セキュリティインシデントとは?原因・事例・対策を解説

企業のデジタル化が加速する中、セキュリティインシデントの発生件数は年々増加しています。
デジタルアーツの調査によると、2025年上半期に公表されたセキュリティインシデントは集計以来過去最多の1,027件を記録し、前年同期比で約1.8倍という急増ぶりでした。もはやサイバー攻撃は「他人事」ではなく、業種や規模を問わずすべての組織が向き合うべき経営課題となっています。
本記事では、セキュリティインシデントの基本的な定義から、具体的な発生原因、実際の被害事例、そして効果的な対策方法まで、実務に役立つ情報を詳しく解説します。
セキュリティインシデントとは
セキュリティインシデントとは、情報セキュリティにおいて望ましくない、または予期しない問題や事件・事故のことを指します。不正アクセスやマルウェア感染、情報漏えい、システム障害など、組織の情報資産やIT基盤に影響を及ぼすあらゆるセキュリティ上の脅威が含まれます。
情報セキュリティの世界では、機密性(Confidentiality)、完全性(Integrity)、可用性(Availability)という3つの要素が守られるべき基本原則とされており、これらのいずれかが侵害される事態がセキュリティインシデントに該当します。たとえば、顧客情報が外部に漏れれば機密性が、データが改ざんされれば完全性が、システムが停止すれば可用性が損なわれたことになるわけです。
企業にとって特に深刻なのは、単なる技術的な問題にとどまらず、社会的信用の失墜や株価への影響、法的責任の発生など、経営基盤を揺るがしかねない事態に発展する可能性があることです。実際、KADOKAWA社のランサムウェア被害では、復旧費用やクリエーター補償を含む特別損失24億円に加え、売上高77億円、営業利益47億円の減少が見込まれるなど、その影響は甚大でした。
セキュリティインシデントの発生状況
国内におけるセキュリティインシデントの発生状況は、決して楽観視できるものではありません。サイバーセキュリティクラウド社の調査では、2024年は約3日に1回のペースで企業や自治体でセキュリティインシデントが発生し、年間の個人情報漏洩件数は約2,164万件に達しています。
さらに注目すべきは、その増加ペースです。トレンドマイクロの集計によれば、2024年のセキュリティインシデント総数は587件で、2023年の383件に対して大きく増加しており、piyokango氏の調査でも2024年の1年間に公表されたインシデント数は619件で、月平均約50件、1日あたり約2件のペースで発生していることが明らかになっています。
こうした状況を受け、単に件数が増えているだけでなく、被害の性質も変化しつつあります。従来型のウイルス感染から、標的を絞った高度な攻撃へとシフトし、サプライチェーン全体を巻き込む大規模な被害が目立つようになっているのです。
セキュリティインシデントの発生原因
セキュリティインシデントの発生原因は、大きく「外的要因」「内的要因」「災害・外部環境要因」の3つに分類されます。それぞれを詳しく見ていきましょう。
外的要因(外部からの攻撃)
外的要因とは、外部の攻撃者による意図的な攻撃を指します。サイバー犯罪者や国家を背景とする攻撃グループなど、さまざまな主体が金銭目的や機密情報の窃取、あるいは組織の業務妨害を狙って攻撃を仕掛けてきます。
不正アクセスは、最も頻繁に発生するインシデントの一つです。デジタルアーツの集計では、2025年上半期の国内セキュリティインシデントにおいて不正アクセスが最も多くなっています。攻撃者は、脆弱なパスワードを突破したり、フィッシングメールで認証情報を盗んだりして、組織のシステムに侵入します。近年では、VPNなどのネットワーク機器の脆弱性を悪用するケースも増えています。
マルウェア感染、特にランサムウェア攻撃は、組織に壊滅的な被害をもたらします。攻撃者はファイルを暗号化して身代金を要求するだけでなく、暗号化前に盗んだデータを公開すると脅す「二重恐喝」の手口を用いるようになりました。トレンドマイクロの調査によると、2025年1月から11月のランサムウェア攻撃被害公表は78件で、2024年の同時期とほぼ変わらないペースで推移しています。
DoS攻撃(サービス拒否攻撃)は、大量のアクセスを送り付けてサーバーをダウンさせる攻撃手法です。2024年末から2025年初頭にかけて、日本航空、NTTドコモ、日本気象協会といった国内組織へのDDoS攻撃被害が相次いで公表され、多くのWebサービスで一時的に閲覧や利用が不可能になる事態が発生しました。
標的型攻撃は、特定の組織や個人を狙った高度な攻撃です。従業員になりすましたメールを送るなど、巧妙な手口で組織内に侵入し、長期間潜伏しながら重要情報を窃取します。防御側にとって検知が難しく、被害に気づいた時には既に重大な情報が流出している可能性もあります。
内的要因(組織内部の問題)
内的要因には、従業員のヒューマンエラーと故意による内部不正の両方が含まれます。実は、高度なサイバー攻撃と同じくらい、あるいはそれ以上に組織を脅かすのが、この内部からのリスクです。
ヒューマンエラーの代表例が、メールの誤送信や記録媒体の紛失です。デジタルアーツの統計では、2024年も送信先設定ミスが多くを占め、添付ファイルミスが前年に比べて増加していました。また、Googleフォームなどのクラウドサービスの設定ミスも目立ちます。設定不備によって個人情報が誰でも閲覧できる状態になっているケースが後を絶ちません。
内部不正は、従業員や元従業員、派遣社員などが意図的に情報を持ち出したり、システムを破壊したりする行為です。情報処理推進機構(IPA)が公表した「情報セキュリティ10大脅威2024」では、NTTビジネスソリューションズに派遣されていた元派遣社員が顧客情報を不正に流出させた事例が取り上げられており、内部不正の脅威が改めて認識されています。
内部不正が特に厄介なのは、正規の権限を持つ人物が行うため、通常のセキュリティ対策では検知しにくい点です。アクセス権限の管理やログの監視、退職時の権限剥奪手順など、人的セキュリティ対策の重要性が増しています。
災害・外部環境要因
地震や台風、洪水といった自然災害も、セキュリティインシデントの原因となり得ます。データセンターが被災すればシステムが停止し、業務継続が困難になります。また、停電によってバックアップシステムが機能しなければ、データ損失のリスクも高まります。
加えて、クラウドサービスや外部委託先の障害も見逃せません。自社のセキュリティ対策が万全でも、依存している外部サービスに問題が発生すれば、間接的に被害を受けることになります。サプライチェーン全体でのリスク管理が求められる所以です。
セキュリティインシデントの種類と特徴
セキュリティインシデントにはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特徴と対策が必要です。ここでは主要なインシデントのパターンを整理します。
不正アクセス
不正アクセスは、権限のない第三者がシステムやネットワークに侵入する行為です。2024年は最もセキュリティインシデントが多かった業種が製造業で、全体の約4分の1となる24.8%を占める結果となりました。製造業がターゲットになりやすい背景には、デジタル化の進展によるサプライチェーン全体のリスク増加があります。
不正アクセスの手口は多岐にわたります。弱いパスワードを総当たりで試す「ブルートフォース攻撃」、フィッシングメールで認証情報を盗む「クレデンシャルスタッフィング」、Webアプリケーションの脆弱性を突く「SQLインジェクション」などがあります。いずれの手口も、システムの弱点を突いて侵入するという点では共通しています。
マルウェア感染とランサムウェア
マルウェアとは、悪意のあるソフトウェアの総称です。中でも近年猛威を振るっているのがランサムウェアで、2024年のマルウェア感染インシデントの中でもランサムウェアが9割以上を占めています。
ランサムウェア攻撃の手口も進化しています。かつては無差別にメールをばらまく「ばらまき型」が主流でしたが、現在は特定の組織を狙う「標的型」が増加しました。さらに、ランサムウェア攻撃グループは身代金の支払い圧力を高めるため、仮想化基盤など対象組織の基幹システムが稼働している可能性が高いシステムを標的とする動きが見られるようになっています。
また、データを暗号化せずに盗んだ情報の公開を脅迫する「ノーウェアランサム」という新たな手口も登場しており、攻撃者は常に新しい戦術を編み出しています。
サプライチェーン攻撃
サプライチェーン攻撃とは、直接の標的ではなく、その取引先や委託先を経由して本命の組織を攻撃する手法です。セキュリティ対策が手薄な中小企業を足掛かりにして、大企業や官公庁に侵入するケースが増えています。
2025年上半期は特に不正アクセスやマルウェア感染においてサプライチェーンに起因するインシデントが増加要因となりました。株式会社イセトーのランサムウェア被害では、委託元である地方自治体、商工会議所、銀行、クレジットカード会社など複数の企業・組織が影響を受け、流出が確認された情報は約150万件に達しました。
この種の攻撃が厄介なのは、自社のセキュリティがいくら堅牢でも、取引先の脆弱性から被害を受ける可能性がある点です。委託先の選定基準や定期的な監査、情報共有の仕組みづくりなど、サプライチェーン全体でのセキュリティ水準の底上げが求められます。
クラウドサービスに起因するインシデント
クラウドサービスの利用拡大に伴い、クラウド環境特有のインシデントも増加しています。トレンドマイクロの分析によると、2023年はクラウドに起因するセキュリティインシデントが2022年の43件に対して約130%増となる56件でした。
クラウドアカウントの不正利用や、設定ミスによる情報公開、クラウドストレージへの不正アクセスなど、クラウド特有のリスクが顕在化しています。多要素認証の導入やアカウント管理の徹底、クラウド設定の定期的な見直しが重要です。
実際に発生したセキュリティインシデント事例
理論だけでなく、実際の事例を知ることで、セキュリティインシデントのリアリティと対策の必要性が理解できます。ここでは、2024年から2025年にかけて発生した代表的な事例を紹介します。
KADOKAWA社のランサムウェア被害
2024年6月、KADOKAWAグループが大規模なランサムウェア攻撃を受けました。この攻撃により、「ニコニコ動画」をはじめとする複数のサービスが長期間停止する事態となり、完全再開までに約4ヶ月を要し、復旧費用やクリエーター補償などを含む特別損失24億円、売上高77億円、営業利益47億円の減少が見込まれるなど、経営に甚大な影響を及ぼしました。
この事例から学ぶべき点は、ランサムウェア攻撃が単なるIT部門の問題ではなく、事業継続に直結する経営課題であるということです。バックアップの重要性はもちろん、攻撃を受けた際の事業継続計画(BCP)の策定が不可欠であることが浮き彫りになりました。
株式会社イセトーのサプライチェーン攻撃
2024年5月、株式会社イセトーが不正アクセスを受け、委託業務で扱っていたデータが流出しました。攻撃者はVPNを悪用してネットワークに侵入し、委託元である地方自治体、商工会議所、銀行、クレジットカード会社、小売業者などの顧客情報を盗み出しました。
この事例では、一つの企業が被害を受けることで、その取引先全体に影響が波及するサプライチェーンリスクの恐ろしさが明らかになりました。委託先のセキュリティ管理が不十分だと、自社も間接的に被害を受ける可能性があることを、多くの企業が認識するきっかけとなったのです。
アサヒグループホールディングスのランサムウェア攻撃
2025年9月29日、アサヒグループホールディングスがランサムウェアによるサイバー攻撃を受け、注文・出荷システムや物流関連の機能が停止し、全国の工場・販売現場で業務に大きな混乱が発生しました。影響はアサヒGHDにとどまらず、商品不足を補うべく急な増産を迫られた同業他社の年末商戦にも混乱をもたらしました。
さらに、約191万件にのぼる顧客や従業員等の個人情報が流出した可能性が公表され、個人情報保護の観点でも重大なリスクが明らかになっています。この事例は、サプライチェーン全体、ひいては業界全体、社会全体への影響を浮き彫りにしており、一企業のシステムダウンが全国レベルで商品供給や物流網全体に波及する時代になったことを示しています。
設定ミスによる情報漏えい
高度なサイバー攻撃だけが脅威ではありません。設定ミスという単純なミスでも、深刻なインシデントにつながります。総合人材サービス企業の事例では、求人広告の販売代理店向けシステムの設定不備により、2018年5月から2024年8月という長期にわたって、54万9,195名の法人顧客の個人情報が閲覧可能な状態になっていました。
こうした事例が示すのは、システム開発時や設定変更時における入念なチェック体制の必要性です。特にクラウドサービスの設定では、デフォルトのアクセス権限を理解せずに運用を始めてしまうケースが多く、プライバシーレビュープロセスの導入など、組織的な対策が求められます。
セキュリティインシデントによるリスクと影響
セキュリティインシデントが発生すると、企業はどのようなリスクに直面するのでしょうか。その影響は多岐にわたり、時には企業の存続すら危うくします。
社会的信用の失墜
顧客情報や機密情報が流出すれば、企業の信頼は一気に失墜します。長年かけて築いてきたブランドイメージが、一度のインシデントで台無しになる可能性があるのです。特にBtoC企業では、顧客離れが直接的な業績悪化につながります。
報道やSNSでの拡散により、被害の規模以上にネガティブな印象が広がることもあります。信頼回復には長い時間と多大なコストが必要であり、場合によっては事業の縮小や撤退を余儀なくされることもあります。
金銭的損失
セキュリティインシデントによる金銭的損失は、想像以上に大きくなります。直接的な損失として、システムの復旧費用、セキュリティ対策の強化費用、専門家への調査依頼費用などが発生します。
さらに、間接的な損失も無視できません。業務停止による機会損失、顧客への補償金、株価下落による時価総額の減少など、被害総額は数億円から数十億円規模に達することも珍しくありません。デジタルアーツの調査では、インシデントによる被害額には直接的被害だけでなく、機会損失も大きく影響することが示されています。
法的責任と訴訟リスク
個人情報保護法をはじめとする各種法令に基づき、セキュリティインシデントが発生した場合、企業には報告義務や通知義務が課せられます。これらの義務を怠れば、行政処分や罰則の対象となります。
また、情報漏えいによって被害を受けた顧客や取引先から、損害賠償請求を受ける可能性もあります。集団訴訟に発展すれば、賠償額は莫大なものになりかねません。法的リスクへの備えとして、サイバー保険への加入を検討する企業も増えています。
事業継続への影響
ランサムウェア攻撃などでシステムが暗号化されれば、業務が完全に停止します。製造ラインが止まり、ECサイトが使えなくなり、日常業務が滞る事態は、企業にとって致命的です。
復旧までの期間が長引けば、顧客は競合他社に流れ、市場シェアを失います。KADOKAWAの事例のように、復旧に数ヶ月を要するケースでは、その間の売上減少は計り知れません。BCPの策定と定期的な訓練が、事業継続のカギを握っています。
セキュリティインシデントを防ぐための対策
セキュリティインシデントのリスクを完全にゼロにすることは不可能ですが、適切な対策により、発生確率を大幅に下げ、万が一発生した際の被害を最小限に抑えることは可能です。
セキュリティ体制の構築
まず重要なのは、組織全体でセキュリティに取り組む体制を整えることです。経営層がリーダーシップを発揮し、セキュリティを経営課題として位置づける必要があります。
CISO(最高情報セキュリティ責任者)の任命や、セキュリティ専門チームの設置、インシデント対応チーム(CSIRT)の組織化など、責任と権限を明確にした体制づくりが求められます。また、セキュリティポリシーの策定と全社への周知徹底も欠かせません。
IT資産の適切な管理
どこにどんな情報資産があるのか、誰がアクセスできるのかを把握していなければ、守るべきものを守れません。IT資産台帳を作成し、ハードウェア、ソフトウェア、データの所在と重要度を整理します。
アクセス権限の管理も重要です。最小権限の原則に基づき、必要な人に必要な権限だけを付与し、定期的に見直します。特に退職者や異動者の権限剥奪は迅速に行わなければ、内部不正のリスクが高まります。
OSとソフトウェアの最新化
既知の脆弱性を放置することは、攻撃者に「どうぞお入りください」と言っているようなものです。OS、ミドルウェア、アプリケーションは常に最新のセキュリティパッチを適用し、脆弱性を早期に解消します。
特にVPNなどのネットワーク機器は、ランサムウェア攻撃の侵入経路として狙われやすいため、ファームウェアの更新を怠らないようにしましょう。パッチ管理ツールを導入し、更新状況を一元管理することも効果的です。
セキュリティツールの導入
技術的な対策として、各種セキュリティツールの導入が不可欠です。ファイアウォールやIDS/IPS(侵入検知・防御システム)でネットワークを保護し、ウイルス対策ソフトでマルウェアをブロックします。
EDR(Endpoint Detection and Response)やXDR(Extended Detection and Response)といった次世代のセキュリティソリューションは、侵入を前提として早期検知と迅速な対応を可能にします。また、SIEM(Security Information and Event Management)でログを集約・分析し、異常な動きを見逃さない仕組みも重要です。
近年注目されているのが、ASM(Attack Surface Management)やCREM(Cyber Risk Exposure Management)といった、組織全体のアタックサーフェス(攻撃対象領域)を包括的に管理するアプローチです。特にクラウドサービスの利用拡大で、管理すべき範囲が広がっている現状では、こうした包括的な管理手法が有効です。
従業員教育とセキュリティ意識の向上
どれほど高度なセキュリティツールを導入しても、それを使う人間の意識が低ければ効果は半減します。定期的なセキュリティ研修を実施し、フィッシングメールの見分け方、パスワード管理の重要性、不審なアクセスへの対処法などを教育します。
標的型攻撃メールの訓練も効果的です。実際にフィッシングメールを模した訓練メールを送り、従業員の反応を確認することで、セキュリティ意識を高めることができます。また、インシデント発生時の報告ルートを明確にし、迅速な初動対応につなげる体制を整えます。
サプライチェーン全体でのセキュリティ強化
自社だけでなく、取引先や委託先を含めたサプライチェーン全体でのセキュリティ水準向上が求められます。委託先の選定時にはセキュリティ基準を設け、定期的な監査を実施します。
契約書に情報セキュリティに関する条項を盛り込み、インシデント発生時の責任範囲や報告義務を明確にしておくことも重要です。また、委託先とのコミュニケーションを密にし、セキュリティ情報を共有する関係を築くことで、サプライチェーン全体のレジリエンスを高められます。
セキュリティインシデント発生時の対応手順
万が一セキュリティインシデントが発生した場合、迅速かつ適切な対応が被害を最小限に抑えるカギとなります。ここでは、インシデント発生時の基本的な対応手順を解説します。
検知・初動対応
インシデントを発見したら、速やかに報告します。報告先や報告方法を事前に定めておき、全従業員に周知しておくことが重要です。報告を受けたら、まず被害の拡大を防ぐための初動対応を行います。
感染した端末をネットワークから切り離す、侵害されたアカウントのパスワードを変更する、不正なアクセスをブロックするなど、被害が広がらないよう迅速に行動します。この際、証拠保全のためにログやデータのバックアップを取ることも忘れてはなりません。フォレンジック調査が必要になる可能性を考え、可能な限り証拠を残します。
調査・分析
初動対応が終わったら、インシデントの詳細な調査に移ります。いつ、どこから、どのような手法で侵入されたのか、どの範囲まで被害が及んでいるのかを明らかにします。
専門知識が必要な場合は、外部のセキュリティベンダーやフォレンジック専門家に調査を依頼することも検討します。調査結果をもとに、被害の全容を把握し、次のステップに進みます。
報告・公表
個人情報保護法や業界のガイドラインに従い、必要に応じて関係機関への報告や、被害者への通知、社会への公表を行います。報告や公表のタイミングや内容は慎重に検討する必要があり、法務部門や広報部門と連携して対応します。
不適切な情報公開は、さらなる信用失墜を招く可能性があります。事実を正確に伝え、対応状況を誠実に説明することで、ステークホルダーからの信頼を維持する努力が求められます。
復旧・再発防止
システムの復旧作業を進めながら、再発防止策を講じます。攻撃の侵入経路を特定し、脆弱性を修正します。パッチの適用、設定の見直し、セキュリティツールの追加など、具体的な対策を実施します。
また、インシデント対応の過程で得られた教訓をもとに、セキュリティポリシーや対応手順を見直します。同じ過ちを繰り返さないよう、組織全体で学びを共有し、セキュリティ体制を強化していきます。
事後対応と継続的改善
インシデントが解決したら、対応プロセス全体を振り返ります。何がうまくいき、何が課題だったのかを分析し、次のインシデントに備えます。調査報告書を作成し、経営層や関係部署に共有します。
また、被害者への継続的なサポートや、再発防止策の実施状況のモニタリングを行います。セキュリティは一度対策を講じれば終わりではなく、継続的な改善が必要です。定期的な見直しとアップデートを繰り返し、組織のセキュリティレベルを高めていきましょう。
まとめ
セキュリティインシデントは、もはや「起こるかもしれない」リスクではなく、「いつ起こってもおかしくない」現実の脅威です。2025年上半期は集計以来過去最多の1,027件を記録し、前年同期比で約1.8倍に増加しており、その増加ペースは加速しています。
攻撃の手口は日々進化し、ランサムウェアの二重恐喝やサプライチェーン攻撃、クラウド環境を狙った攻撃など、新たな脅威が次々と登場しています。一方で、設定ミスやヒューマンエラーといった基本的な問題も依然として多く、包括的なセキュリティ対策が求められます。
重要なのは、セキュリティを技術的な問題としてだけでなく、経営課題として捉えることです。経営層がリーダーシップを発揮し、組織全体でセキュリティ意識を高め、IT部門だけでなく全従業員が当事者意識を持って取り組む必要があります。
また、自社だけでなく、サプライチェーン全体でのセキュリティ水準向上も欠かせません。取引先や委託先を含めた包括的なリスク管理により、連鎖的な被害を防ぎます。
インシデントが発生した際の迅速な対応も、被害を最小限に抑えるカギです。事前の準備と訓練により、いざという時に適切な行動がとれる体制を整えておきましょう。
セキュリティ対策に完璧はありませんが、継続的な改善により、リスクを大幅に低減することは可能です。本記事で紹介した対策を参考に、自組織のセキュリティ体制を今一度見直し、サイバー攻撃に強い組織づくりを進めていきましょう。
参考情報