飲食店の事業計画書の書き方|融資を成功させる8つの項目と作成のコツ

飲食店を開業する際、多くの方が直面するのが資金調達の問題です。

日本政策金融公庫の2024年度新規開業実態調査によれば、飲食店を含む開業資金の平均値は985万円、中央値は580万円となっています。この多額の開業資金を調達する上で欠かせないのが、事業計画書の作成です。

融資担当者が最も重視するのは、あなたの事業計画の「実現可能性」と「収益性」。つまり、どれだけ情熱があっても、計画に具体性がなければ融資を受けることはできません。本記事では、金融機関から融資を引き出すための事業計画書の書き方を、実践的な視点から解説していきます。

飲食店の事業計画書とは何か

飲食店の事業計画書とは、開業する飲食店のビジネスモデルや収支計画、資金調達の方法などを具体的に記載した書類です。単なる「書類」ではなく、あなたの飲食店が成功する道筋を示す「設計図」といえます。

事業計画書は主に金融機関からの融資を受ける際に必要となりますが、それ以外にも重要な役割があります。計画書を作成する過程で、自分の事業構想を客観視し、潜在的なリスクや課題を洗い出すことができるのです。

事業計画書と創業計画書の違い

飲食店開業の文脈で語られる「事業計画書」と「創業計画書」は、ほぼ同じ意味で使われます。ただし、厳密には以下のような違いがあります。

創業計画書は、これから事業を始める方が作成する計画書で、日本政策金融公庫など金融機関が指定するフォーマットに沿って記載するものです。開業前の計画を示すことが主な目的となります。

一方、事業計画書は、すでに事業を営んでいる経営者が追加融資を受ける際や、事業の方向性を見直す際に作成するものです。過去の実績データや財務分析を含む、より包括的な内容になります。

飲食店を新規開業する場合は、通常「創業計画書」を作成することになりますが、本記事では便宜上「事業計画書」として解説を進めます。

なぜ飲食店開業に事業計画書が必要なのか

事業計画書が必要な理由は、大きく分けて3つあります。それぞれの理由を理解することで、計画書作成の意義がより明確になるでしょう。

金融機関からの融資を有利に進めるため

マネーフォワードの調査によれば、開業時の資金調達額の平均は1,180万円で、そのうち金融機関からの借入が平均768万円(65.1%)、自己資金が平均280万円(23.8%)となっています。

つまり、ほとんどの飲食店オーナーは、開業資金の約3分の2を借入でまかなっているのです。この借入を受けるためには、金融機関に対して「この事業は成功する見込みがあり、確実に返済できる」ことを証明する必要があります。その証明書類こそが、事業計画書なのです。

融資担当者は、あなたの計画書から以下のポイントを確認しています。


  • 事業の実現可能性(本当に売上が立つのか)



  • 収支計画の妥当性(利益は出るのか)



  • 返済能力(借入金を返済できるのか)



  • 経営者としての適性(業界経験や準備状況)


これらの要素を論理的に説明できる計画書があれば、融資の成功率は格段に高まります。

自身のビジネスプランを客観的に見直すため

事業計画書の作成は、自分の頭の中にあるアイデアを具体的な数字に落とし込む作業です。この過程で、当初の計画に無理がないか、見落としている費用はないか、売上予測は現実的かなど、さまざまな点を検証できます。

たとえば、「月商200万円を目指す」という目標があったとしましょう。これを事業計画書に落とし込む際には、以下のような計算が必要になります。


  • 客単価はいくらか



  • 1日何人の来客が必要か



  • 座席数と回転率から実現可能か



  • その来客数を確保するための立地条件は満たしているか


このように数字で検証することで、「思っていたより厳しい」「もっと売上が見込める」といった気づきが得られ、開業前に計画を修正できるのです。

必要な資金と資金計画を正確に把握するため

飲食店の開業には、物件取得費、内外装工事費、厨房機器費、備品費、運転資金など、多岐にわたる費用が発生します。事業計画書を作成することで、これらの費用を項目ごとに洗い出し、総額でいくら必要なのかを正確に把握できます。

また、資金の調達方法(自己資金、借入、親族からの出資など)も明確になります。「自己資金が300万円、借入が700万円で、合計1,000万円で開業する」といった具体的な資金計画が立てられるのです。

さらに重要なのは、開業後の運転資金の見通しです。多くの飲食店が開業から3〜6カ月は赤字が続くため、この期間を乗り切るための運転資金を確保しておく必要があります。事業計画書で資金繰りを可視化することで、開業後の資金ショートを防ぐことができます。

飲食店の事業計画書に記載すべき8つの項目

ここからは、日本政策金融公庫の創業計画書フォーマットに沿って、事業計画書に記載すべき項目を詳しく解説していきます。このフォーマットは、他の金融機関でもほぼ同様の項目が求められるため、汎用性の高い内容です。

①創業の動機

創業の動機は、事業計画書の冒頭に記載する重要な項目です。「なぜ飲食店を開業しようと思ったのか」を具体的に説明します。

この項目で融資担当者が確認したいのは、あなたの創業が「思いつき」ではなく、「十分な準備と計画に基づいた決断」であるかどうかです。以下のポイントを盛り込むと効果的です。

開業に至った経緯を具体的に
「10年間イタリアンレストランで修業を積み、本場の味を地元で提供したいと考えた」「前職の営業経験を活かし、法人向けの仕出し弁当サービスを展開したい」など、これまでの経験とどう結びついているかを明確にします。

開業のタイミングの必然性
「なぜ今なのか」を説明することも重要です。市場の変化、地域の再開発、個人的な準備が整ったなど、今開業する理由を示しましょう。

社会的意義や顧客へのベネフィット
「地域に本格的なエスニック料理を提供する店がない」「健康志向の高まりに応える有機野菜中心のメニューを提供したい」など、あなたの店が社会や顧客にどんな価値を提供するかを述べます。

ただし、あまりに壮大なビジョンを語りすぎると、かえって実現可能性に疑問を持たれることがあります。熱意は大切ですが、地に足のついた表現を心がけてください。

②経営者の経歴

経営者の経歴欄では、あなたの職歴を時系列で記載します。ここで重要なのは、開業する飲食店の事業に関連する経験をアピールすることです。

飲食業界での実務経験
調理、接客、店舗運営、仕入れ管理など、飲食店経営に必要なスキルをどこで身につけたかを具体的に記載します。「〇〇レストランにて5年間調理担当、うち2年間は副料理長として15名のスタッフを統括」といった形で、役職や実績も含めると説得力が増します。

経営や財務に関する知識
飲食業界未経験であっても、他業種での経営経験や、財務・労務管理の知識があれば記載しましょう。簿記資格や、経営セミナーへの参加実績なども有効です。

未経験分野のカバー方法
もし飲食業界が未経験の場合は、どのように不足する知識や経験を補うかを示します。「共同経営者として飲食業界20年のベテランを迎える」「開業前に半年間、知人の店で修業を積む」など、具体的な対策を記載してください。

創業の動機と経営者の経歴には一貫性が必要です。動機で述べた内容と、経歴に矛盾がないよう注意しましょう。

③取扱商品・サービス

取扱商品・サービスの項目では、あなたの飲食店が提供するメニューや、店舗のコンセプトを説明します。この項目は事業計画書の中核となる部分で、最も力を入れて記載すべきです。

提供するメニューと価格帯
主力となるメニューを3〜5品程度挙げ、それぞれの価格を明記します。「ランチセット800円〜1,200円」「ディナーコース3,000円〜5,000円」など、価格帯の幅も示すと良いでしょう。

全メニューを記載する必要はありませんが、看板メニューや客単価に大きく影響するメニューは必ず含めてください。

セールスポイントと差別化要素
競合店との違いを明確にすることが重要です。「化学調味料不使用の自然派イタリアン」「地元農家と提携した旬の野菜料理」「深夜3時まで営業するラーメン店」など、あなたの店ならではの強みを具体的に示します。

ここで注意したいのは、セールスポイントが独りよがりにならないことです。「自分が作りたい料理」ではなく、「顧客が求めている料理」を提供できることを示す必要があります。市場調査の結果や、類似店舗の成功事例を引き合いに出すと説得力が増します。

ターゲット顧客層
「30〜40代の女性をメインターゲットとした健康志向カフェ」「近隣のオフィスワーカーをターゲットとしたランチ特化型食堂」など、誰に向けたサービスかを明確にします。

ターゲットが明確であるほど、マーケティング戦略や立地選定の妥当性を説明しやすくなります。

販売戦略
どのような方法で顧客を獲得するかを記載します。SNSマーケティング、グルメサイトへの掲載、地域の情報誌への広告、近隣企業への営業活動など、具体的な集客施策を示しましょう。

特に開業直後は認知度がゼロの状態からスタートするため、初期の集客戦略は詳しく記載することをおすすめします。

④取引先・取引関係

取引先・取引関係の項目では、販売先、仕入先、外注先などを具体的に記載します。

販売先
一般的な飲食店であれば「一般消費者」と記載しますが、法人向けのケータリングサービスや、仕出し弁当を提供する場合は、具体的な取引先企業名や業種を記載します。

すでに契約の見込みがある企業があれば、その旨も記載すると信頼性が高まります。「近隣のA社、B社と開業後の仕出し契約について協議中」といった形です。

仕入先
主要な食材の仕入先を記載します。「地元の〇〇市場から鮮魚を仕入れ」「△△農協と提携し、有機野菜を直接仕入れ」など、具体的な仕入先名や仕入れルートを示すと良いでしょう。

すでに仕入先と交渉や契約を進めている場合は、その進捗状況も記載します。仕入れ条件(支払いサイトや掛け率など)も明記できると、より詳細な収支計画が立てられます。

外注先
清掃業者、設備メンテナンス業者、税理士など、外部に委託する業務がある場合は記載します。

取引先・取引関係の項目は、事業の実現可能性を示す重要な要素です。「開業前からすでに具体的な取引先を確保している」という事実は、融資担当者に強い安心感を与えます。

⑤従業員

従業員の項目では、開業時に雇用する予定の従業員数を記載します。

雇用形態別の人数
正社員、パート・アルバイトなど、雇用形態ごとの人数を明記します。「正社員2名(調理1名、ホール1名)、パート3名(ホール)」といった形です。

人件費の見積もり
月間の人件費総額も記載します。この金額は、後述する「事業の見通し」の経費欄と整合性を取る必要があります。

家族従業員の有無
配偶者や親族が従業員として働く場合は、その旨も記載します。家族経営の場合、人件費を抑えられるというメリットがある一方、客観的な労務管理が難しいというデメリットもあります。

⑥借入の状況

借入の状況では、創業者個人の既存の借入について記載します。住宅ローン、自動車ローン、カードローンなど、すべての借入を正直に申告してください。

この項目で融資担当者が確認したいのは、あなたの返済能力と信用情報です。既存の借入が多いと、新たな融資の返済が困難と判断される可能性があります。

ただし、借入があることが即座に融資不可につながるわけではありません。重要なのは、返済が滞っていないこと、そして開業後の収入で既存の借入と新規の借入の両方を返済できることを示すことです。

万が一、過去に返済遅延があった場合でも、隠すのは逆効果です。正直に申告した上で、現在は改善されていることを説明しましょう。

⑦必要な資金と調達方法

この項目は、事業計画書の中でも特に重要な部分です。開業にいくら必要で、そのお金をどう調達するかを具体的に示します。

必要な資金の内訳
開業資金を「設備資金」と「運転資金」に分けて記載します。

設備資金は、開業時に一度だけ必要となる費用です。


  • 物件取得費(保証金、礼金、仲介手数料、前払い家賃)



  • 内外装工事費



  • 厨房機器・設備費



  • 空調・電気工事費



  • 什器・備品費(食器、調理器具、家具など)



  • 開業広告費


運転資金は、開業後に継続的に必要となる費用です。


  • 仕入れ代金(最初の1〜2カ月分)



  • 人件費(最初の3〜6カ月分)



  • 家賃(最初の3〜6カ月分)



  • 光熱費、通信費などの固定費



  • 予備資金


日本政策金融公庫の調査では、開業資金の平均は約1,000万円ですが、実際の金額は店舗の規模や業態によって大きく異なります。10坪程度の小規模カフェであれば500万円程度で開業可能なこともあれば、本格的なレストランでは2,000万円以上かかることもあります。

重要なのは、それぞれの費用について見積書や相場を基にした具体的な金額を記載することです。「内装工事費500万円」だけでなく、「内装工事費500万円(〇〇工務店見積もり)」と記載すると、信頼性が格段に高まります。

資金の調達方法
必要な資金をどのように調達するかを記載します。


  • 自己資金:貯蓄、退職金など



  • 借入:日本政策金融公庫、民間金融機関、制度融資など



  • 親族からの出資または借入



  • その他:クラウドファンディングなど


自己資金の割合は重要な審査ポイントです。一般的に、開業資金の20〜30%程度の自己資金があることが望ましいとされています。自己資金300万円で、700万円の借入を申し込む、といった形が標準的です。

なお、自己資金として認められるのは、預金通帳で確認できる資金のみです。親族から一時的に借りた「見せ金」や、タンス預金は自己資金として認められませんので注意してください。

⑧事業の見通し(月平均)

事業の見通しは、開業後の売上と経費の見込みを月平均で記載する項目です。「創業当初」と「軌道に乗った後(通常は1年後)」の2つの時点での数字を記載します。

売上高の見通し
月平均の売上高を記載します。ここで重要なのは、希望的観測ではなく、具体的な根拠に基づいた数字を示すことです。

飲食店の売上は、以下の計算式で算出します。

売上高 = 客単価 × 客数 × 営業日数
客数 = 座席数 × 回転数 × 稼働率

たとえば、以下のような計算になります。


  • 客単価:1,200円



  • 座席数:20席



  • 回転数:ランチ2回転、ディナー1.5回転の計3.5回転



  • 稼働率:70%



  • 営業日数:月26日


売上高 = 1,200円 × (20席 × 3.5回転 × 0.7) × 26日 = 約151万円

このように、具体的な数字の積み上げで売上を算出すると、融資担当者も納得しやすくなります。

売上原価
飲食店の場合、食材費や飲料費が売上原価に該当します。一般的に、飲食店の原価率は30〜35%程度が適正とされていますが、業態によって異なります。

ラーメン店や居酒屋は原価率が低め(25〜30%)、寿司店や焼肉店は高め(35〜40%)といった傾向があります。

経費
経費は以下のような項目に分けて記載します。


  • 人件費:給与、賞与、社会保険料、福利厚生費



  • 家賃:月額賃料



  • 支払利息:借入金の利息



  • その他の経費:光熱費、通信費、消耗品費、広告宣伝費、保険料、税理士報酬など


利益
売上高から売上原価と経費を差し引いた金額が利益です。この利益から借入金の元本返済を行うことになるため、十分な利益が確保できる計画になっているか確認しましょう。

一般的に、飲食店の営業利益率は5〜10%程度です。利益率があまりに高い計画は、現実性に欠けると判断されることがあります。

創業当初と軌道に乗った後の違い
創業当初は認知度が低いため、売上は低めに設定します。逆に、宣伝広告費は高めになるでしょう。軌道に乗った後は、売上が増加し、経費率(特に広告費)が下がる想定で計画を立てます。

ただし、あまりに楽観的な成長シナリオは避けてください。「創業当初100万円、1年後500万円」といった急激な成長は、よほど明確な根拠がない限り信憑性に欠けます。

融資を成功させる事業計画書作成のポイント

事業計画書の各項目の記載方法を理解したところで、ここからは融資担当者の心を動かす計画書を作成するためのポイントを解説します。

すべての数字に客観的な根拠を示す

事業計画書で最も重要なのは、記載されている数字すべてに明確な根拠があることです。「月商200万円を目指す」だけでは不十分で、「なぜ200万円なのか」を説明できなければなりません。

売上の根拠
前述のように、客単価 × 客数で計算した売上高を示します。さらに、その客単価や客数の根拠も必要です。


  • 客単価:競合店の価格調査、メニュー構成から算出



  • 客数(稼働率):立地の人通り調査、類似店舗の実績データ



  • 回転数:座席配置、提供時間から算出


経費の根拠
経費も同様に、具体的な根拠を示します。


  • 人件費:時給 × 労働時間 × 人数で計算



  • 家賃:賃貸契約書または物件資料



  • 光熱費:類似店舗の実績、設備の消費電力から算出



  • 原価率:提供メニューの原価計算


見積書や契約書があるものは、必ず添付資料として提出しましょう。

一貫性とストーリー性を持たせる

事業計画書全体で、矛盾のない一貫したストーリーを描くことが重要です。

たとえば、創業の動機で「高級フレンチを提供したい」と書きながら、取扱商品で「低価格のカジュアルダイニング」と記載すると、矛盾が生じます。

また、経営者の経歴で「10年間和食一筋」と書きながら、突然イタリアンレストランを開業する計画では、説得力に欠けます。業種を変更する場合は、なぜその業種を選んだのか、不足する知識や経験をどう補うのかを明確に説明する必要があります。

全体を通して、「この人なら成功しそうだ」と思わせるストーリーを組み立てましょう。

わかりやすく簡潔に記載する

融資担当者は多くの事業計画書を審査しています。長文で読みにくい計画書は、それだけで評価が下がる可能性があります。

各項目は要点を絞って簡潔に記載し、専門用語を使う場合は必要に応じて説明を加えましょう。箇条書きや表を活用すると、情報が整理されて読みやすくなります。

ただし、簡潔にすることと情報を省くことは違います。必要な情報はすべて記載した上で、わかりやすく伝える工夫が求められます。

自店舗の強みを明確に打ち出す

競合店との差別化ポイントを明確にすることが重要です。「美味しい料理を提供する」だけでは、どの飲食店でも言えることなので差別化になりません。

立地の優位性
駅から徒歩1分、オフィス街の中心など、立地面での強みがあれば強調しましょう。

独自のメニューやサービス
他店にはない独自のメニュー、地域初の業態、特殊な調理法など、メニュー面での差別化を示します。

価格設定の妥当性
高価格帯であれば、その価格に見合う価値(高品質な食材、特別な体験など)を説明します。低価格帯であれば、どのようにコストを抑えて利益を確保するかを示します。

経営者の専門性
調理技術、接客スキル、マーケティング能力など、あなた自身の強みも重要な差別化要素です。

保守的な計画を立てる

事業計画書では、楽観的すぎる数字よりも、やや保守的な計画の方が信頼されます。

売上は控えめに、経費はやや多めに見積もることで、計画の安全性が高まります。仮に実際の売上が計画を下回っても事業が継続できる計画であれば、融資担当者も安心して融資を決定できます。

ただし、あまりに保守的すぎて利益が出ない計画では本末転倒です。適度な安全マージンを持たせつつ、十分な利益を確保できるバランスの良い計画を目指しましょう。

飲食店の売上予測の立て方

事業計画書の中でも特に重要な売上予測について、もう少し詳しく解説します。

基本的な売上計算式

飲食店の売上は、以下の要素で構成されます。

売上高 = 客単価 × 客数 × 営業日数

さらに客数は以下のように分解できます。

客数 = 座席数 × 回転数 × 稼働率

それぞれの要素を正確に見積もることが、現実的な売上予測につながります。

客単価の設定方法

客単価は、提供するメニューの価格帯から算出します。ランチとディナーで価格帯が異なる場合は、それぞれ分けて計算します。

たとえば、ディナーの場合:


  • 前菜:500円



  • メイン料理:1,500円



  • ドリンク2杯:1,000円



  • デザート:400円


合計:3,400円

ただし、すべての客がフルコースを注文するわけではないので、実際の客単価は2,500円程度になる、といった形で現実的な数字を設定します。

競合店の価格も調査し、自店舗の価格設定が市場と比較して妥当かを確認しましょう。

座席数と回転数の見積もり

座席数は、店舗の広さとレイアウトから決まります。消防法などの規制も考慮した上で、実際に設置できる座席数を記載します。

回転数は、1日に1つの座席を何人の客が利用するかを示す指標です。


  • ファストフード:ランチ4回転、ディナー3回転など高回転



  • カフェ:ランチ2回転、ディナー1.5回転程度



  • 高級レストラン:ランチ1回転、ディナー1回転など低回転


回転数は、料理の提供時間、客の滞在時間、営業時間の長さによって変わります。自店舗の業態に合った現実的な回転数を設定してください。

稼働率の設定

稼働率は、座席がどの程度埋まるかを示す割合です。平日と週末、ランチとディナーで大きく異なります。

たとえば:


  • 平日ランチ:80%



  • 平日ディナー:60%



  • 週末ランチ:90%



  • 週末ディナー:80%


これらを加重平均して、全体の稼働率を算出します。

立地条件、競合状況、宣伝活動などによって稼働率は変動します。開業直後は認知度が低いため、稼働率50〜60%程度から始まり、徐々に上昇していく想定が現実的です。

季節変動の考慮

飲食店の売上は季節によって変動します。忘年会シーズン(12月)や歓送迎会シーズン(3〜4月)は売上が増加し、夏場(8月)や年明け(1月)は減少する傾向があります。

事業計画書では月平均の売上を記載しますが、実際の資金繰り計画では季節変動も考慮に入れる必要があります。

事業計画書のテンプレート入手先

事業計画書を作成する際は、テンプレートを活用すると効率的です。主要なテンプレート入手先を紹介します。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫から融資を受ける場合は、同公庫が提供する創業計画書フォーマットを使用します。

公式サイトの「各種書式ダウンロード」ページから、PDFまたはExcel形式でダウンロードできます。

また、洋風居酒屋、ラーメン店、カフェなど、業種別の記入例も公開されているので、参考にすると良いでしょう。

自治体・信用保証協会

各自治体の制度融資を利用する場合は、自治体独自のフォーマットが用意されていることがあります。

お住まいの自治体の商工課や、信用保証協会の窓口で入手できます。自治体によっては、創業支援セミナーで事業計画書の書き方講座を開催しているところもあります。

民間の事業計画書作成ツール

マネーフォワード クラウドなど、民間企業が提供する事業計画書作成ツールもあります。業種別のテンプレートや、財務計算の自動化機能などが充実しており、初めて事業計画書を作成する方には特に便利です。

事業計画書作成から融資実行までの流れ

事業計画書を作成した後、実際に融資を受けるまでの流れを把握しておくことも重要です。

①事前相談

融資の申し込み前に、日本政策金融公庫の窓口や電話で事前相談をすることができます。創業計画の概要を説明し、融資の可能性や必要な準備について助言を受けられます。

この段階では、まだ正式な申し込みではないため、気軽に相談できます。計画に不安がある場合は、事前相談を活用すると良いでしょう。

②融資の申し込み

事業計画書と必要書類を揃えて、正式に融資を申し込みます。必要書類には以下のようなものがあります。


  • 創業計画書



  • 借入申込書



  • 見積書(設備資金がある場合)



  • 預金通帳のコピー(自己資金確認のため)



  • 不動産の登記簿謄本(担保がある場合)



  • 営業許可証(すでに取得している場合)


書類に不備があると審査が遅れるため、提出前に十分確認しましょう。

③面談

書類審査を通過すると、融資担当者との面談が行われます。面談では、事業計画書の内容について詳しく質問されます。


  • 創業の動機と熱意



  • 事業の実現可能性



  • 売上予測の根拠



  • 返済計画



  • 自己資金の出所


面談は通常30分〜1時間程度です。事業計画書の内容を十分に理解し、自分の言葉で説明できるよう準備しておきましょう。

④審査・融資決定

面談後、総合的な審査が行われます。審査期間は通常2〜3週間程度ですが、混雑状況によって前後します。

審査が通れば、融資決定の連絡があります。融資条件(融資額、金利、返済期間など)が提示されるので、内容を確認して契約に進みます。

⑤融資実行

契約書類に署名・押印し、必要な手続きを完了すると、指定の口座に融資金が振り込まれます。

融資実行までの期間は、申し込みから1〜2カ月程度が目安です。開業予定日から逆算して、余裕を持って申し込むことをおすすめします。

まとめ:成功する事業計画書は開業成功の第一歩

飲食店の事業計画書は、単なる融資申請のための書類ではありません。あなたの事業構想を具体化し、成功への道筋を明確にするための重要なツールです。

事業計画書を作成する過程で、多くの気づきが得られます。当初の計画の甘さに気づくこともあれば、意外な強みを発見することもあるでしょう。こうした気づきを反映して計画を練り直すことで、より実現可能性の高い事業プランが完成します。

融資担当者が見ているのは、単なる数字の羅列ではなく、「この事業は成功する可能性が高いか」「この経営者は信頼できるか」といった本質的な部分です。具体的な数字の裏付けと、一貫性のあるストーリーで、あなたの事業の魅力を伝えましょう。

本記事で解説した8つの項目と作成のポイントを参考に、融資担当者の心を動かす事業計画書を作成してください。十分に練り上げられた事業計画書は、開業成功への確かな第一歩となるはずです。

なお、事業計画書の作成に不安がある場合は、税理士や中小企業診断士などの専門家に相談することも検討してください。専門家のサポートを受けることで、より精度の高い計画書を作成でき、融資の成功率も高まります。

あなたの飲食店開業が成功することを心から応援しています。

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