直後は信用がないため、現金払いを求められることも多く、それを見越した資金繰り計画が必要になります。

販売先については、一般顧客が中心となる飲食店の場合、「一般個人客」と記載することになります。ケータリングやデリバリーなども行う場合は、その旨も記載しましょう。

⑤従業員

従業員を雇用する予定があれば、その人数と役割を記載します。

開業時から従業員を雇う場合は、「常勤○名、パート・アルバイト○名」と明記します。家族従業員がいる場合も別途記載します。

人件費は飲食店の経費の中でも大きな割合を占めるため、人員計画の妥当性が審査されます。売上規模に対して過剰な人員を計画していないか、逆に人手不足で回らないような計画になっていないか、バランスを考慮しましょう。

飲食店の場合、FL比率(Food cost+Labor cost、つまり食材費と人件費の合計)が売上の60%以内に収まることが理想とされています。人件費率は売上の30%前後を目安に計画を立てることが多いです。

⑥借入の状況

既存の借入について正直に記載します。これは経営者個人の借入状況を指し、事業用だけでなく住宅ローンや自動車ローンなども含みます。

虚偽の申告は絶対に避けましょう。金融機関は信用情報機関に照会をかけるため、隠し通すことはできません。むしろ正直に申告し、返済状況が良好であれば、それは信用力の証明になります。

逆に、延滞履歴や債務整理の記録がある場合、融資審査に大きく影響します。信用情報に問題がある方は、まずその解消に努めることが先決です。

⑦必要な資金と調達方法

開業に必要な資金の総額と、それをどう調達するかを記載します。

必要な資金は、設備資金と運転資金に分けて記載します。

設備資金には、店舗取得費(敷金・礼金・保証金)、内装工事費、厨房機器購入費、什器・備品費などが含まれます。それぞれの項目について、可能な限り見積もりを取得し、根拠のある数字を記載することが重要です。「内装工事費350万円(○○工務店見積もりに基づく)」といった形です。

運転資金は、開業後の軌道に乗るまでの期間(通常3〜6ヶ月分)の運転資金を計上します。家賃、人件費、仕入れ費用、光熱費などの合計を月額で算出し、それに必要月数を掛けて算出します。

調達方法では、自己資金、融資希望額、その他の資金源(親族からの借入など)を明記します。自己資金と融資のバランスが重要で、前述のとおり自己資金が総額の3分の1程度あることが望ましいとされています。

⑧事業の見通し(月平均)

創業当初と軌道に乗った後の収支予測を記載します。この項目は審査担当者が最も注目する部分の一つです。

売上予測の立て方

飲食店の売上予測は、次の計算式で算出します。

月間売上=客単価×客席数×回転数×稼働率×営業日数

たとえば、客単価1,500円、客席数20席、1日の回転数2回、稼働率70%、月間営業日数26日の場合、

1,500円×20席×2回×0.7×26日=1,092,000円

といった計算になります。

この予測を立てる際、根拠を明確にすることが重要です。客単価は提供メニューの価格帯から算出し、回転数は近隣の同業態店舗の状況や立地条件を考慮して設定します。稼働率は、開業直後は低めに、軌道に乗った後は高めに設定するのが現実的です。

創業当初は集客が安定しないため、保守的な数字で見積もることが賢明です。審査担当者は、楽観的すぎる予測を警戒します。

経費の見積もり

主な経費項目を漏れなく計上します。


  • 仕入れ(原価):売上の30〜35%が目安



  • 人件費:売上の25〜30%が目安



  • 家賃:売上の10%以内が理想



  • 光熱費:売上の5〜7%程度



  • その他経費:消耗品、広告宣伝費、保険料、リース料など


FL比率(原価+人件費)が売上の60%を超えると利益確保が難しくなるため、このバランスを意識した計画を立てます。

利益の見通し

売上から経費を差し引いた営業利益を算出します。さらに、融資を受ける場合は返済額も考慮に入れる必要があります。

営業利益−借入返済額=実質的な手取り

この金額が、経営者の生活費や将来の投資に回せる資金となります。特に創業当初は、この実質手取りがマイナスになることも想定されますが、いつまでにプラスに転じる見込みかを示すことが重要です。

融資審査を通過するための作成ポイント

事業計画書の各項目について理解したところで、次は審査を通過するために押さえるべきポイントを解説します。

数字には必ず根拠を持たせる

事業計画書で最も重要なのは、すべての数字に客観的な根拠があることです。

「なんとなく月商100万円くらいいけそう」といった感覚的な予測は、審査担当者には通用しません。なぜその売上が達成できると考えるのか、客単価、客数、回転率などの要素を分解し、それぞれに根拠を示す必要があります。

根拠として有効なのは、市場調査のデータ競合店の状況立地の特性自身の経験などです。たとえば、「駅から徒歩3分の立地で、平日昼間の通行量は1時間あたり約500人(現地調査による)。近隣の類似業態店は満席状態が続いており、需要の取りこぼしが発生していると推測される」といった具合です。

特に重要なのが、楽観シナリオと保守シナリオを用意することです。「順調にいけばこれくらい、最低でもこれくらい」という幅を示すことで、リスク認識ができている印象を与えられます。

わかりやすさを最優先する

事業計画書は、専門家でない審査担当者が読んでも理解できる内容でなければなりません。

業界用語や専門用語を多用せず、平易な言葉で説明します。ただし、専門性をアピールする場面では適切な用語を使うバランス感覚も必要です。

文章は簡潔に、要点を押さえて記述します。長々とした説明は逆効果で、読み手の集中力を奪います。A4用紙1〜2枚程度にまとめるのが理想的です。

箇条書きや表を活用することで、情報を整理して伝えることができます。特に数字の比較や、複数の項目を並べる際には、表形式のほうが分かりやすくなります。

店舗の強みとコンセプトを明確に

「なぜあなたの店が成功するのか」を説得力を持って説明できなければ、融資を引き出すことは難しいでしょう。

強みを考える際、3C分析のフレームワークが役立ちます。


  • Customer(顧客):どんな人が、どんなニーズを持っているか



  • Competitor(競合):競合はそのニーズにどう応えているか、不足は何か



  • Company(自社):自分の強みや独自性は何か


この3つの視点から分析することで、「この立地の、このターゲット層の、このニーズに対して、自分がこういう価値を提供できる」というストーリーが見えてきます。

また、単なる思いつきではなく、市場調査に基づいた戦略であることを示しましょう。実際に現地に足を運び、通行量を調査した、競合店で食事をして味や価格をリサーチした、といった行動の痕跡が、計画の信憑性を高めます。

一貫性のあるストーリーを作る

事業計画書全体を通じて、矛盾のない一つのストーリーが流れていることが重要です。

創業の動機、経営者の経歴、提供する商品・サービス、ターゲット顧客、販売戦略、これらすべてが互いに関連し合い、理にかなった流れになっているかを確認しましょう。

たとえば、「高級食材を使った本格フレンチ」を謳いながら、「学生やファミリー層がターゲット」「客単価1,000円」という計画では、明らかに矛盾があります。

審査担当者は、こうした矛盾に敏感です。計画全体の整合性を保つことで、「この人は事業をよく考えている」という印象を与えられます。

融資を受けるまでの計画も示す

事業計画書には、開業までのスケジュールも記載できると理想的です。

物件取得、内装工事、設備導入、従業員採用、許認可取得、宣伝活動など、開業までに何をいつまでに行うかを時系列で示します。これにより、計画的に準備を進めていることをアピールできます。

また、融資が実行されるまでの間にも、できることはたくさんあります。SNSアカウントの開設と情報発信、メニュー開発、仕入れ先の開拓、スタッフ募集など、融資待ちで手をこまねいているのではなく、積極的に動いている姿勢を見せることが大切です。

事業計画書作成時の注意点

ここまで事業計画書の書き方を解説してきましたが、作成時に陥りがちな失敗についても触れておきます。

他人任せにしない

事業計画書の作成を、税理士やコンサルタントに丸投げしてしまう方がいます。確かに専門家のアドバイスは有益ですが、自分の言葉で事業を語れなければ意味がありません

融資の面談では、事業計画書の内容について質問されます。その際、書類の内容を自分で説明できなければ、「他人に作ってもらった計画書」だとすぐにバレてしまいます。審査担当者が見たいのは、書類の完成度だけでなく、経営者本人の理解度と熱意なのです。

専門家には相談しつつも、最終的には自分自身で考え、自分の言葉で書くことが重要です。

虚偽の情報を書かない

当然のことですが、嘘や誇張は絶対に避けましょう

経歴を盛る、自己資金額を水増しする、売上予測を非現実的に高く設定するなど、少しでも審査に有利にしようと虚偽の申告をする方がいますが、これは最悪の選択です。

金融機関は信用情報を照会しますし、経歴についても確認されることがあります。嘘が発覚すれば、融資は確実に受けられませんし、今後の取引にも悪影響を及ぼします。

正直に、現実的な計画を示すことが、結果的に信頼を得る近道です。

楽観的すぎる計画は逆効果

「開業1年目から月商300万円達成」「初月から黒字化」といった楽観的すぎる計画は、審査担当者の信頼を損ないます。

飲食店の場合、開業直後は認知度が低く、リピーターもいないため、売上が安定するまでに数ヶ月かかるのが普通です。この現実を無視した計画は、事業に対する理解が浅いと判断されます。

むしろ、開業当初は保守的な数字で見積もり、「初月は厳しいが、3ヶ月目から徐々に売上が伸び、6ヶ月目で損益分岐点を超える見込み」といった現実的なシナリオのほうが説得力があります。

完璧を求めすぎない

事業計画書の作成に時間をかけすぎて、開業のタイミングを逃してしまっては本末転倒です。

もちろん丁寧に作成することは大切ですが、100点を目指す必要はありません。まずは80点レベルの計画書を作成し、専門家や金融機関の担当者からフィードバックをもらいながら改善していくアプローチが効率的です。

また、事業計画書は開業前に作成して終わりではなく、開業後も定期的に見直し、実績と比較しながら修正していくものです。最初から完璧な計画を立てることよりも、PDCAを回す習慣を身につけることのほうが重要です。

飲食店向け事業計画書のテンプレート入手先

事業計画書を一から作成するのは大変です。まずはテンプレートを活用して、効率的に進めましょう。

日本政策金融公庫

最もよく利用されているのが、日本政策金融公庫が提供する創業計画書のフォーマットです。公式Webサイトから無料でダウンロードでき、記入例も豊富に用意されています。

特に飲食店向けには、業種別の記入例が用意されており、「喫茶店」「レストラン」「居酒屋」など、業態に応じた具体的な記入方法を参照できます。

J-Net21(中小機構)

中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21でも、事業計画書のテンプレートが提供されています。業種別のサンプルが充実しており、飲食業に特化した内容も見つけられます。

各自治体の創業支援窓口

都道府県や市区町村の創業支援窓口でも、事業計画書のフォーマットや記入例を配布しています。地域によっては、無料の相談窓口や作成サポートサービスも提供されているため、積極的に活用しましょう。

東京都の「女性・若者・シニア創業サポート事業」など、自治体独自の融資制度を利用する場合は、その制度専用のフォーマットが用意されていることもあります。

融資申請から融資実行までの流れ

事業計画書が完成したら、次は融資申請のプロセスです。ここでは日本政策金融公庫を例に、一般的な流れを説明します。

1. 事前相談(任意)

融資申請の前に、窓口や電話で事前相談をすることができます。この段階で、自分の計画がそもそも融資の対象になるか、必要書類は何かを確認できます。

事前相談は義務ではありませんが、初めて融資を受ける方には強くおすすめします。担当者から具体的なアドバイスがもらえることも多く、計画のブラッシュアップに役立ちます。

2. 申込み

必要書類を揃えて、正式に融資を申し込みます。日本政策金融公庫の場合、Webサイトからオンラインで申し込むことも可能です。

必要書類には、創業計画書、借入申込書、見積書、本人確認書類、通帳のコピーなどが含まれます。法人の場合は登記簿謄本も必要です。

飲食店で500万円以上の融資を希望する場合、都道府県知事の推薦書が必要になることがあります。これは各地域の生活衛生営業指導センターで発行してもらえます。

3. 面談

書類審査を通過すると、金融機関の担当者との面談が設定されます。この面談が融資審査の最大の山場です。

面談では、事業計画書の内容について詳しく質問されます。なぜこの事業を始めるのか、競合との違いは何か、売上予測の根拠は何か、万が一うまくいかなかった場合の対策は考えているかなど、様々な角度から質問が飛んできます。

ここで重要なのは、自分の言葉で、熱意を持って、論理的に説明できることです。暗記した答えを棒読みするのではなく、自分の経験や考えに基づいて語れることが求められます。

服装はビジネスカジュアル程度で構いませんが、清潔感のある身だしなみを心がけましょう。時間厳守は当然のマナーです。

4. 審査・融資決定

面談後、総合的な審査が行われ、融資の可否と融資額が決定されます。日本政策金融公庫の場合、申し込みから融資実行まで約2週間から1ヶ月程度かかるのが一般的です。

希望額の満額が認められることもあれば、減額されることもあります。減額された場合でも、その理由を聞き、次回以降の参考にしましょう。

5. 契約・融資実行

融資が決定したら、契約手続きを行い、指定口座に融資金が振り込まれます。

融資実行後は、定期的に返済が始まります。返済実績を積むことで、将来的に追加融資を受けやすくなるため、返済は確実に行いましょう。

まとめ

飲食店の事業計画書は、単なる融資申請のための書類ではありません。自分のビジネスを客観的に見つめ直し、成功への道筋を明確にするためのツールです。

2024年の統計によると、飲食店の開業数は年間約58,000件にのぼります。しかし同時に、飲食店・宿泊業の廃業率は全業種平均の8.9%に対して14.7%と高い数字を示しており、厳しい業界であることも事実です。

この競争の激しい業界で生き残るためには、開業前の綿密な計画が不可欠です。事業計画書の作成を通じて、売上予測、原価管理、資金繰り、競合分析などを徹底的に検討することで、開業後の成功確率を高めることができます。

融資審査を通過するためのポイントをもう一度おさらいすると、数字に根拠を持たせるわかりやすく簡潔に書く店舗の強みを明確にする一貫性のあるストーリーを作る、この4点が特に重要です。

また、自己資金の準備、業界経験の積み重ね、市場調査の実施など、事業計画書に書く内容の質を高めるための事前準備も忘れてはいけません。

事業計画書の作成は確かに大変な作業です。しかし、この過程を丁寧に進めることが、あなたの飲食店を成功に導く第一歩となります。必要に応じて専門家のサポートも受けながら、納得のいく事業計画書を完成させ、夢の実現に向けて着実に歩みを進めていってください。

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