業務委託と業務請負の違いを徹底解説|契約の選び方から偽装請負のリスクまで

ビジネスの現場で「業務を外部に委託したい」と考えたとき、多くの企業が直面するのが契約形態の選択です。

業務委託、業務請負、請負契約、委任契約……似たような言葉が飛び交う中で、どの契約を選べばよいのか迷っている方も多いのではないでしょうか。

実は、これらの契約形態を正しく理解していないと、知らないうちに違法な「偽装請負」の状態に陥ってしまうリスクがあります。

本記事では、業務委託と業務請負の本質的な違いから、それぞれのメリット・デメリット、そして契約を結ぶ際の注意点まで、実務で本当に役立つ知識を詳しく解説していきます。

業務委託と業務請負の関係性を正しく理解する

まず押さえておきたいのは、「業務委託」と「業務請負」は対立する概念ではなく、包含関係にあるという点です。つまり、業務請負は業務委託の一部であり、業務委託という大きな傘の中に業務請負が含まれています。

業務委託とは何か

業務委託とは、自社の業務を外部の企業や個人に依頼する契約形態の総称を指します。ただし、法律用語として「業務委託契約」という名称は民法には存在しません。業務委託は実務で用いられる一般的な用語であり、民法上では「請負契約」と「委任契約」「準委任契約」の総称として理解されています。

契約書に「業務委託契約書」と記載することは問題ありませんが、実際の法的効力は、その中身が請負契約なのか、委任契約なのか、準委任契約なのかによって大きく変わってきます。この点を曖昧にしたまま契約を進めると、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。

業務請負(請負契約)とは何か

業務請負とは、請負人がある仕事を完成させることを注文者と約束し、注文者がその成果物に対して報酬を支払うことを約束することで成立する契約です。民法第632条に明確に規定されています。

業務請負の本質は「仕事の完成」にあります。建設工事なら建物の完成、Webサイト制作ならサイトの納品、システム開発ならシステムの完成といった、明確な成果物が存在することが前提となります。成果物が完成しなければ、原則として報酬を請求することはできません。

請負契約では、受託者(請負人)は仕事を完成させる義務を負い、もし完成した成果物に契約内容と異なる点があった場合、契約不適合責任を負います。具体的には、成果物の修補や代替物の引渡し、損害賠償、契約解除などの責任が請負人に生じます。

業務委託に含まれる3つの契約類型

業務委託契約は、大きく分けて3つの契約類型に分類されます。それぞれの特徴を理解することが、適切な契約選択の第一歩です。

請負契約|成果物の完成を約束する

請負契約は、前述のとおり成果物の完成を目的とした契約形態です。報酬は「成果物の完成」に対して支払われるため、どれだけ時間をかけても、成果物が完成しなければ報酬は発生しません。

典型的な例としては、建設工事、製造業務、Webサイト制作、システム開発、デザイン制作などが挙げられます。これらはすべて、明確な「完成物」が存在する業務です。

請負契約における重要なポイントは、指揮命令権が受託者側にあるという点です。注文者(発注者)は、受託者に対して業務の進め方や作業方法について、細かく指示を出すことはできません。あくまでも成果物の仕様を伝え、その完成を待つという関係性になります。

委任契約|法律行為の遂行を委託する

委任契約は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生ずる契約です(民法第643条)。

「法律行為」とは、契約当事者の意思によって法的な効果を生む行為のことを指します。具体的には、弁護士への訴訟行為の依頼、司法書士への登記手続きの依頼、税理士への税務申告の依頼などが典型例です。

委任契約の特徴は、仕事の完成が必須ではなく、業務の遂行そのものに対して報酬が支払われる点にあります。つまり、成果が出たかどうかに関わらず、適切に業務を遂行していれば報酬を請求できます。

ただし、受任者は善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務(善管注意義務)を負います。これは、その道のプロフェッショナルとして期待される水準の注意を払って業務を行う必要があるということです。

準委任契約|法律行為以外の業務遂行を委託する

準委任契約は「法律行為以外の業務」を委託する契約であり、役務の提供に対して報酬を支払います(民法第656条)。委任契約の規定が準用されるため、基本的な考え方は委任契約と同じです。

準委任契約が適用される業務の例としては、システムの保守運用、コンサルティングサービス、経理業務の代行、マーケティング支援、医師による診察などが挙げられます。これらは法律行為ではないものの、継続的な業務遂行や専門的なサービス提供が求められる業務です。

準委任契約でも、委任契約と同様に成果物の完成責任は問われず、業務の遂行自体に対して報酬が発生します。ただし、受任者は善管注意義務をもって適正に業務が遂行される必要があります。

業務請負と業務委託(委任・準委任)の決定的な違い

業務請負(請負契約)と、業務委託に含まれる委任契約・準委任契約では、実務上重要な違いがいくつかあります。

報酬の支払いタイミングと条件

請負契約では、成果物の完成と引き渡しが完了した時点で報酬請求権が発生します。途中でどれだけ作業を進めていても、完成しなければ原則として報酬は支払われません。これは「成果報酬型」と呼ばれる支払い形態です。

一方、委任契約・準委任契約では、業務の遂行に対して報酬が支払われます。たとえば、月額での顧問契約や、稼働時間に応じた報酬設定など、「稼働報酬型」の支払い形態が一般的です。成果物の有無に関わらず、契約期間中に適切に業務を遂行していれば報酬を請求できます。

完成責任の有無

請負契約では、請負人に「仕事を完成させる義務」があります。これは非常に重い責任で、もし完成しなければ報酬がもらえないだけでなく、注文者から契約解除や損害賠償を請求される可能性もあります。

また、完成した成果物に不具合や契約内容との相違(契約不適合)があった場合、請負人は修補や損害賠償の責任を負います。この責任は、成果物を引き渡してから一定期間(通常は1年程度、契約で定める)継続します。

委任契約・準委任契約では、このような「完成責任」は存在しません。受任者は善管注意義務を果たして業務を遂行すればよく、必ずしも目に見える成果を出す必要はありません。ただし、明らかに注意を怠った場合や、不適切な業務遂行があった場合は、善管注意義務違反として責任を問われる可能性があります。

契約解除のルール

委任契約では、委任者・受任者の当事者双方が、いつでも契約を解除することができます。ただし、相手方に不利な時期に解除した場合、損害賠償責任が生じることがあります。

請負契約では、注文者は仕事が完成する前であれば、損害を賠償することでいつでも契約を解除できます。一方、請負人からの解除は、債務不履行など特定の事由がなければ認められません。

契約期間の考え方

請負契約は、特定の「仕事の完成」を目的とするため、契約期間は基本的にその仕事が完了するまでと設定されます。成果物が完成し、委託元に引き渡された時点で契約は終了するのが原則です。単発のプロジェクトに適した契約形態といえます。

業務委託契約(委任・準委任)は、特定の業務を継続的に遂行することを目的とすることが多く、契約期間が明確に定められることが一般的です。たとえば、1年間や半年間といった期間を設定し、期間満了後は更新するかどうかを検討します。

業務請負と業務委託を人材派遣と区別する

業務を外部に依頼する方法として、業務委託・業務請負のほかに「人材派遣」があります。これらは混同されやすいのですが、法的には全く異なる契約形態であり、この違いを理解していないと「偽装請負」という違法状態を招いてしまいます。

指揮命令権の所在

最も重要な違いは「誰が労働者に業務指示を出すか」という点です。

業務委託・業務請負では、指揮命令権は受託会社(請負会社)にあります。発注者は受託会社に業務を依頼しますが、実際に作業する従業員に対して直接指示を出すことはできません。作業方法や進め方は、あくまでも受託会社の裁量に委ねられます。

業務委託では受託者が自己の裁量と責任において業務を遂行します。従事者に対する指揮命令は雇用契約を結んでいる受託者が担い、発注者が従事者に対して具体的な業務指示をおこなうことはできません。

人材派遣では、派遣先企業(発注者)が派遣労働者に対して直接業務指示を出すことができます。派遣労働者は派遣会社と雇用契約を結んでいますが、実際の業務指示は派遣先企業から受けるという、特殊な関係性になります。

契約の相手方と報酬の対象

業務委託・業務請負では、発注者と受託会社が契約を結び、報酬は「業務の遂行」や「成果物の完成」に対して支払われます。個々の労働者の労働時間は、基本的に発注者の関心事ではありません。

人材派遣では、派遣先企業と派遣会社が労働者派遣契約を結び、労働者が働いた時間にもとづいて報酬(賃金)が支払われます。派遣先企業は、派遣労働者の勤務時間を管理する必要があります。

労働法の適用

人材派遣では、派遣労働者に対して労働基準法や労働者派遣法が適用されます。派遣先企業には、派遣労働者の労働時間管理、安全衛生管理、福利厚生の情報提供など、さまざまな義務が課されます。

業務委託・業務請負では、発注者と受託会社の従業員の間に雇用関係はないため、発注者に労働法上の義務は生じません。ただし、これを悪用して本来人材派遣として扱うべき労働者を請負契約で働かせることは、「偽装請負」として違法となります。

企業が業務請負・業務委託を活用するメリット

外部への業務委託には、企業にとって多くのメリットがあります。

専門性の高い人材・ノウハウの活用

自社で採用・育成するには時間とコストがかかる専門人材を、必要なときに必要な期間だけ活用できます。たとえば、Webマーケティング、システム開発、デザイン、法務、税務など、高度な専門知識が求められる分野では、この メリットが特に大きくなります。

業務委託を通じて外部の専門家と協働することで、社内にはない新しい視点や最新の業界知識を取り入れることができ、自社の競争力向上につながります。

コア業務への集中

バックオフィス業務や定型的な作業を外部に委託することで、自社の従業員はより付加価値の高いコア業務に集中できます。限られた人的リソースを、本当に重要な業務に振り向けられるようになります。

たとえば、経理業務、給与計算、採用業務の一部、カスタマーサポートなどのノンコア業務をアウトソーシングすることで、社内の人材を事業開発や顧客対応など、直接的に売上につながる業務に専念させることができます。

人件費の最適化と柔軟性

正社員を雇用すると、給与のほかに社会保険料、福利厚生費、教育訓練費など、さまざまなコストが発生します。また、一度雇用すると簡単には解雇できないため、人件費の固定化というリスクも抱えることになります。

業務委託・業務請負であれば、必要なときに必要な分だけ業務を依頼できるため、人件費を変動費化できます。繁忙期には業務量を増やし、閑散期には減らすといった柔軟な対応が可能になります。

業務請負は、人材派遣のように契約期間に縛りがないため、長期間にわたって業務を一任できるのも大きなメリットです。派遣社員の契約期間は最長で3年という制限がありますが、業務委託にはこのような制限がありません。

労務管理の負担軽減

業務委託・業務請負では、実際に作業する人材の労務管理は受託会社が行います。発注者は、勤怠管理、給与計算、社会保険の手続き、健康診断の実施など、雇用に伴う煩雑な労務管理から解放されます。

これは特に中小企業にとって大きなメリットです。人事部門のリソースが限られている企業でも、外部人材を効果的に活用できるようになります。

業務請負・業務委託のデメリットとリスク

メリットが多い業務委託ですが、当然デメリットやリスクも存在します。これらを理解した上で活用することが重要です。

ノウハウの社内蓄積が進まない

業務を外部に委託すると、その業務に関する知識やノウハウが社内に蓄積されにくくなります。特に、長期間にわたって同じ業務を外部に依存し続けると、いざ内製化しようとしたときに誰もできる人がいない、というリスクが生じます。

この問題を軽減するには、委託する業務と内製する業務を戦略的に切り分け、コア業務については社内にノウハウを残すという判断が必要です。また、受託者との定期的なミーティングを通じて、業務のポイントを社内にも共有していく取り組みも有効です。

品質管理の難しさ

業務委託・業務請負では、発注者が受託者の作業過程に細かく関与できません。そのため、期待していた品質の成果物が得られないリスクがあります。

特に請負契約では、成果物が完成するまで中身を確認できないケースもあり、納品時になって初めて「思っていたのと違う」という事態が発覚することもあります。

このリスクを減らすには、契約時に成果物の仕様を可能な限り詳細に定義し、途中での確認ポイント(マイルストーン)を設定するなどの工夫が必要です。また、信頼できるパートナーを選定することが何より重要です。

情報漏洩のリスク

業務委託では、自社の機密情報や顧客情報を外部と共有することになります。適切な情報管理体制が構築されていない受託者に委託してしまうと、情報漏洩のリスクが高まります。

契約書に秘密保持条項を盛り込むことはもちろん、受託者のセキュリティ体制を事前に確認し、必要に応じてセキュリティチェックを実施することが求められます。また、委託する情報の範囲を必要最小限に絞ることも重要です。

コミュニケーションコストの発生

社内の従業員であれば、日常的なコミュニケーションの中で業務を進められますが、外部の受託者とは意識的にコミュニケーションの機会を設ける必要があります。

特に複雑なプロジェクトでは、要件の確認、進捗報告、課題の共有など、コミュニケーションに相当な時間を割く必要が出てきます。このコストを軽視すると、かえって効率が悪くなる場合もあります。

偽装請負に陥るリスク

最も注意すべきデメリットが、知らないうちに「偽装請負」の状態に陥ってしまうリスクです。これについては、次のセクションで詳しく解説します。

絶対に避けるべき「偽装請負」とは

偽装請負とは、業務委託で請負契約を結んでいるにもかかわらず、労務の実態が労働者派遣に該当することを指します。偽装請負は違法行為であり、各法律に基づいた罰則もあります。

偽装請負が違法とされる理由

なぜ偽装請負が問題なのでしょうか。それは、本来適用されるべき労働者保護の法律が適用されず、労働者が不利益を被る可能性があるためです。

労働に関する各種法令による規制があり、所定労働時間外において就労させた場合に使用者は残業代を支払わなければならない点が分かりやすい例です。本来、具体的な指揮命令を出しながら就労させるのであれば労働法令の規律を受けるべきですが、請負という形式をとることでこの規律を免れることは許されません。

また、労働者派遣事業を行おうとする者は、すべて許可を受けなければならないとされています。偽装請負は、この許可を得ずに実質的な労働者派遣を行っている状態であり、無許可営業として違法となります。

偽装請負の典型的なパターン

厚生労働省は、偽装請負の典型的なパターンとして以下の4つを挙げています。

代表型(最も一般的) 形式上は請負契約としながらも、発注者が受託会社の従業員に対して直接業務指示を出しているケースです。たとえば、「この作業を先にやってください」「やり直してください」など、具体的な作業指示を発注者側の担当者が行っている場合、偽装請負と判断される可能性が高くなります。

形式だけ責任者型 受託会社に責任者は配置されているものの、その責任者は発注者からの指示を単に伝達するだけの存在になっているケースです。実質的には発注者が直接指示しているのと変わらないため、偽装請負とみなされます。

使用者不明型 複数の会社が関与する多重請負構造の中で、誰が実際に指揮命令権を持っているのかが不明確になっているケースです。下請けや孫請けなど、関係先が多くなると発生しやすいパターンです。

一人請負型 受託会社が実質的に労働者のあっせんのみを行っており、個人事業主として形式だけ契約しているケースです。実態は労働者として働いているにもかかわらず、個人事業主扱いにすることで労働法の適用を逃れようとする、悪質なパターンです。

偽装請負と判断される具体的なケース

委託企業が直接、委託先労働者に作業工程の変更や欠陥商品の再製作を指示する行為は、直接の指揮命令に該当するため偽装請負となります。

また、委託企業から大量の注文があり請負労働者だけでは処理できず、委託企業側の労働者が委託先の作業場で作業応援を行う場合も、偽装請負とみなされる可能性があります。

日常業務の中で起こりがちな以下のような行為も、実は偽装請負のリスクがあります。


  • 発注者が受託者の従業員の出退勤時間を管理している



  • 発注者が受託者の従業員に直接、作業の優先順位を指示している



  • 発注者の事業所内で、発注者と受託者の従業員が一緒に作業している



  • 発注者が受託者の従業員の勤務シフトを作成している



  • 受託者の従業員が、実質的に発注者の指揮命令系統に組み込まれている


偽装請負の罰則とリスク

偽装請負が発覚した場合、以下のような厳しい罰則やリスクがあります。

刑事罰 労働者派遣法5条1項に違反した場合は、偽装請負を行った注文主と請負業者に対して、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、職業安定法違反に該当した場合も同様に、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科される可能性があります。中間搾取が認められる場合は、労働基準法違反として1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金となります。

労働契約申込みみなし制度 偽装請負が行われ一定の要件が満たされた場合、発注者が外注先従業員に対し労働契約の申込みをしたものとみなされます(労働者派遣法40条の6第1項5号)。

この日から1年以内に派遣社員が承諾する旨の意思表示をした場合、派遣先企業と派遣社員間で労働契約が成立します。過去にさかのぼって社会保険料の支払いを求められる可能性もあります。

企業名の公表とレピュテーションリスク 労働基準監督署の指導を受けたり、労働者派遣法による公表の対象になると、当事者だけではなく世間の厳しい目が向けられ、企業イメージのダウンや、コンプライアンス強化のための費用がかかるなどのリスクがあります。

近年は、SNSなどを通じて企業の不正が瞬時に拡散される時代です。偽装請負が発覚すると、企業ブランドに深刻なダメージを与え、取引先や顧客からの信頼を失うことになります。

実際の裁判例 A社はB社からソフトウェア開発業務の委託を受けており、原告CはA社との間の契約でB社の事業所でソフトウェアの開発業務に従事していたところ、CはB社の指揮命令を受けて働いていたため労働者派遣契約であると認められ、違法な解雇による不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料等の支払を認めた事例があります(パンプティ商会ほか1社事件:東京地方裁判所令和2年6月11日判決)。

この事例は、形式上は業務委託契約であっても、実態として発注者の指揮命令下で働いていれば労働者派遣とみなされ、労働者としての権利が認められることを示しています。

偽装請負を防ぐための実務上のポイント

偽装請負のリスクを避けるためには、以下のポイントに注意する必要があります。

契約類型を明確にする

まず、業務委託契約書に「これは請負契約である」「これは準委任契約である」と明記し、民法上の請負・委任・準委任のどの契約に該当するかあらかじめ確認しておくことが重要です。

単に「業務委託契約書」というタイトルだけでは、どの契約類型なのかが不明確です。契約の性質を明確にすることで、双方の権利義務関係がはっきりし、トラブルを防ぐことができます。

指揮命令権の所在を明確にする

契約書に、「受託者は自己の責任において業務を遂行し、委託者は受託者の従業員に対して直接指示を行わない」といった条項を盛り込みます。

実際の運用でも、発注者側の担当者が受託者の従業員に直接指示を出さないよう、社内教育を徹底する必要があります。業務上の指示はすべて受託会社の責任者を通じて行い、その責任者が自社の従業員に指示する、という構造を維持することが重要です。

成果物の定義を詳細に行う

請負契約では、何をもって「完成」とみなすのかを契約書で詳細に定義します。曖昧な定義のままだと、完成しているかどうかで争いになる可能性があります。

たとえば、Webサイト制作であれば、ページ数、機能要件、デザインの方向性、対応ブラウザ、納品形式など、できる限り具体的に記載します。

受託者の自主性を尊重する

請負契約・業務委託契約では、受託者が自己の裁量で業務を遂行できるようにする必要があります。作業場所、作業時間、作業方法などを受託者が自由に決められる状態にしておくことが重要です。

発注者の事業所内で作業する必要がある場合(構内請負)は、特に注意が必要です。同じ場所で働いていると、つい発注者の従業員が受託者の従業員に指示を出してしまいがちですが、これが偽装請負のリスクを高めます。

業務委託契約書に必要な条項を盛り込む

以下の項目は、業務委託契約書に必ず明記すべき内容です。


  • 業務内容:委託する業務の範囲を具体的に記載



  • 報酬額と支払条件:報酬の金額、計算方法、支払時期、支払方法



  • 契約期間:契約の開始日と終了日、更新条件



  • 成果物の定義(請負契約の場合):何をもって完成とみなすか



  • 納期(請負契約の場合):成果物の納品期限



  • 契約不適合責任(請負契約の場合):不具合があった場合の対応



  • 善管注意義務(委任・準委任契約の場合):受託者の注意義務



  • 秘密保持義務:機密情報の取り扱いに関する規定



  • 再委託の可否:第三者への再委託を認めるかどうか



  • 知的財産権の帰属:成果物の著作権などの権利が誰に帰属するか



  • 契約解除条項:どのような場合に契約を解除できるか



  • 損害賠償:契約違反があった場合の損害賠償に関する規定


定期的な見直しと専門家への相談

契約を締結した後も、実際の運用が契約内容と合っているか定期的に確認することが重要です。当初は適切だった契約も、業務の進め方が変わることで実態と乖離してくることがあります。

また、契約内容に少しでも不安がある場合は、弁護士などの専門家に相談することを強くお勧めします。偽装請負のリスクは、企業にとって非常に大きなダメージとなるため、予防的な対応が何より重要です。

業務委託を成功させるための選択基準

最後に、どのような業務をどの契約形態で委託すべきか、実務的な判断基準を整理します。

請負契約が適している業務

以下のような特徴を持つ業務は、請負契約が適しています。


  • 明確な成果物が定義できる業務:Webサイト制作、システム開発、デザイン制作、翻訳、建設工事など



  • 単発または短期のプロジェクト:期間限定のキャンペーンサイト制作、イベント運営など



  • 品質基準が明確な業務:仕様書で要件を詳細に定義できるもの


請負契約では、「何を作るか」は発注者が決めますが、「どうやって作るか」は受託者の裁量に委ねられます。完成責任を受託者に負わせることで、発注者は細かい管理から解放されるメリットがあります。

委任・準委任契約が適している業務

以下のような業務は、委任契約または準委任契約が適しています。


  • 継続的な業務遂行が必要な業務:経理代行、システム保守運用、コンサルティング、顧問業務など



  • 成果物の定義が難しい業務:マーケティング支援、広報業務、採用支援など



  • 専門的な判断が求められる業務:法律相談、税務相談、経営コンサルティングなど


委任・準委任契約では、成果の保証ではなく、専門家としての適切な業務遂行を期待する契約関係になります。長期的なパートナーシップを構築したい場合にも適しています。

判断に迷う場合の考え方

実務では、明確に区別できないグレーゾーンの業務も多く存在します。その場合は、以下の点を考慮して判断します。

成果物の明確性:明確な成果物がある場合は請負契約、業務遂行そのものが重要な場合は委任・準委任契約を選択します。

完成責任の必要性:必ず完成させる必要がある業務は請負契約、ベストエフェート(最善の努力)で十分な業務は委任・準委任契約が適しています。

業務の継続性:単発のプロジェクトは請負契約、継続的な関係を前提とする業務は委任・準委任契約が向いています。

迷った場合は、リスクを考慮して委任・準委任契約を選択するのも一つの方法です。請負契約で完成責任を課したものの完成しなかった場合のトラブルは、非常に大きな問題に発展する可能性があるためです。

まとめ|適切な契約選択とコンプライアンスの重要性

業務委託と業務請負の違いを理解することは、単なる法律の知識ではなく、企業が外部リソースを効果的かつ安全に活用するための必須の知識です。

本記事で解説してきたように、業務委託は請負契約・委任契約・準委任契約という3つの契約類型の総称であり、それぞれに異なる特徴と適用場面があります。業務の性質、求める成果、リスクの許容度などを総合的に判断して、最適な契約形態を選択することが重要です。

特に注意すべきは、知らないうちに偽装請負の状態に陥ってしまうリスクです。形式的に請負契約を結んでいても、実態として発注者が受託者の従業員に直接指示を出している場合、違法な偽装請負とみなされます。これは、意図的でなくても罰則の対象となり、企業に大きなダメージを与える可能性があります。

業務委託を成功させるためには、以下の点を常に意識することが大切です。


  1. 契約類型を明確にする:請負なのか、委任なのか、準委任なのかを契約書で明確にする



  2. 指揮命令権の所在を理解する:発注者は受託者の従業員に直接指示を出さない



  3. 成果物や業務内容を詳細に定義する:後々のトラブルを防ぐため、契約書で詳細に定める



  4. 定期的に見直す:契約内容と実態が乖離していないか定期的に確認する



  5. 専門家に相談する:不安がある場合は弁護士などの専門家に相談する


適切な業務委託・業務請負の活用は、企業の成長を加速させる強力な手段です。一方で、法令を遵守し、労働者の権利を守りながら活用することが、持続可能なビジネスの基盤となります。

本記事が、皆様の業務委託活用の一助となれば幸いです。

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