Webサイト設計とは?構造設計の手順とSEO・UXを両立させる考え方

Webサイトをゼロから立ち上げる、あるいはリニューアルを検討している。そういった場面で最初に突き当たる問いが「何から始めればいいのか」です。
デザインを先に決めようとして途中で迷子になった経験はないでしょうか。あるいは、ページを増やし続けた結果、気づけばサイト全体の構造が複雑になりすぎてしまったケースも珍しくありません。
こうした問題のほとんどは、制作に入る前の「設計」が不十分なことに起因しています。本記事では、Webサイト設計の基本的な考え方から具体的な手順、そして上位表示されるサイトをつくるためのポイントまでを体系的に解説します。
Webサイト設計とは何か
Webサイト設計とは、実際の制作・開発に入る前に、サイト全体の構造・目的・ユーザー動線・コンテンツの配置などを計画する行為を指します。いわば「設計図」を引く作業であり、建築でたとえるなら基礎工事の前に図面を引くプロセスに相当します。
「まずデザインから考えたい」という気持ちはわかります。しかし視覚的な表現より先に決めるべきことが数多くあります。誰に届けるのか、何を達成したいのか、ユーザーはどのような経路でゴールに辿り着くのか?これらを整理せずに作られたサイトは、見た目が洗練されていても成果につながりにくいものです。
サイト設計が重要な3つの理由
目的に沿ったサイトを作れる
サイトに訪問するユーザーのニーズは多様です。商品を購入したい人もいれば、情報収集目的の人もいます。設計段階でターゲットと目的を明確にすることで、各ページで「誰に何を伝えるか」が一貫します。目的が定まっていないサイトは、ページを積み重ねるほど方向性がぶれていきます。
ユーザビリティとSEOへの好影響
Webサイトの構造は、人間だけでなく検索エンジンのクローラーも参照します。ページ間のつながりが論理的に整理されていると、クローラーが効率よくサイトを巡回でき、インデックスの精度が上がります。同時にユーザーも「欲しい情報にたどり着きやすい」と感じ、直帰率の低下や滞在時間の延長につながります。これはGoogleがユーザー体験を重視する現在のアルゴリズムにおいて、間接的なSEO効果をもたらします。
運用の効率化
設計のないサイトで更新を続けると、ページが増えるにつれてナビゲーションが複雑になり、重複コンテンツが発生し、どのページに何を書けばいいか担当者が判断できなくなります。設計段階でカテゴリ構造やURL設計を決めておくと、後から新しいページを追加する際も全体の一貫性を保ちやすくなります。
Webサイトの構造設計の種類
設計を始める前に、自社のサイトがどの構造タイプに属するかを把握しておくことが重要です。構造タイプによって、設計上の優先事項が変わってくるからです。
フラット型(ブログ・情報メディア)
フラット型は、多数のコンテンツページが比較的同じ階層に並ぶ構造です。ブログやアフィリエイトサイト、オウンドメディアが典型例です。検索流入を主軸とする場合、各記事がそれぞれのキーワードで検索にヒットすることを目指します。この場合、カテゴリの設計とページ間の内部リンク設計が重要になります。記事を関連ジャンルでグルーピングし、関連記事同士をリンクでつなぐことで、テーマの専門性をGoogleに伝えやすくなります。
ツリー型(コーポレートサイト)
企業サイトの多くは、トップページ→カテゴリページ→詳細ページというツリー構造を取ります。「会社情報」「サービス」「採用情報」といった大カテゴリの下に、それぞれのコンテンツが整理されます。ここで注意したいのは階層の深さです。トップページから3クリック以内に主要なコンテンツへ到達できる設計が、ユーザビリティとSEOの両面で有利とされています。
ハブ型(ECサイト・不動産・求人)
商品や物件など、大量のエントリーを持つサイトに適した構造です。カテゴリページ(ハブ)が検索流入の受け口となり、個別のエントリーページへユーザーを誘導します。Amazonの商品カテゴリページが典型的なハブです。このタイプでは、カテゴリページの設計が事業成果に直結します。カテゴリページのテキストコンテンツ、フィルタリング機能、関連カテゴリへのナビゲーションが重要な設計要素になります。
Webサイト設計の実践手順:7つのステップ
設計の全体像を理解したところで、実際にどのような順序で進めるかを見ていきます。
ステップ1:目的とKPIを明確にする
最初に問うべきは「このサイトで何を達成したいのか」という点です。問い合わせ数の増加なのか、商品購入なのか、ブランド認知なのかによって、設計の優先事項はまったく変わります。
目的が定まったら、それを測定可能な指標(KPI)に落とし込みます。たとえば「問い合わせを月30件獲得する」「会員登録のコンバージョン率を2%にする」といった具体性が必要です。KPIが曖昧なまま制作を進めると、後からリニューアルの成否を判定できなくなります。
また、現在リニューアルを検討しているケースでは、既存サイトのアナリティクスデータを参照することで、改善すべき課題が明確になります。Google Search ConsoleやGA4を確認し、「どのページが離脱率が高いか」「どのキーワードで流入しているか」を把握した上で設計に臨むことで、勘に頼らない意思決定が可能になります。
ステップ2:ターゲットユーザーとペルソナを設定する
「誰のためのサイトか」を定義する作業です。ペルソナとは、ターゲットユーザーを具体的な人物像として描いたものです。年齢・職業・趣味・課題感といった属性を設定することで、コンテンツの言葉遣いや導線設計に一貫性が生まれます。
ここで重要なのは、ペルソナを「作りたい顧客像」ではなく「実際に来訪するユーザー像」に基づいて設定することです。既存顧客へのインタビュー、アナリティクスのユーザー属性データ、検索クエリの傾向などを参照することで、精度の高いペルソナが作れます。
「30代・マーケター・BtoB企業勤務・SEOに課題を感じている」といった具体的な人物像があると、「このユーザーはなぜこのページに来たのか」「次にどの情報を求めているか」を設計者全員が共通認識を持って議論できます。
ステップ3:競合サイトを分析する
自社のサイトを設計する前に、競合の上位サイトを分析することには2つの意義があります。ひとつは「現状の競合水準を把握すること」、もうひとつは「上位サイトが扱っていない観点を見つけること」です。
競合分析で確認すべき項目は以下の通りです。
サイト構造(階層の深さ、カテゴリの分け方)
コンテンツの種類と深さ(テキスト量、図解の活用など)
ユーザー導線(CTAの位置、フォームまでのステップ数)
獲得しているキーワードとその検索ボリューム
競合がカバーしていない検索ニーズを見つけられれば、そこが自社サイトの設計における差別化ポイントになります。単に競合の構成を模倣するだけでは、すでに上位表示されているサイトに勝つのは困難です。
ステップ4:SEOのキーワード戦略を決める
サイト全体のキーワード設計は、個別ページのSEOより先に決める必要があります。なぜなら、キーワードとページの対応関係が整理されていないと、同じような内容のページが複数できる「カニバリゼーション(共食い)」が発生し、互いの順位を押し下げるからです。
キーワード設計の基本的な考え方は、メインキーワード(検索ボリュームが大きく、サイト全体のテーマを表す)をトップページや主要カテゴリページに割り当て、より具体的なロングテールキーワードを個別コンテンツページに割り当てるというものです。
たとえばWebマーケティング会社のサイトなら、「Webマーケティング」はトップページや主要ランディングページ、「SEO対策 費用」「コンテンツマーケティング 事例」といったより具体的なキーワードは各記事ページが担当する、という構造が自然です。
この段階で「サイトマップのどのページが、どのキーワードを狙うか」を対応表として作成しておくと、後のコンテンツ制作がスムーズになります。
ステップ5:サイトマップを作成する
サイトマップは、Webサイトに存在するすべてのページとその階層構造を一覧化したものです。設計書として機能するとともに、制作チームや制作会社との認識合わせにも活用されます。
サイトマップ作成のポイントは、主要な情報にたどり着くまでのクリック数(階層の深さ)を意識することです。重要なコンテンツやコンバージョンページが深い階層に埋もれていると、ユーザーはたどり着く前に離脱し、検索エンジンのクローラーも効率よく巡回できません。一般的には「3クリック以内」がひとつの目安とされています。
ツールとしては、XmindやMiroのようなマインドマップツールを使うと視覚的に整理しやすいです。スプレッドシートで管理する方法もあり、URL構造・ページタイトル・担当キーワード・ページの優先度をまとめて管理するのに適しています。
また、この段階でURL設計も決めておくことを推奨します。後からURL構造を変更すると、既存の被リンクや検索エンジンのインデックスに影響が出ます。/service/seo/ のように、階層が意味のある形でURL上に表れるように設計するのが理想的です。
ステップ6:ユーザーフロー(導線設計)を考える
サイトマップが「どのページが存在するか」を定義するものだとすれば、ユーザーフローは「ユーザーがどのページをどのような順序でたどるか」を設計するものです。
ユーザーがサイトに訪問するきっかけは複数あります。検索エンジンから特定のコンテンツページに直接来る場合もあれば、広告からトップページへ流入する場合もあります。それぞれの流入経路ごとに「最終的に何をしてほしいか(コンバージョン)」までの経路を設計します。
たとえばBtoBのサービスサイトであれば、「ブログ記事(認知)→サービス紹介ページ(興味・関心)→導入事例ページ(検討)→問い合わせページ(行動)」というフローが典型的です。各ページにはこのフローを踏まえたCTA(Call To Action)を設置し、ユーザーを次のステップへ自然に誘導します。
導線設計で見落としがちなのが「スマートフォンでの動線」です。デスクトップとモバイルでは画面サイズが異なるため、同じ導線がモバイルでは機能しないケースがあります。設計段階からモバイルの操作感を想定しておくことが重要です。
ステップ7:ワイヤーフレームを作成する
ここまでの設計を踏まえて、各ページのレイアウトを可視化するのがワイヤーフレームです。デザインの前段階として、ページ内にどの情報要素をどの順序で配置するかを決めます。
ワイヤーフレームはデザインの美しさを追求するフェーズではありません。情報の優先順位と配置を確認することが目的です。そのため、グレースケールで作成するのが一般的です。
ツールとしてはFigmaが現在の標準的な選択肢です。チームメンバーとリアルタイムで共同編集でき、コメント機能でフィードバックも管理できます。スピードを優先するならAdobe XDやCacooも選択肢に入ります。
ワイヤーフレーム作成時に意識したいのが「F字・Z字の視線移動」です。Webユーザーの視線は、ページ上部から左に向かって横断し、その後下に向かうF字パターンを取ることが知られています(NNグループの調査より)。重要な情報や行動を促すCTAは、このパターンを踏まえた位置に配置することで視認性が上がります。
サイト設計を成功させるための実践ポイント
手順を踏んで設計を進めるだけでなく、設計の質を高めるための視点を持っておくことが重要です。
階層を深くしすぎない
前述の通り、ページの階層が深くなるほどユーザーは迷いやすくなり、クローラーの巡回効率も落ちます。大規模サイトでよく起きる問題として、カテゴリを細分化するうちに最終ページまでの階層が5〜6層になってしまうケースがあります。
これを防ぐには、設計時点で「本当にこの分け方が必要か」を問い直すことが有効です。似たテーマのカテゴリをまとめて統合したり、深い階層のページをサイトマップに明示的に記載したりすることで対処できます。
テーマの一貫性で専門性を高める
検索エンジンは、あるトピックを深くカバーしているサイトを専門性が高いと評価する傾向があります(Googleの品質評価ガイドライン、E-E-A-T)。特定テーマに関連するコンテンツが豊富に集まっているサイトは、そのテーマの検索クエリで上位に表示されやすくなります。
一方、テーマが分散したサイトは、それぞれの分野で中途半端な専門性しか示せず、どのトピックでも上位表示が難しくなります。サイトの強みとするテーマ領域を絞り込み、そのテーマに関連するキーワードを網羅的にカバーする設計が有効です。
ユーザー動線を常に「ゴール」から逆算する
設計者がよく陥る罠が「情報を整理すること」を目的化してしまうことです。本来の目的は「ユーザーに特定の行動を取ってもらうこと」のはずです。
ユーザーが問い合わせをするまでに「どのような疑問を持ち」「どの情報を求め」「どの懸念を解消するか」を逆算して、それに対応するページとCTAを設計します。ページの役割を「情報提供」と「行動喚起」に分けて設計し、両者の連携を意識することが重要です。
モバイルファーストで設計する
2024年時点で、日本国内のWeb閲覧の約60〜70%はスマートフォンからとされています(総務省「通信利用動向調査」より)。Googleも2018年以降、モバイルバージョンを優先してインデックスする「モバイルファーストインデックス」を採用しています。
サイト設計の段階から「スマートフォンで操作することを前提」にした構造とレイアウトを考えることが、現代のWeb制作では基本です。タップしやすいボタンサイズ、縦スクロールを活かした情報展開、モバイルでも読み込みが速いページ構成などが設計の考慮事項になります。
業態別のサイト設計の注意点
設計の基本的な流れは共通していても、サイトの業態によって重視すべき要素は異なります。
コーポレートサイト
コーポレートサイトの主な目的は「信頼性の構築」と「問い合わせ・資料請求などのリードジェネレーション」です。訪問者の多くは購買検討前の調査段階にあるため、以下の点に注意して設計します。
まず、会社の「強み・実績・理念」が伝わるページ構成を作ることが重要です。特にBtoBのサービスでは、導入事例や実績紹介ページが検討段階のユーザーの意思決定に大きく影響します。設計段階からこれらのページに重みを置き、サービス紹介ページから自然に遷移できる導線を設けることが求められます。
また、「採用サイト」がコーポレートサイトと同じドメインに統合されているケースでは、採用候補者と見込み顧客という異なるペルソナが同じサイトを訪れます。それぞれの導線が干渉しないよう、ナビゲーション設計を慎重に行う必要があります。
ECサイト
ECサイトの設計において最も重要なのは「商品を見つけやすくする」構造です。カテゴリ分類の粒度とフィルタリング機能の設計が購買体験を左右します。
カテゴリ設計では「ユーザーが商品を探す際の思考プロセス」を出発点にします。例えば衣料品ECであれば、「性別×種類」「用途×シーズン」「ブランド」など、複数の軸で商品にたどり着けるクロスカテゴリ設計が有効です。検索とフィルタリングの組み合わせで絞り込める設計も、商品数が多いサイトでは不可欠です。
加えて、カート・決済フローのステップ数はコンバージョン率に直結します。入力フォームのステップを減らす、ゲスト購入を可能にするといった設計上の判断が、離脱率の改善に効いてきます。
オウンドメディア・ブログ
検索流入を主軸とするオウンドメディアでは、「記事の内容とキーワードの整合性」「カテゴリ設計の一貫性」「内部リンクの設計」が三つの柱になります。
設計段階で決めておきたいのが、カテゴリの粒度です。テーマが広すぎると各カテゴリの専門性が薄まり、狭すぎると記事が増えるにつれてカテゴリが乱立します。競合の上位メディアの構造を参考にしながら、自社が本当に強みを持つテーマに絞り込んでカテゴリを設計することを推奨します。
内部リンクの設計については、設計段階から「どの記事がどの記事を支援するか」という関係性(コンテンツクラスター)を可視化しておくと、後の運用が楽になります。柱となる「ピラーページ(包括的な概要記事)」と、それを支える「クラスターページ(個別トピックの深掘り記事)」を組み合わせる設計は、専門性を示す構造として有効です。
サイト設計に役立つツール
設計の各段階で活用できるツールをまとめます。必須というわけではありませんが、チームで作業する場合や大規模なサイトを設計する場合はツールを活用することで効率が上がります。
サイトマップ作成:XmindやMiro
XmindはデスクトップアプリとWebアプリの両方で使えるマインドマップツールで、ページの階層構造を視覚的に整理するのに向いています。Miroはオンラインのホワイトボードツールで、チームリアルタイム共同作業に適しています。スプレッドシート(GoogleスプレッドシートやExcel)でページ一覧を管理する方法もシンプルで実用的です。
ワイヤーフレーム作成:FigmaやAdobe XD
現在の業界標準はFigmaです。無料プランでも十分な機能があり、ブラウザ上で動作するためインストール不要で共有が容易です。コンポーネント管理やプロトタイプ機能を活用すると、ワイヤーフレームを実際に操作できるモックアップとして制作会社に渡せます。
競合分析・キーワード調査:Ahrefs、SEMrush、Googleサーチコンソール
キーワードのボリュームや競合サイトの流入キーワードを調べるには、AhrefsやSEMrushが詳細なデータを提供しています(いずれも有料)。自社の既存サイトのデータを分析する場合はGoogleサーチコンソールとGA4の組み合わせが基本です。無料で利用できるGoogleキーワードプランナーも、キーワードの検索ボリューム確認には活用できます。
ユーザー行動分析:ヒートマップツール
既存サイトのリニューアルを設計する場合、ヒートマップツール(Microsoft Clarity、Hotjarなど)を使って現状のユーザー行動を把握することが有益です。どのページでスクロールが止まっているか、どのボタンがクリックされているかを可視化し、設計改善の根拠データとして活用できます。Microsoft Clarityは無料で提供されており、導入コストなく利用できます。
サイト設計書(ドキュメント)として整理すべき内容
サイト設計の成果物は、制作チームや外部の制作会社に渡す「設計書」として文書化しておくことが重要です。口頭や記憶で共有するだけでは、認識のズレや抜け漏れが発生します。
サイト設計書に含めるべき主な項目を挙げます。
目的・KPI・ターゲットの定義:サイトで達成したいこと、測定指標、想定ユーザー像をまとめたものです。制作中の判断に迷ったとき、この定義に立ち返ることで方向性を確認できます。
サイトマップ:ページの一覧と階層構造を示すものです。URL設計と合わせて整理します。
キーワード設計表:各ページが狙うキーワードと検索ボリュームを一覧化したものです。ページ間のキーワードの重複がないかも確認します。
ワイヤーフレーム:主要ページのレイアウト設計図です。すべてのページをワイヤーフレームで作る必要はなく、トップページ、代表的なランディングページ、コンバージョンページなどの重要ページを優先します。
要件定義書:CMSの選定、フォームの仕様、管理者機能の要件、外部システム(CRMやMAツール)との連携仕様など、技術的な要件をまとめたものです。エンジニアや制作会社との認識合わせに不可欠な文書です。
これらのドキュメントは、制作開始前に関係者全員でレビューし、合意を取ることが理想的です。設計段階での手戻りは制作段階での手戻りより大幅にコストが低く済みます。
サイト設計でよくある失敗とその回避策
実際の設計・制作プロジェクトでよく見られる失敗パターンと、その回避策を整理します。
ペルソナを作ったのに使われない:ペルソナを文書化しても、実際の設計やコンテンツ作成の場面で参照されないケースは少なくありません。解決策のひとつは、ペルソナを「意思決定の基準」として明文化することです。「このペルソナはこのページで何を知りたいか」という問いを設計の各段階で立てる文化を作ることが重要です。
SEOとUXが対立してしまう:「キーワードを入れるために不自然な見出しをつけた」「SEOのためにページを増やしたが、ユーザーには冗長だった」といった問題です。本来、ユーザーにとって価値あるコンテンツはSEO的にも評価されます。SEOとUXは対立するものではなく、「ユーザーの検索意図を深く理解して設計する」という共通の前提があります。検索キーワードの背後にある「ユーザーが本当に知りたいこと」を考えることが、SEOとUXを同時に満たす鍵です。
設計に時間をかけすぎて制作が遅延する:完璧な設計書を作ろうとするあまり、設計フェーズが長引いて制作開始が遅れるパターンです。設計は「十分に良い状態で制作に入る」ことが目的であり、すべての仕様を確定させることが目的ではありません。主要ページのワイヤーフレームと基本的なサイトマップが固まれば制作に入り、細部は制作と並行して詰めるアジャイル的な進め方も有効です。
リニューアル後にSEOが低下した:URL変更や構造変更を伴うリニューアルの際、リダイレクト設定が不十分でSEO評価がリセットされたというケースは実際に多発しています。既存URLから新URLへの301リダイレクトを必ず設定すること、Google Search Consoleでインデックスの状況を監視することが対策として重要です。
サイト設計を外部に依頼する際の判断基準
Webサイト設計を制作会社やコンサルタントに依頼するかどうかは、社内の知識・工数・予算のバランスで判断することになります。
自社内で完結させやすいケースとしては、比較的シンプルな構造のブログやオウンドメディアが挙げられます。設計の要素が少ないため、本記事で紹介した手順を参考に進められます。
一方、以下のような場合は専門家への相談が有効です。
ECサイトや大規模コーポレートサイトなど、ページ数が多く構造が複雑な場合。SEOと導線設計を高い水準で両立する必要がある場合。制作会社との連携が必要なプロジェクトで、技術的な要件定義書の作成が求められる場合。
設計と制作を同じ会社に依頼する場合は、「設計フェーズ」が独立したプロセスとして組み込まれているかを確認することをお勧めします。設計を省略していきなり制作に入るアプローチは短期的にはスピードが出ても、後からの修正コストが大きくなりがちです。
既存サイトのリニューアル設計で特に注意すべき点
新規サイト立ち上げとは異なり、既存サイトのリニューアルには独自のリスクが伴います。なかでも最も避けたいのが「SEO評価のリセット」です。リニューアルを経てアクセスが激減したケースは実際に多く、その多くはURL変更に伴う設定ミスが原因です。
SEO資産を引き継ぐリダイレクト設計
既存サイトで検索流入があるページは、そのURLにSEO評価が蓄積されています。リニューアルでURL構造を変更する場合は、旧URLから新URLへの301リダイレクトを漏れなく設定することが必須です。
設計段階で「旧URL → 新URL」の対応表を作成し、エンジニアに渡す工程を設計書に組み込んでおきます。リダイレクト設定後はGoogleサーチコンソールで「カバレッジ」や「ページエクスペリエンス」の数値を監視し、異常があれば早期に対処します。
なお、ページを削除する場合も注意が必要です。削除するページに対して流入や被リンクがある場合、そのまま404エラーにするとSEO評価が損失します。関連する上位ページへのリダイレクトを設定するか、コンテンツを統合・移行する形を取ることが推奨されます。
コンテンツの棚卸しとリストラクチャリング
長く運営されたサイトには、古いコンテンツ・重複コンテンツ・パフォーマンスの低いページが蓄積していることが多いです。リニューアルはこれらを整理する絶好の機会です。
コンテンツ棚卸しでは、まず検索流入や直帰率などの指標で価値あるページを特定します。次に、テーマが重複しているページを統合候補として挙げます。最後に、更新が止まっているページを刷新するか削除するかを判断します。この整理を経た上でサイトマップを設計すると、不要なページを増やさずに済む引き締まった構造が実現します。コンテンツ数を絞ることで、各ページの評価が分散せず集中しやすくなる点でもSEO上のメリットがあります。
CMS移行時のリスク
WordPressから別のCMSへの移行、あるいはCMSのバージョンアップが伴うリニューアルでは、URL構造やメタデータの出力方法が変わることがあります。移行前に「現行のSEO設定がどのように移行先に引き継がれるか」を確認し、不足する設定は移行後に補完する計画を立てておきます。
特に、<title>タグ、メタディスクリプション、canonical属性、OGP設定など、ページごとに制御すべき項目はCMS移行時に抜け漏れが発生しやすいため、設計段階でチェックリスト化しておくことを推奨します。
まとめ:サイト設計は「何を達成したいか」に始まり、「誰のために」で貫く
Webサイト設計は、制作の前段階に位置する地味な作業のように見えて、完成後のサイトの成否を左右する重要なプロセスです。目的の明確化、ペルソナ設定、SEO戦略の方針、サイトマップ、ユーザーフロー、ワイヤーフレームという流れを踏まえることで、チーム全体が共通の方向を向いて制作を進められます。
また、サイト設計で大切なのは「完璧な設計書を作ること」よりも、「設計の段階でリスクを特定し、制作後の手戻りを減らすこと」です。完璧を追うより、早く作って検証し、改善するサイクルを回すことが現実的な成果につながります。
本記事で取り上げた手順やポイントが、あなたのサイト設計の出発点として役立てば幸いです。設計の考え方を身につけることは、一度限りのプロジェクトにとどまらず、以後のWebサイト運用全体の質を高める土台になります。